援助を効果的に配備するために、数学者はデータ分析技術を使ってエボラ出血熱の感染がどう拡大するかを予測している。
世界保健機関の統計によると、これまでに確認されたエボラ出血熱の感染者は2万1689人、死者は8626人に上った。分析はウイルスとの戦いの鍵を握る武器として使われ、感染者数は減少に転じている。ギニア、リベリア、シエラレオネがこのウイルス性疾患と戦うために何よりも必要としたのは、照準の定まった医療援助だった。だが流行の規模があまりに大きく、援助の提供はロジスティック的な悪夢と化した。適切な援助を適切な場所に届けることは困難を極め、輸送インフラの不備や感染地域の広大さが事態を一層複雑にした。
最も効率的な援助の配備を支援するため、IBMはエボラ追跡システムを提供した。市民は新規のエボラ感染について、電話やテキストメッセージで自分たちの位置情報を添えて中央ハブに直接報告を寄せる。この情報はデータ分析とクラウドコンピューティングを使って処理され、政府や援助団体が感染拡大状況を把握する助けになる。このデータがあれば、援助物資を最も必要とされる場所に届けることができる。
この技術はエボラがどこに存在するのか、もっと正確に言えば、患者がどこで感染したのかについての情報を提供する。だが潜伏期間や診断にかかる時間のため、位置情報には数週間の遅れが生じることもある。
数学者はさまざまな技術を使ってエボラの感染がどう拡大するかを予測している。このおかげで政府や援助団体はリスクを知った上で医療介入に関する決定を下すことが可能になる。そうした技術の1つがモンテカルロ分析だ。
確固とした結果の予測を目指す決定論的モデリングと違って、モンテカルロ分析では一連の結果予測を生成する。これは一連の変数の間の関連をベースとしている。サンプルは観測されたデータを表す所定の統計的分布から無作為に抽出する。このモデルを実行するコードを使い、個々のサイクルに関する数千件のシミュレーションを完了すると、生成されたデータは統計的に最も可能性の高い結果を提示する。
「モンテカルロ分析では、流行の始まりから特定期間が経過した後の感染者数についての具体的な値は提示しない」。英サセックス大学数学部のエンリコ・スケーラス教授(統計・確率学)はそう解説する。「代わりに幅のある値が示され、それぞれに付随する確率、すなわちその値における確信の程度を測る尺度が示される」
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