【前編】Gartner Symposium/ITxpoリポート
『カールじいさんの空飛ぶ家』は“早く失敗する”文化が生み出した、Pixar社長が語る
米Gartnerが最近開催した年次イベントから、「失敗の2つの側面」「コグニティブコンピューティングに賭けるIBM」「データ責任者と分析責任者の違い」といったトピックを取り上げる。今回はその前編。
米Pixar Animation Studiosと米Walt Disney Animation Studiosの社長を務めるエド・キャットムル氏は、「われわれの映画はどれも、製作当初はひどい代物だ」と著書で述べたことがよく引用されてきた。同氏は2015年10月に米国オーランドで開催された「Gartner Symposium/ITxpo」で、この言葉は謙遜ではないと数千人の聴衆に語った。
厳しい自己評価だが、キャットムル氏の言わんとするところは、新しいアイデアが完璧であることはまずないということだ。そこで同氏は自身のチームに、次の傑作を目指す中で繰り返しアイデアを出すこと、さらには失敗することを奨励している。
関連記事
企業におけるイノベーションについて
スタートアップについて
失敗はIT業界でも珍しくない。シリコンバレーの技術開発のモットーは、「早く、何度も失敗せよ」だといえる。このフレーズは事実上、イノベーションのプロセスそのものとなっている。しかし、キャットムル氏が指摘したように、「早く失敗する」文化を職場で作るのは容易なことではない。「問題は、失敗という言葉には2つの意味があることだ」(同氏)
1つの意味は、失敗という概念の合理的な、ほとんど科学的な捉え方に基づいている。それは企業が「早く失敗する」と言うときの捉え方だ。「われわれは皆、『われわれが過去に失敗したときにそれらの失敗から学び、その結果として現在のわれわれがある』ことを知っている」とキャットムル氏は説明した。もう1つの意味が物事を複雑にしているという。「その意味は、われわれが学校で覚えたものだ。つまり、『授業やテストで失敗したら、それは自分がしくじったか、あまり勉強しなかったか、頭が悪いということだ』と失敗を否定的に捉えるわけだ」。実際、政府の失敗も人間関係の失敗もビジネスの失敗も、どれも喜ぶことではない。
失敗にはこうした2つの意味があることが、早く失敗することの障害となっている。失敗が持つこうした複雑さをCIOが認識せず、対処しない場合はなおさらだ。「われわれがこの複雑さを念頭に置かなければ、社員は失敗の否定的な意味にとらわれてしまう」とキャットムル氏は語った。
では、CIOにできる最善のことは何か。それはキャットムル氏の先例に倣って、社員の失敗が“許される”安全な場を作り、新しいが弱いアイデアとそれに取り組む社員を守ることだ。「守るとは、社員が失敗できるようにし、その取り組みのプロセスでは社員の評価を下さないことだ。彼らは物事を成し遂げようと挑戦しているところだからだ」(同氏)
Pixarの『カールじいさんの空飛ぶ家』(原題: Up)を例に取ろう。多くのファンを持つこの映画では、妻に先立たれた老人と、偶然その空飛ぶ家に乗り合わせた少年が体験する大冒険が描かれる。だが、キャットムル氏のチームが最初に考えたアイデアでは、全く違うストーリーが構想されていた。それは、空に浮かぶ城に住む人々と地上の人々が戦うというものだった。「このバージョンはうまくいかなかった」とキャットムル氏。次のバージョンも、さらにその次のバージョンも同様で、それらを経てようやく、作品賞を含むアカデミー賞5部門にノミネートされたバージョンが生まれた。
「失敗には2つの異なる側面があることを、少なくとも理屈の上では理解できれば、失敗は、何か新しいことをした必然的な結果であることを理解するようになる」(キャットムル氏)
後編では「コグニティブコンピューティングに賭けるIBM」「データ責任者と分析責任者の違い」についてリポートする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[ポールトゥウィン株式会社] 開発スピードと品質を両立、DONUTSが実践する「ハイブリッドなQA体制」の構築術 -
製品レビュー
[ポールトゥウィン株式会社] 開発スピードと品質は両立できる? DONUTSの「ジョブカン」に学ぶQA戦略 -
市場調査・トレンド
[レッドハット株式会社] 「プラットフォームエンジニアリング」調査レポート:利点・課題・未来像を詳説 -
市場調査・トレンド
[レッドハット株式会社] 生成AI活用のためのテクノロジー基盤、構築に際しての7つの検討事項とは? -
製品資料
[レッドハット株式会社] ビジネスの現場へのAI導入と活用、何から始めてどのように進めるべきか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
2
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
3
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
4
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
-
5
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
6
「サイバー犯罪株式会社」に潜入 現地調査で判明した“犯罪者求人”の実態
-
7
GPU偏重に迫る転換点 AnthropicがAkamaiにCPUインフラ託す理由
-
8
人間のせいでAIエージェントの生産性が上がらない
-
9
AIプロジェクトが“目的不明”で凍結する理由 問題は「ツール選定」ではない?
-
10
マネジメント未経験でも大手に行くには? 企業規模で変わる情シス転職の勘所
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
3
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
4
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
5
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
6
AI活用を停滞させる「2:6:2の壁」を乗り越えるためのポイントとは?
-
7
ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
-
8
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
9
複雑な組織構造で一度は頓挫した電子化、東京女子医科大はどう全学展開したか
-
10
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー