弱小F1チームのケータハムが仮想化で実現した「意外なコストダウン」F1チームのIT事情

わずか半年でIT環境を構築してケータハムのF1参戦を実現させたピータース氏。同氏は仮想化を推し進めてコストを削減しただけでなく、サーキットにハイパフォーマンスコンピューティングを持ち込もうとしている。

2014年08月29日 08時00分 公開
[Archana Venkatraman,Computer Weekly]
Computer Weekly

 英ケータハムグループでIT部門の責任者を務めるビル・ピータース氏は、F1チームのITに関するビジョンをチームの新しいオーナーに説明する準備に忙殺されている。

 ケータハムF1チームは最近、前オーナーのトニー・フェルナンデス氏から、スイスと中東の企業で構成されたコンソーシアムに売却された。オックスフォードシャーを拠点とするこのチームは2012年に現在の名前となったが、以前はロータスレーシング(Lotus Racing)というチーム名だった。

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 ピータース氏はF1チームのITスタッフとしては大ベテランだ。ケータハムまたはロータスで5年、F1界の名門マクラーレンで12年と、通算17年のキャリアを持つ。

 「私はマクラーレン時代にいい経験をたくさんさせてもらった。ただ、大所帯の有名チームではどうしても組織化が進んで役割が固定化しがちなので、新しいことに挑戦したくなった(そこでチームを移った)」と、ピータース氏は語る。

 ピータース氏がケータハムに移ったのは2009年の10月だったが、当時の同チームのITシステムは白紙の状態であり、これを6カ月でフル機能をそろえた堅牢な状態で稼働させなければならない状況だった。2010年シーズンのレースに同チームが参戦するのをサポートするには、他に選択の余地はなかった。そこへ同氏が、F1チームの6人目の社員としてケータハムに加わった。「私が案内されたチームの拠点は、ノーフォークにあるがらんとした大きな納屋だった。ITもなければ人もいない。そしてITを配備する時間は、たった半年しか与えられなかった」とピータース氏は当時を振り返る(訳注)。

訳注:ケータハムF1のITシステム構築については、別冊Computer Weekly F1チームを支えるITの「F1参戦半年前から始まった、ケータハムF1のITシステム構築」でも紹介している。

 予算と残された時間によるプレッシャーをはね返して、同氏のITチームは斬新なアイデアを実行に移した。米IBM、米HP、米Dellなど複数のITサプライヤーを検討した結果、ピータース氏が選んだのはDellのPowerEdgeブレードサーバとIntelのXeonプロセッサだった。「Dellの製品は、われわれのニーズにぴったり合っていた」と同氏は語る。「IBMが提案してきた製品もわれわれの要件は満たしていたが、Dellよりも高価だった」

 拡張性のあるシステムを半年で、しかも予算の範囲で構築するためには、サーバの仮想化戦略を進めることが重要だったと、ピータース氏は話す。同氏の発想は、2009年当時としては時代を先取りしていた。このころはまだほとんどの業界で、物理インフラとメインフレームを運用するのが主流だったからだ。

 「物理的なIT環境では、サーバラック上のスペースを新たに確保するだけでも非常に費用が掛かる。しかし仮想化すれば、仮想マシン(VM)は1時間以内で、より安価にスピンアップ(稼働開始)できる」と、ピータース氏の部下であるスタッフは、SilverstoneサーキットのトラックサイドでITシステムの調整をしながら話してくれた(訳注)。

訳注:本インタビューは、2014年F1イギリスGP開催期間中に、Silverstoneサーキットで行われた。

 また、イノベーションは仮想化だけにとどまらなかった。ピータース氏が構築したトラックサイドのIT環境は革新的だ。同氏のチームは、DellとIntelのテクノロジーを採用し、デフォルトの設定をあまり変更することなく、仮想化環境を構築した。

 「(従来の物理インフラを利用する場合)トラックサイドにはサーバを5台搭載できるフルサイズのラックが必要だ。だがわれわれは(IT環境を)仮想化しているので、使うのはブレードサーバ用のラック1台だけだ」とピータース氏は語る。これが意外なところでコストダウンにつながった。それは何か? ピータース氏は続けた。

続きはComputer Weekly日本語版 8月20日号にて

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