クラウド戦争 ――従来型ITベンダーはクラウド時代を生き残れるか戦略転換を図るIBM、HP、Oarcleたち

クラウド専業プロバイダーがゲームを変えた。従来型メガサプライヤーは巻き返しを図る必要がある。

2013年10月02日 08時00分 公開
[Archana Venkatraman,Computer Weekly]
Computer Weekly

 米IBM、米HP、米Oracle、米Dellなど、従来型ITのメガサプライヤーが、数十年にわたりエンタープライズITの世界を支配してきた。しかし、AWS(Amazon Web Services)、Salesforce、Google、Windows Azureといったクラウド専業プロバイダーが侵攻する現在、メガサプライヤーは自社のプライベート、パブリック、ハイブリッドクラウドサービスを企業に採用してもらえるだろうか?

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 米Gartnerの「Cloud IaaS(infrastructure as a service)Magic Quadrant for October 2012」をざっと見ると、非常に興味深いトレンドが目に入る。AWSがリーダークアドラントの座を堅持している一方で、IBMやHPなど、従来型ベンダーが抜けているのが目に付く。

 「従来型プロバイダーは、エンタープライズ市場に築いた莫大なインストールベースから長年利益を享受してきた。しかし、クラウドがその情勢を変えつつある」とGartnerのクラウド担当副社長、グレゴール・ペトリ氏は言う。

 「しかし、ビッググラウドの世界には、誰にでも入り込む余地がある」

 そのハイプ(過剰な期待)にもかかわらず、エンタープライズIT投資全体に占めるクラウドの割合はわずか4.8%だ。Gartnerは、2013年の世界のパブリッククラウドサービス市場は1290億ドルになると予想している。2兆7000億ドルと予想されている2013年のIT市場全体の5%未満だ。

巻き返しを図る従来型ベンダー

 HP、IBM、Oracleは、クラウドがまだ創成期の間に、巨大なインストールベースを生かせるクラウドサービスの開発を急ピッチで進めた。彼らはクラウド分野への参戦は遅れたが、顧客が追い付けないほどのペースでクラウドツールの開発を競っているとペトリ氏は説明する。

 例えば、IBMはいまだにマジッククアドラントに登場したことはないが、マジッククアドラントの「niche player」(特定市場)セグメントで名前が挙がっているSoftLayer Technologiesを買収した。買収金額は、20億ドルと報じられている。

 米調査会社のEvaluator Groupでシニアストラテジストを務めるランディ・カーンズ氏は、「かなりの額だが、それはIBMがクラウド分野で巻き返しを図るための対価だ」と話す。IBMはSoftLayerを手に入れたことで、OpenStack市場をリードする米Rackspaceと肩を並べ、2015年までにクラウド事業で年収70億ドルを達成することを目標としている。

 2013年に米国で開催したカンファレンス「IBM Pulse」において、IBMは自身のオープンクラウドアーキテクチャを発表。IBMが提供する全てのクラウドサービスをOpenStackベースで開発する計画を示した。アナリストのグレッグ・シュルツ氏は、「IBMはこのクラウド時代において、IBMのDNAにこの新しい文化(クラウド)と専門能力を何としても取り入れる必要があった。SoftLayerはそれを提供できる」と話す。

 「ITデリバリーの従来のモデルは、自然な流れで縮小していった。すぐに転換が必要だったが、それが最も難しかった」とIBMのクラウド開発およびデリバリー担当ゼネラルマネジャー、ジム・コンフォート氏は話す。「IBMの意識は、プロダクトファーストから、クラウドファースト/サービスファーストに切り替わっている」

 コンフォート氏によると、IBMは2008年に、クラウドがITを大きく変革するであろうことに気付き、独自のクラウドサービスを開発する方法を模索し始めたという。

 「ここ5、6年で約1000社のSaaS(Software as a Service)企業を買収してきた。ここから、IBMはユーザーのクラウドに対する需要を理解していることが分かる。

 IBMには、15年前にはなかったサービスモデルが、今はある。5年前になかったクラウドモデルは、今ではビジネスの大きな柱になっている」とコンフォート氏は語り、IBMがITの変化に応じて進化していることをアピールする。

 IBMは、2013年7月に2013年第2四半期の業績を発表したが、純利益は前年同期比で17%減だった。第1四半期も同様に、総収益、純利益共にアナリストの予想を下回る結果となった。しかし、クラウド関連収益は、第2四半期に最も高い伸び(70%)を記録した。

 他のメガサプライヤーも精力的にクラウドへの進出を図っている。HPは「HP Converged Cloud」というクラウド戦略を打ち出した。「世界はハイブリッド環境に向かっている」と話すのは、HPのワールドワイドクラウド担当副社長のスティーブ・ディーチ氏だ。

 「パブリッククラウドのみまたはプライベートクラウドのみが使われるケースはないだろう。ユーザーは選択の自由を求めており、HPはConverged Cloudによってユーザーの要求に応える」

高価な社内インフラを見限れない企業ユーザー

 社内インフラに多大な投資をしているために、従来型ITを見限ってクラウドに移行することをちゅうちょする企業は多い。ディーチ氏は「HPの戦略は、この異種システムから成るハイブリッド環境を基盤に、既存の投資を無駄にしないことだ」と説明する。

 HPは「クラウド風サービス」を提供してきたが、約1年前に独自のクラウドスイートをリリースした。シュルツ氏によると、「HPのクラウドサービスは、AWSにかなり近いものになっている」という。

 しかし、専門家は、HPは次のような努力が必要だと話す。

続きはComputer Weekly日本語版 2013年9月25日号にて

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