電子カルテ市場調査リポート2013(診療所編)
診療所向け電子カルテ市場、2017年には170億円まで拡大
診療所の電子カルテ普及率は約2割だが、都市部の新規開業では9割も導入される傾向にある。電子カルテ市場の規模予測や主要ベンダーの最新動向などを踏まえて今後の診療所のIT化を占う。
シード・プランニングは2013年4月、市場調査リポート『2013年版 電子カルテの市場動向調査 ―電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向―』を発表した。このリポートは、電子カルテシステム(病院向け、診療所向け、歯科向け)とPACS(医用画像管理システム)の市場動向を同社が調査し、2017年までの市場規模を予測したものだ。本稿では、診療所向け電子カルテの市場規模や導入シェア、主要ベンダーの製品動向などを紹介する。
2017年の市場規模は170億円まで拡大
2012年の診療所向け電子カルテ市場規模は125億7000万円、年間納入数は3590件と推定される。2013年以降も順調に推移して、2017年の市場規模は約170億円、年間納入数は約5700件と予測される。診療所における電子カルテ普及率は23.8%であり、期待されていた急成長はないものの、緩やかであるが確実に市場は拡大している(グラフ1)。
今後は早い時期に電子カルテを導入した診療所のリプレース案件の増加が見込まれることや、後発ベンダーだけでなく大手ベンダーからよりシンプルで安価な製品がリリースされるなど、単価が下がる傾向にある。納入数の増加と比較すると、市場規模の伸び率は、やや低い割合で推移するとみられる。現在の普及率は約2割だが、新規開業時には7~8割、特に都市部では9割以上の診療所が電子カルテを採用する傾向にある。
製品動向:使いやすさの工夫や専用製品も登場
ベンダー各社の研究開発が進み、ある程度以上の納入実績を持つ電子カルテ製品は一定以上の機能レベルをクリアしている。ユーザーに最も求められるのは「使いやすさ」であり、「所定の動作でのクリック数」や「他システムとの連携」などの工夫によって、各社が製品の特徴を打ち出している。
以前は「診療科目によっては電子カルテ導入が適さない」といわれることもあったが、現在は診療科目によらず、多くの診療所に納入されている。また、眼科や精神科、産婦人科などの診療科目、透析管理に特化するシステムなどの専用製品も開発されている。
2010年2月に厚生労働省が示した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第4.1版」で、クラウド利用のルールが明確化されたことで、ASP/SaaS(Software as a Service)製品が注目された。しかしまだ大きくシェアを確保するには至っていない。
今後政策により、地域医療・介護連携の強化や在宅医療の充実が一層進むと見込まれる。地域医療・介護連携においては「ITによる情報共有」が広く普及することが期待されるが、診療所における連携活用は一部の先進事例のみというのが現状である。
ベンダーの動向:上位ベンダーによる寡占化が進む
単年納入数においてシェア上位ベンダーは、パナソニックヘルスケア(旧三洋電機)、ビー・エム・エル(BML)、ラボテック、富士通。これら4社はそれぞれがシェア10%以上を占める。次いで、ユヤマ、日立メディカルコンピュータ、ダイナミクス、東芝メディカルシステムズなどが続く。これら上位8社はそれぞれ累計1000件以上の納入実績があり、合計でシェア全体の70%を占めている。今後さらに寡占化が進むと予想される。
パナソニックヘルスケアや富士通、ラボテック、日立メディカルコンピュータ、東芝メディカルシステムズなどは医療ITベンダーとして事業を立ち上げた企業だが、臨床検査大手のBMLや調剤機器販売のユヤマ、医師個人が開発を進めたダイナミクスなど特色のあるベンダーも多い。また、事業の成り立ちによる違いもあって得意とする営業スタイルが異なっており、各社さまざまな方法で診療所へアプローチしている。
ハードウェアの動向:モバイル端末の活用に期待
今回、各ベンダーが利用しているハードウェアを調査し、その納入数を推計した。累計納入数で見ると、NECや富士通、デル、日本ヒューレット・パッカード(HP)などのハードウェアが多く納入されている。2012年単年で見ると、富士通やNEC、デルなどの納入が多い。協業関係などで利用するハードメーカーが固定しているベンダーも多いが、品質を見極めてその時々に応じてベストなハードを選択しているベンダーもある。
今後、在宅医療や介護連携が進む中で、ノートPCやタブレットなどモバイル端末の採用も期待される。しかし、まだ本格的な導入に至っていないのが現状である。
都道府県別の動向:地域ごとにニーズが異なる
都道府県別の電子カルテ普及率を見ると、沖縄県、富山県、石川県、神奈川県、東京都、大阪府、兵庫県、静岡県、滋賀県などの普及率が高い。その理由としては、離島が多いという地理的条件(沖縄県)、地域の医師会による積極的な取り組み(富山県、石川県)、都市圏における他院との差別化・省スペースのニーズがある(神奈川県、東京都、大阪府、兵庫県)などが挙げられる。また、都道府県別累計納入数では、東京都が3500件以上と飛び抜けて最も多く、次いで大阪府(2300件)、神奈川県(1900件)、兵庫県、愛知県、埼玉県と続いている。
今回紹介した調査内容の詳細や、診療所向け電子カルテベンダー各社の納入事例、営業・保守・開発体制、市場動向の詳細な見解については『2013年版 電子カルテの市場動向調査 ―電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向―』に記載されている。
著者紹介
加藤鈴佳(かとう すずか) 株式会社シード・プランニング エレクトロニクス・ITチーム 主任研究員
電子カルテを中心とした医療ITやディスプレー、デジタルサイネージ市場などのエレクトロニクス分野を担当する。
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