市場で大きなシェアを占めるVMware vSphereと、大規模導入事例で注目度上昇中のOpenStack。これから導入するならどちらを選ぶべきか? 本稿ではストレージの観点から両者を比較した。
ソフトウェア定義で実現するデータセンター(Software-Defined Datacenter:SDDC)は、ITの進化が実業界に影響を及ぼした一例だ。仮想化技術と米VMwareの「VMware」が普及したことが、SDDCというアプローチの拡大に大きく貢献している。また、この二者ほどの存在感ではないものの、米Microsoftの「Hyper-V」もデータセンターでよく利用されている。
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これらのプラットフォーム、特にVMwareは、仮想化技術が世界中のデータセンターを席巻したことによって、押しも押されもしない絶対的な地位を確立したように見える。しかし他にも、最近注目を集めつつある仮想化環境が存在する。オープンソースで、モジュラー形式のクラウドプラットフォーム「OpenStack」だ。
VMwareの「vSphere」もOpenStackも共に、エコシステムを拡大させ、仮想化コンピューティング環境、ストレージ、ネットワークの実装、運用、管理機能を強化してきた。さらには、リソース管理、モニタリング、アラート送信などを実現するシステム管理ツールも登場している。
そもそもOpenStackは、現在優勢な仮想化プラットフォーム(vSphere)とはほとんど比べものにならないと見る向きもあるだろう。だが、仮にVMwareの代用品としてOpenStackを使うとどこまでできる可能性があるのかという点に筆者は関心がある。
ことに、米PayPalが既存のvSphere環境を、例え一部であるにせよOpenStackにリプレースしたという実例があると聞いて、この疑問を解明したいという気持ちがより強くなった。
両方のプラットフォームと深く関わっているIT組織の立場から利点と課題を見つめることで、この疑問に対する答えを出そうと筆者は考える。今回はそれぞれの環境下での、ストレージの実装および管理の方法に焦点を当てる。
以下でVMwareとOpenStackについて、ストレージの観点からそれぞれの長所と短所を詳しく見ていく。
vSphereのシステム構成では、標準的なプロトコルを幾つか使用してVMwareのハイパーバイザーである「ESXi」とストレージをマッピングする。現在採用しているプロトコルには、Fibre Channel(FC)、iSCSI、Fibre Channel over Ethernet(FCoE)、Network File System(NFS)などがある。FC接続では、各ESXiホストが論理ユニット番号(LUN)すなわちボリューム経由でストレージにアクセスして、そこからさらにVMwareの仮想マシン(VM)用のストレージコンテナであるデータストアにマッピングされるという、かなり標準的な構成をサポートしている。
接続の選択肢に関しては、vSphereではさまざまなタイプが幅広く提供されている。ところがストレージ管理では、VMwareは従来のアプローチを長年継続してきた。
初期のvSphereは、ストレージをvSphere環境外に配置して管理していた。通常はストレージの管理者が、アプリケーションのパフォーマンスと可用性の要件に合わせてLUNを事前に構成し、提供していた。必然的にこのシステム設定プロセスは手作業となり、事前の計画もじっくり時間をかけて進めなければならなかった。
vSphereはその後リリースを重ねるたびに、ストレージ管理を自動化する機能を進化させてきた。VMは、Storage DRSに含まれるポリシーを使用すれば、vSphereクラスタ間でキャパシティーや入出力(I/O)のロードなどをリバランスすることができる。他方、Storage I/O Controlを利用すれば、基本的な質の機能を実現するアプリケーションI/Oの優先順位を設定できる。
しかしVMwareは、ストレージとハイパーバイザーの接続部分にインテリジェンス機能を提供する取り組みを続けた。その結果、ストレージサプライヤーがそれぞれ社内でプラットフォームを開発する際に利用できるAPI一式を開発し、同社製品に組み込んだ。
こうしたAPIには、アレイ統合のための「vStorage APIs for Array Integration(VAAI)」、ストレージ向けの「vStorage APIs for Storage Awareness(VASA)」、データ保護用の「vStorage API for Data Protection(VADP)」が含まれる。APIを活用することで、VMをより効率よく管理するための指示をハイパーバイザーからストレージに送ることができる。
VAAIはI/Oのオフロード(負荷分散)ケイパビリティを、VASAはハイパーバイザーに対してストレージプラットフォームのケイパビリティに関する情報を、そしてVADPはアプリケーションのバックアップとスナップショットを取得し続ける機能を、それぞれ提供する。
vSphereストレージエコシステムの中で、手つかずの領域が恐らく最も大きいのは、ストレージのプロビジョニングの分野だ。
大多数のストレージアレイサプライヤーは、ストレージのプロビジョニングとレイアウトの実装に対して、それぞれ異なる方式を採用している。両者間で整合性を維持することは、限りなく皆無に近い。ストレージの標準であるStorage Management Initiative Specification(SMI-S)がカバーしている範囲から外れているからだ。従って、VMwareがストレージプロビジョニング用のプラットフォーム内で標準となるAPIを開発するのは非常に困難だ。これまでのソリューションでは、ストレージアレイを起動してプロビジョニングを実行できるようにするプラグインをvSphere管理インタフェースに組み込んできた。このプロセスは今なお手作業で実行する。
ところがvSphere 6で、プロビジョニングプロセスを大幅に簡素化するテクノロジー「Virtual Volumes(VVOL)」がリリースされた。論理上、1つのVVOLはVMの一部を表すと見なす。1台のVMを表すには、最低3本のVVOLが必要になる。各VVOLから環境設定データに対するマッピングを実行し、VMは空間ならびに少なくとも1台のVMディスクをスワップする。
VMwareはストレージアレイのサプライヤーと協力し、vSphereエコシステム内からVVOLの作成や削除ができるようにした。これによって、かつて不可欠だったストレージ管理作業の多くが不要になり、ストレージ層でポリシーベースのVM管理を実現させるための基礎が作られた。
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