QiでもPowermatでも、スマートフォンのワイヤレス充電には充電ベースが必要になる。ワイヤレス充電パッドの価格は機能によって異なるが、大体10ドルから70ドルだ。卓上に置くフラットなマットタイプから、スマートフォンを立てて置くスタンドタイプまで、いろいろな形やサイズがあり、デザインも美しい。充電板や充電パッドは改良が進んでおり、モバイルバッテリーとしても使える充電パッドも登場している。ワイヤレス充電では熱が発生しやすいため、小型のファンを装備したモデルもある。
ワイヤレス充電に対応していないスマートフォンのために、ワイヤレス充電パッドを利用できるようにするアクセサリーを販売している。スナップオン式のワイヤレス充電カバーは、スマートフォンの背面バッテリーカバーと交換することで、充電パッドを利用可能にする。スマートフォン全体を覆う充電用ケースもある。
ワイヤレス充電に対応した家具も登場した。その先陣を切った世界的な家具メーカーIKEAでは、モバイル端末充電ステーションにもなるナイトスタンドやランプを販売している。それらの家具の「+」マークの付いた場所にワイヤレス充電規格に対応するスマートフォンを置けば、充電を開始する。この方式に対応していないスマートフォンも、別売の充電用カバーを購入すれば利用可能だ。
Powermatのワイヤレス給電システムを導入するコーヒーショップやレストラン、空港が続々と増えている。テーブルやカウンターに充電ステーションを設置して、利用者サービスの一環とするのが目的だ。そうした利便性で利用者を引き寄せるだけでなく、電力消費を追跡して記録できるPowermatの機能を活用して、利用者の動向を把握して業務に役立てることもできる。利用者がこの充電サービスを使うには、モバイル端末にPowermatアプリをダウンロードする必要がある。店舗や施設はそのアプリで収集した情報を利用して利用者のスマートフォンに通知や広告を配信できる。
Starbucksは、ニューヨーク市内の店舗300カ所にPowermatの充電スポットを設置した。Starbucksの充電ステーション設置数が2番目に多い都市はボストンで、次いでロサンゼルス、サンフランシスコ・ベイエリアが続く。大学も導入を開始し、キャンパスの公共エリアにワイヤレス充電ステーションを設置した。フロリダ州立大学とカリフォルニア州立大学サンバーナディーノ校は、Powermatの教育機関パートナーだ。
米General Motorsは、「シボレー マリブ」(Chevrolet Malibu)と「シボレー インパラ」(Chevrolet Impala)の2016年モデルから、Powermatのワイヤレス充電ステーション搭載車の販売を開始している。
規格競争の最終的な勝利者は、それを利用する消費者だ。スマートフォンのワイヤレス給電規格の標準化争いにも、それは当てはまるだろう。一般消費者の支持をめぐる接戦はまだ続いている。Powermatは、StarbucksやDelta Airlines、さらに米McDonald'sなど、公共スペースでの導入数を飛躍的に伸ばしている。一方、Qiは、主要端末メーカーの幅広い支持を獲得しており、数多くのAndroidスマートフォンで事実上の業界標準となっている。
韓国SamsungがGalaxy S6シリーズとGalaxy Note 5で両方の規格をサポートすることを決定したように、他の端末メーカーが両方の規格に対応するメリットに気付くのも時間の問題かもしれない。それが実現すれば、利用者は自宅でQi対応充電パッドを使い、近所のStarbucksでコーヒーを飲みながらPowermat対応の充電カウンターを使うことが可能になるだろう。
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