アプライアンスはそのシンプル性とビッグデータの流行によって普及が促進され、サプライヤーはクラウドサービスの統合に力を入れている。
米Gartnerの「Hype Cycle」は、技術トレンドを測るバロメーターになる。Gartnerの情報管理担当調査ディレクター、ロクサン・エジラリ氏によれば、データウェアハウスアプライアンスは誇大宣伝をはるかに越えて普及しつつある。
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アプライアンスは、サプライヤーがOSとデータベースをハードウェアにプリインストールして、全てをデータウェアハウス型のワークロードに合わせてあらかじめ調整する。導入企業特有のニーズに合わせた最適化のためにはさらなる調整が必要だが、汎用(はんよう)トランザクションデータベースに比べれば、そのままの状態でもデータウェアハウスのニーズに対応させやすい。
エジラリ氏は言う。「評判がいいのはこの作業のために調整され、均衡が保たれていることによる。データウェアハウスソリューションとしてごく一般的になったので、2014年の時点でGartnerはこれをHype Cycleからメインストリームへ移行させた。顧客はメリットを認識し、データウェアハウスモダナイゼーションの一環としてこれを採用している」
ユーザーにとってのもう1つの利点として、データベースとOS、管理ソフトウェア、ハードウェアを別々のサプライヤーから調達する場合と異なり、アプライアンスであれば1つのサプライヤーからパフォーマンスの調整や問題への対応といった支援を受けることが挙げられる。
その他にも、顧客のニーズ次第でサプライヤーにはさまざまなメリットがあるとエジラリ氏は話す。データウェアハウスアプライアンスのサプライヤーについては市場シェアに関する情報が少ない。Gartnerは米Oracle、米Teradata、米IBM、米Microsoft、独SAP、米HPを「リーダー群」に分類している。「ServerWatch」は、データベース管理システム市場における4大製品に「Oracle Database」「Microsoft SQL Server」「IBM DB2」「SAP Sybase Adaptive Server Enterprise」を挙げる。ただしこの分類にはトランザクションデータベースも含まれる。
市場シェアをどう測るにしても、最近のデータウェアハウスアプライアンスの普及を後押ししているのはビッグデータであり、もっと一般的には分析パフォーマンスに対するニーズだ。企業はクリックの流れやソーシャルメディアのコメントといった構造化されていないデータを、自分たちが理解できる環境に取り込みたいと考えている。
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分散型ファイルストレージシステムの「Hadoop」はこうしたデータの保存を支援することが可能だ。しかし、Hadoopはオープンソースであり、多くのユーザーはなじみがない。アプライアンスを使って管理やクエリ、分析に対する今あるアプローチにHadoopを取り入れれば、ユーザーにも受け入れられやすいとエジラリ氏は指摘する。
「アプライアンスへのHadoop追加とは興味深い。データウェアハウスアプライアンスを拡張してビッグデータの筋書きに対応できる」
エジラリ氏によると、Microsoft、米Pivotal、Oracle、Teradataの製品はいずれも、知名度が低い「MapReduce」ではなく、データサイエンティストが慣れ親しんだSQLを使って、Hadoopに格納された構造化されていないデータにクエリを発行することができる。IBMは「Netezza」にHadoopを統合した「BigInsight」経由でHadoopにSQLでクエリを出すことができる。SAPもHadoopでSQLをサポートしている。
データウェアハウス向けアプライアンスを採用する上での唯一の制約は、予算と組織の規模かもしれない。「数は少ないものの、用途によってはハードウェアとソフトウェアを別々に調達した方がいいこともある。違う部門がハードウェアとソフトウェアを管理している場合もあり、何もかも1台に収めてしまうとうまくいかない」(エジラリ氏)
調査会社451のデータプラットフォーム・分析担当調査ディレクター、マシュー・アスレット氏はアプライアンスの難点として、コストの高さと主要サプライヤーに縛られる技術的選択肢の制約を挙げる。だがそうした点は、社内でシステムを構築するコストと比較すれば相殺されるはずだ。
「ハードウェアとデータベースのサプライヤーを分けるのは、ある程度メリットがあるかもしれない。だが設定や導入を全て自社でやれば複雑性が高まるだろう」(アスレット氏)
いずれにしても、データウェアハウスアプライアンスの主要サプライヤーとは切り離して、自社のニーズに合った分析ツールを選定することは可能だとアスレット氏は話している。
だが真に選択すべきは、アプライアンスと混合アプローチを取るのか、それとも社内ハードウェアとソフトウェアを取るのかという点ではない。これはオンプレミスアプライアンスと社外のクラウドの間で選択すべき問題だと同氏は指摘する。
「米Amazon Web Servicesが(クラウドデータウェアハウスの)『Amazon Redshift』でこの数年間に行っているのは、Netezzaが1990年代にアプライアンスの導入でやったことだともいわれている。設定済みで導入しやすいという、かつてはアプライアンスでのみ可能だった条件が、今やクラウドサービスで実現できるようになった」(アスレット氏)
主要サプライヤーはこの対極を理解していて、アプライアンスにおけるデータ構造と管理へのアプローチに沿ったシームレスなクラウドサービスを提供することで、顧客に選択を強いることを避けている。
英携帯電話販売会社のCarphone Warehouseは、データウェアハウスの性能と可用性の低さのために、小売り事業の実績の測定が難しいという問題を抱えていた。
そこで同社はIBMと契約。それまでのOracle Database環境を、Netezzaをベースとする「IBM PureData System for Analytics」に入れ替えたという。
同システムは、店舗と供給網、保険業務を支える同社の小売り部門の意思決定を支援できるよう設計された。
Carphone Warehouseによると、新しいビジネスインテリジェントサービスの商品化までにかかる時間は50%以上短縮され、性能は最大で1200倍に高速化。新しい収入源を通じて採算性が向上し、コストは削減できたという。
窓メーカーのデンマークVeluxもデータアプライアンスを使っている。同社は「単一バージョンの真実」の形成を目指し、「SAP HANA」を選択した。
同社は処理の高速化を図るため、いずれもSAP HANAのインメモリ技術に支えられた「SAP Business Warehouse」と「SAP Business Planning and Consolidation」に切り替えて、事業計画や予測に利用している。その結果、クエリ時間は4〜5秒に短縮され、ビジネスインテリジェンスツールの利用は300%増え、年に一度だった予測や計画の立案は毎月実施に切り替えた。
新しい製品に分類されていたアプライアンスは、データウェアハウスハードウェアとソフトウェアにおける主流の選択肢へと成長した。ハードウェアとソフトウェアを個々に選定することを検討すべきは、ニーズが小さすぎる企業、あるいは社内に豊富なスキルがそろっている企業に限られる。
一方、データウェアハウス向けクラウドサービスの成長で、会社のデータや分析サービスに対する需要の増大にどう対応するかという意思決定には、新たな次元が加わっている。
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