VMware vs. OpenStack──ストレージ機能を徹底比較ソフトウェア定義データセンターに最適なのは?

市場で大きなシェアを占めるVMware vSphereと、大規模導入事例で注目度上昇中のOpenStack。これから導入するならどちらを選ぶべきか? 本稿ではストレージの観点から両者を比較した。

2015年07月28日 08時00分 公開
[Chris EvansComputer Weekly]
Computer Weekly

 ソフトウェア定義で実現するデータセンター(Software-Defined Datacenter:SDDC)は、ITの進化が実業界に影響を及ぼした一例だ。仮想化技術と米VMwareの「VMware」が普及したことが、SDDCというアプローチの拡大に大きく貢献している。また、この二者ほどの存在感ではないものの、米Microsoftの「Hyper-V」もデータセンターでよく利用されている。

Computer Weekly日本語版 7月15日号無料ダウンロード

本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 7月15日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。

なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。

ボタンボタン

 これらのプラットフォーム、特にVMwareは、仮想化技術が世界中のデータセンターを席巻したことによって、押しも押されもしない絶対的な地位を確立したように見える。しかし他にも、最近注目を集めつつある仮想化環境が存在する。オープンソースで、モジュラー形式のクラウドプラットフォーム「OpenStack」だ。

 VMwareの「vSphere」もOpenStackも共に、エコシステムを拡大させ、仮想化コンピューティング環境、ストレージ、ネットワークの実装、運用、管理機能を強化してきた。さらには、リソース管理、モニタリング、アラート送信などを実現するシステム管理ツールも登場している。

 そもそもOpenStackは、現在優勢な仮想化プラットフォーム(vSphere)とはほとんど比べものにならないと見る向きもあるだろう。だが、仮にVMwareの代用品としてOpenStackを使うとどこまでできる可能性があるのかという点に筆者は関心がある。

 ことに、米PayPalが既存のvSphere環境を、例え一部であるにせよOpenStackにリプレースしたという実例があると聞いて、この疑問を解明したいという気持ちがより強くなった。

 両方のプラットフォームと深く関わっているIT組織の立場から利点と課題を見つめることで、この疑問に対する答えを出そうと筆者は考える。今回はそれぞれの環境下での、ストレージの実装および管理の方法に焦点を当てる。

 以下でVMwareとOpenStackについて、ストレージの観点からそれぞれの長所と短所を詳しく見ていく。

VMware vSphere

 vSphereのシステム構成では、標準的なプロトコルを幾つか使用してVMwareのハイパーバイザーである「ESXi」とストレージをマッピングする。現在採用しているプロトコルには、Fibre Channel(FC)、iSCSI、Fibre Channel over Ethernet(FCoE)、Network File System(NFS)などがある。FC接続では、各ESXiホストが論理ユニット番号(LUN)すなわちボリューム経由でストレージにアクセスして、そこからさらにVMwareの仮想マシン(VM)用のストレージコンテナであるデータストアにマッピングされるという、かなり標準的な構成をサポートしている。

 接続の選択肢に関しては、vSphereではさまざまなタイプが幅広く提供されている。ところがストレージ管理では、VMwareは従来のアプローチを長年継続してきた。

 初期のvSphereは、ストレージをvSphere環境外に配置して管理していた。通常はストレージの管理者が、アプリケーションのパフォーマンスと可用性の要件に合わせてLUNを事前に構成し、提供していた。必然的にこのシステム設定プロセスは手作業となり、事前の計画もじっくり時間をかけて進めなければならなかった。

 vSphereはその後リリースを重ねるたびに、ストレージ管理を自動化する機能を進化させてきた。VMは、Storage DRSに含まれるポリシーを使用すれば、vSphereクラスタ間でキャパシティーや入出力(I/O)のロードなどをリバランスすることができる。他方、Storage I/O Controlを利用すれば、基本的な質の機能を実現するアプリケーションI/Oの優先順位を設定できる。

 しかしVMwareは、ストレージとハイパーバイザーの接続部分にインテリジェンス機能を提供する取り組みを続けた。その結果、ストレージサプライヤーがそれぞれ社内でプラットフォームを開発する際に利用できるAPI一式を開発し、同社製品に組み込んだ。

 こうしたAPIには、アレイ統合のための「vStorage APIs for Array Integration(VAAI)」、ストレージ向けの「vStorage APIs for Storage Awareness(VASA)」、データ保護用の「vStorage API for Data Protection(VADP)」が含まれる。APIを活用することで、VMをより効率よく管理するための指示をハイパーバイザーからストレージに送ることができる。

 VAAIはI/Oのオフロード(負荷分散)ケイパビリティを、VASAはハイパーバイザーに対してストレージプラットフォームのケイパビリティに関する情報を、そしてVADPはアプリケーションのバックアップとスナップショットを取得し続ける機能を、それぞれ提供する。

 vSphereストレージエコシステムの中で、手つかずの領域が恐らく最も大きいのは、ストレージのプロビジョニングの分野だ。

 大多数のストレージアレイサプライヤーは、ストレージのプロビジョニングとレイアウトの実装に対して、それぞれ異なる方式を採用している。両者間で整合性を維持することは、限りなく皆無に近い。ストレージの標準であるStorage Management Initiative Specification(SMI-S)がカバーしている範囲から外れているからだ。従って、VMwareがストレージプロビジョニング用のプラットフォーム内で標準となるAPIを開発するのは非常に困難だ。これまでのソリューションでは、ストレージアレイを起動してプロビジョニングを実行できるようにするプラグインをvSphere管理インタフェースに組み込んできた。このプロセスは今なお手作業で実行する。

 ところがvSphere 6で、プロビジョニングプロセスを大幅に簡素化するテクノロジー「Virtual Volumes(VVOL)」がリリースされた。論理上、1つのVVOLはVMの一部を表すと見なす。1台のVMを表すには、最低3本のVVOLが必要になる。各VVOLから環境設定データに対するマッピングを実行し、VMは空間ならびに少なくとも1台のVMディスクをスワップする。

 VMwareはストレージアレイのサプライヤーと協力し、vSphereエコシステム内からVVOLの作成や削除ができるようにした。これによって、かつて不可欠だったストレージ管理作業の多くが不要になり、ストレージ層でポリシーベースのVM管理を実現させるための基礎が作られた。

OpenStack

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

製品資料 発注ナビ株式会社

商談につながるリードをなぜ獲得できない? 調査で知るSaaSマーケの課題と対策

SaaSサービスが普及する一方、製品の多様化に伴い、さまざまな課題が発生している。特にベンダー側では、「商談につながるリードを獲得できない」という悩みを抱える企業が多いようだ。調査結果を基に、その実態と解決策を探る。

製品資料 株式会社ハイレゾ

GPUのスペック不足を解消、生成AIやLLMの開発を加速する注目の選択肢とは?

生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。