導入自体ではなく、最適な活用方法が検討されるようになってきたクラウド。しかし、クラウドに移行することでIT部門は統制力を失うことになるのだろうか? IT担当者は次に何をするべきなのか?
クラウドベンダーの話では、エンタープライズITにおけるクラウドアプリケーションの普及率はクリティカルマスに達しつつあるという。
これは、ベンダーが都合よく解釈した主張であると一蹴することもできるが、米Informaticaや米Birstの上級役員は、最近の本誌Computer Weeklyのインタビューにおいて慎重にこの傾向について説明している。またユーザー側でも、英ITリーダーのユーザーグループであるThe Corporate IT Forumが、「ITはクラウドに移行すべきか?」から「どのように?」「どの領域を?」へと議論の的が移っていることを認めている。
注:本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年6月12日号」(PDF:無償ダウンロード提供中)に掲載されている記事の抄訳版です。EPUB版およびKindle版も提供中です。
The Corporate IT Forumのリサーチ責任者であるオーリー・ロス氏は、「The Corporate IT Forumが実施した2013年のクラウドコンピューティング実際調査では、その傾向が如実に示された。大規模企業の場合、現在、議論はクラウドを採用すべきかどうかではなく、いかに利用するかに移っている」と言う。
「強い逆風はなく、むしろ追い風が強まってきている」と話すのは、クラウド生まれのビジネスインテリジェンスベンダー、米Birstのブラッド・ピータースCEOだ。
ピータース氏は、2006年にOracleによって買収される前のSiebelにおいて、分析部門を指揮していた。レガシーのクライアント/サーバ型のオンプレミスモデルでは、業務アプリケーションはコストが高くなり、使い難くなるというのがピータース氏の意見だ。そこで一般市場では、ERP、CRM、HCM(ヒューマンキャピタル管理)など、経営管理アプリケーションに関しては「ユーザーが利用しやすいように工夫されている」クラウドサービスにシフトしているという。
Birstのアプローチは、データ探索ソフトウェアスイートと異なり、バックエンドとの統合も含め、ビジネスインテリジェンスインフラストラクチャ全体をクラウドで提供するというものだ。
ただし、「ビジネスインテリジェンスのプロセスは、もうすぐ自動化できる。従って、ホストする場所を選ぶ必要がなくなるため、アプライアンスとしてオンプレミスでも運用できるようになる」とのことだ。
「経営管理アプリケーションのクラウド移行は進んでいても、企業データ全体の98%はいまだにオンプレミスにある。従って、弊社も当面はハイブリッドでいくことになる」
しかし、ティッピングポイントは見えてきている。「1年前は、クラウドの有用性を説明しなければならなかった。統制が失われることが、スケーラブルなインフラストラクチャ、信頼性、ディザスタリカバリなどのメリットよりも重く見られていた。完全クラウド化など見向きもされなかった」とピータース氏は話す。
「しかし、現在は、追い風が強まってきている。Salesforce、NetSuite、Marketoなどの主要顧客は、正真正銘の大企業ばかりだ。2年前にDreamforce(Salesforce.comのユーザーカンファレンス)に行っても大企業はまず見当たらなかった。現在は大企業が、こぞって参加している」
Computer Weekly日本語版は、市場分析、事例、CIOインタビューなどで構成されたPDFコンテンツです。TechTargetジャパン会員は無料でダウンロードできます。
Computer Weekly日本語版 2013年6月12日号:Windows XPの終焉─そのとき残されたシステムは?
ピータース氏によると、クラウドのデータセキュリティもクラウドが敬遠される要因の1つだ。「クラウドは銀行のようなもの。自分の金を枕の下に隠しておくのと銀行に預けるのとどちらを選ぶだろうか?」さらに、ピータース氏はデータ侵害のほとんどは、社内で発生していることを指摘する。
問題は、IT部門の統制が失われることの方だ。「その点は、正真正銘の課題だ。そこで弊社ではAPIとレイヤーを追加して、弊社がデータをホストしていても、IT部門でこれまでと同じように制御できるようにしている。
「IT担当者には、“土台になるインフラストラクチャに皆さんの時間を使うのではなく、データのモデリングや操作にもっと時間を割いてほしい”と話している」とピータース氏は言う。
「それこそが、IT部門が戦略的に取り組め、醍醐味を味わえる領域だ。アナリストの役割を果たし、事業部に関わっていく部分になる。事業部には、IT部門のようにデータを理解できる人間はいない」
「データサイエンティストである必要はなく、予測モデリングなどは不要だが、一般的なデータモデリングができて事業部の要件をモデルに落とし込む必要はある。IT担当者なら、それができる」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ハロウィーンの口コミ数はエイプリルフールやバレンタインを超える マーケ視点で押さえておくべきことは?
ホットリンクは、SNSの投稿データから、ハロウィーンに関する口コミを調査した。
なぜ料理の失敗写真がパッケージに? クノールが展開する「ジレニアル世代」向けキャンペーンの真意
調味料ブランドのKnorr(クノール)は季節限定のホリデーマーケティングキャンペーン「#E...
業界トップランナーが語る「イベントDX」 リアルもオンラインも、もっと変われる
コロナ禍を経て、イベントの在り方は大きく変わった。データを駆使してイベントの体験価...