注力分野を分ける
「サイバーセキュリティチーム」をクラウド、モバイル、IoT担当に分けるべきなのか?
1つのリスク領域に特化した専門のセキュリティチームを編成することで企業の攻撃対象領域は削減できるのか。本稿では、情報セキュリティの専門家が、このアプローチのメリットとデメリットについて解説する。
多くの企業では、サイバー攻撃の対象領域が着実に拡大している。というのも、ノートPCやデスクトップPCといった従来のエンドポイント端末やサーバの保護に加えて、クラウドアプリケーション、モバイルデバイス、モノのインターネット(IoT)デバイスを攻撃から保護しなければならないからだ。企業は、こうした無数の脅威に対処するサイバーセキュリティチームの最適な配置方法を解明しようとしている。
検討されつつあるアプローチは、クラウド、モバイルデバイス、IoTなどといった主なリスク領域に特化した専門のグループにサイバーセキュリティチームを細分化するというものだ。この組織的なモデルでは、サイバーセキュリティチームが分割される。このようなアプローチのメリットとデメリットは何だろうか。本稿では、それを解説する。
関連記事
今、セキュリティチームが取り組むべき課題は?
強いセキュリティチームを作る
専門のセキュリティチームを編成するメリット
専門のセキュリティチームを編成する大きなメリットは、企業が、クラウドアプリケーションへの攻撃といった特定の脅威やリスクに対する防御に関して深い知識を持つ専門家を社内に配置できるようになることだ。クラウドアプリケーションを保護するために必要な知識は、IoTデバイスを保護するために必要な知識とは大きく異なる。一般的なセキュリティチームと比較して、専門のセキュリティチームは特定のリスク領域に対する防御能力が優れている。
専門のセキュリティチームを編成するもう1つのメリットは、サイバーセキュリティチームが、サイバーセキュリティテクノロジー、リスク、脅威に関して受け取る膨大な量の情報を処理する上で役立つことにある。サイバーセキュリティチームのメンバーが持っている知識の範囲が狭くて浅いのは、珍しいことではない。専門家をチームに編成することで、サイバーセキュリティチームは受け取った情報をより適切に処理し、情報に基づいて行動できるようになる。
専門のセキュリティチームを編成する潜在的なデメリット
多くの企業にとって、サイバーセキュリティチームを特定のリスク領域ごとに編成するのは現実的ではない。なぜなら、小規模なサイバーセキュリティチームを用意するので精いっぱいだからだ。サイバーセキュリティへの予算が潤沢な企業でも現実は厳しい。現在、専門のチームに配置する専門スキルを持った人材は限られており、そうした人材の需要は高い。
専門のセキュリティチームを編成する重大なデメリットは、こうしたチームがリスクの特定の領域にしか気を配らない自己中心的なチームになる可能性があることだ。それにより、企業にとって重大で総合的なサイバーセキュリティのリスクに適切に対処できなくなる恐れがある。さらに、サイバーセキュリティチームの時間とコストが非効率的かつ無駄に消費される可能性もある。
それから、サイバーセキュリティチームの細分化により、企業のサイバーセキュリティ制御が補完的でなくなる可能性もある。例えば、モバイルデバイスの制御がクラウドやIoTの制御と連携しない場合などだ。
専門のセキュリティチームを編成することで生じるデメリットは他にもある。仮想現実など新しい主なリスク領域が出現した場合、企業は専門のチームを追加で編成し、サイバーセキュリティチームをさらに細分化しなければならない。
あるべきアプローチ
サイバーセキュリティに関する多くのベストプラクティスと原則は、現在および将来の複数のリスク領域に適用することができる。具体的には、最小権限、ロールベースのアクセス制御、強固な認証、詳細なログ記録などだ。
多くの企業では、最高情報セキュリティ責任者(CISO)の監督下に最低でも次の4つのチームを備えた柔軟で統一的な枠組みのサイバーセキュリティチームを編成することを推奨したい。
- インフラセキュリティ:企業の技術的なインフラのセキュリティを確保する役割を担う
- データセキュリティ:企業のデータおよびアプリケーションのセキュリティを確保する役割を担う
- セキュリティテスト:企業のセキュリティ制御を定期的にテストする役割を担う
- セキュリティアーキテクチャ:企業の機密データおよび情報システムを保護する適切なセキュリティ制御が実装されていることを検証する役割を担う
通常のリスク評価とデータインベントリ(機密データが企業にどのように流入し、通過して出ていったのかの特定と文書化)と組み合わせることで、上述の枠組みはリスク緩和と補完的な制御のための協調的なアプローチとなるだろう。
主なリスク領域に注力する専門のセキュリティグループよりも、柔軟で統一的なアプローチを採るサイバーセキュリティチームを編成した方が、多くの企業では、よりサイバーセキュリティの脅威を軽減することができる。企業にとって、適切なタスクを遂行し、自社を適切に保護するサイバーセキュリティチームを配置することが極めて重要だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法 -
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
2
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
3
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
4
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
5
身代金支払いは逆効果 情シスのためのランサムウェア対策ガイド2026
-
6
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
7
DXを阻む「動くだけ」のレガシーシステムに決別するための生成AI活用術
-
8
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
9
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
10
自社を守る「SCS評価制度」活用法 7割の企業が取引先起点の情報漏えいに直面
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー