「フォーミュラE」がメジャーになる日も近い?
AI制御の「自動運転レーシングカー」がサーキットを駆け抜ける日
自動運転車がカーレースの世界にも進出しつつある。AI搭載の「ロボカー」が、時には過酷にもなり得る環境での高速運転に耐え、緻密な状況判断でレースを制する日は来るのだろうか。
「アドレナリンが湧き立つような興奮」と言えば、F1レース観戦に勝るものはないだろう。卓越したスピードや高度な運転技術、集約されたテクノロジーの粋が、華やかなF1を支えている。AIが自動運転を可能にしつつある未来には、サーキットにさらなる興奮とスリルが加わるだろう。
自動運転車が“未来の乗用車”として活躍を期待される状況では、“自動運転レーシングカー”のアイデア出現も自明の理だ。無人EVレーシングカーによる世界初のチャンピオンシップとなる予定の「ロボレース(Roborace)」をご存じだろうか。同レースには、各チーム2台の構成で、10チームによる計20台のレーシングカーがエントリーする。ステアリングを握るのは、スーパースターのF1ドライバーではない。高度な能力を有するAIソフトウェアが、このレースのあらゆる局面をスマートに制御するのだ。
「ロボカー」の性能とは
ダニエル・サイモン氏がデザインを手掛けたティアドロップ型のレーシング・ロボカー(以下、ロボカー)は、空気力学的に即した未来的な形を身にまとい、まるでSF映画からそのまま飛び出してきたようなマシンに見える。実際、同氏は「オブリビオン」や「トロン:レガシー」などのハリウッドSF映画制作にも関わっている。ロボカー製作に投資するKinetikは、4種類のプロトタイプを発表する予定だ。同社によるプロトタイプは、軽量カーボンファイバー製ボディー、ミシュラン製タイヤ、そしてNVIDIA製自動運転車用スーパーコンピュータを搭載するという。
ロボカーの動力は、540キロワット(kW)のバッテリーから供給され、各タイヤに搭載された4基の出力300kWのモーターを駆動する。同社によれば、ロボカーの全長は4.8メートル、全幅は2メートル。車両重量は約1000kgで、最高速度は時速300キロ(時速190マイル)に達するという。走行の制御は、6つのAIカメラや全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite Systems)による位置検出、レーダー、5つのLIDAR(光検出と測距)と18の超音波センサーを含む高度な光学システムを駆使して行う。1年弱の開発期間を経て、Kinetikのロボカーは、オープンアーキテクチャを備えるNVIDIAのスーパーコンピュータ「Drive PX2」を“脳”として装備した。同製品は、は毎秒24兆回の人工知能演算が可能だ。ロボカーのハードウェアシステム全体は、360度全方位の状況認識を行う深層学習を活用している。
ロボカーのハードウェアは、至って標準的だ。レース結果を左右する運転技量の鍵は、レーシングカーを走行させるAIソフトウェアに搭載されたプログラミングが握る。
ロボカーの将来
高速走行向けの路面や車体のスピードに大きく左右される走行環境下では、安全で効率的な技術の開発にロボカーが欠かせない。大手自動車メーカーのFordやAudiは、自動運転技術に大規模な投資を行っている。RoboraceおよびChargeの最高経営責任者(CEO)であるデニス・スベルドロフ氏は、「人間とAIが制御するマシンとの間に、強い感情的なつながりを作りたい」と話す。「自動運転車との感情的なつながりが構築できれば、人間とロボットとの距離も縮まり、私たちの進むべき道も決まるでしょう」と、同氏は語る。
今後の課題とは
多くのAIシステムと同様、ロボカー用AIはまだ開発途上にある。「DevBot」は、ロボカーの前身となるAI搭載車輛で、運転手のみによる運転、無人の自動運転、もしくは運転手を乗せた形での自動運転が可能だ。Roborace用にDevBotが開発された理由は、レース用のソフトウェアの開発に際し、マシンから直接知見を得るためだ。EV(電気自動車)レーシングカー、いわゆる「フォーミュラE」によるレースで、DevBotは高速走行中のコーナリングの計算を誤り、壁に衝突してしまった。
このような事故は、高速で走行する自動車用のAI技術にまだまだ改善の余地があることを示している。具体的には、人が運転の際にごく自然に行っている“何千もの”状況判断を機械が実現できるよう、車載AIに大幅な改良を加える必要がある。それらの状況判断には、レースの条件や各サーキットの路面の種類、状況に応じたブレーキの掛け方、運転判断から発生し得るリスクの予測などが含まれる。AI技術による自動運転車の安全性が十分に実証されれば、自動運転車は今後急速に普及するだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
4
サーバ約70台をAWSへ ヤナセが移行前にやった「通信要件の可視化」
-
5
AIインフラの理想形? 「5層のケーキ」を垂直統合するための近道とは
-
6
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
7
脱VMwareの真実:データセンター大手がNutanixを選んだ「コスト以上の理由」
-
8
多品種小ロットの「手書き・配合ミス」を克服 キャニオンスパイスの食品工場DX
-
9
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
10
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー