ある患者の生涯にわたるデータを管理できる電子カルテシステムには、電子保存の3原則を満たし、医療情報の超長期的な一次/二次利用を可能にする機能が不可欠だ。そのシステム要件とは?
医療現場における電子カルテの導入や利用に関するエッセイ集『電子カルテは電気羊に食べられる夢を見るか』(加藤 五十六 著)を題材に、「日本ユーザーメード医療IT研究会」(J-SUMMITS)のメンバーが、現場が抱える課題の解決策をリレー形式で提案する本連載。今回は「長期データを劣化なく参照するのは困難」の章を取り上げる。
さまざまな医療情報が電子化される中、ある患者の生涯にわたるデータを医療圏・国家レベルで長期的に保管して活用する“生涯カルテシステム”構築が進められている。海外では、シンガポール保健省が国家レベルの生涯電子カルテシステムを2011年に稼働させたと発表している。エッセイでは、生涯電子カルテを実現するには、ある患者に関する膨大なデータを80〜100年にわたり保管する必要がある一方、病院情報システムのリプレースが5〜8年ほどで行われることなどのギャップを指摘している。
本稿では、愛媛大学医学部附属病院 医療情報部副部長/准教授である木村映善氏が、医療情報の電子保存の3原則やエッセイの内容を踏まえながら、医療情報の長期的な保管・利用を可能にする電子カルテシステムの要件について考察する(編集部)。
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