2018年04月05日 09時00分 公開
特集/連載

Cambridge Analytica報道が物語るデータ収集の教訓Facebookデータの不正利用

データ分析企業のCambridge AnalyticaによるFacebookデータの不正利用が明るみに出た。今後は、企業による倫理的配慮に基づくデータ収集がますます重要になるだろう。

[Ed Burns,TechTarget]

 データ分析企業のCambridge AnalyticaがFacebookデータを不正に収集したニュースが報道された際、企業によるデータ収集と分析の実施の根底を揺るがしかねない亀裂が明らかになった。

 今日、一般消費者向けWebサイトを持つ全ての企業は、既存の顧客、あるいは顧客にかかわらず、実質的に顧客データを収集している。多くの企業は、第三者経由で追加ソースを取得し、データセットを強化している。しかし社会が「企業は倫理的配慮に基づいてデータマイニングを実施していない」と感じる場合、このデータ収集と分析活動の基盤が崩れる可能性がある。

 「信頼を一度でも失うと、決してそれを取り戻すことはできない」とVerizon Communications会長兼CEO、ローウェル・マクアダム氏はIBMのカンファレンス「Think 2018」の基調講演で語った。電気通信企業である同社は膨大な量の顧客データを扱っているが、どのような情報を収集し、そのデータをどのように使用しているかについて顧客に明確に理解してもらうように努めており、ベライゾンでは利用目的が明確ではないデータの収集を避けている、と同氏は語った。

 その理由は信頼だ。マクアダム氏によれば、データが悪用され、企業が倫理に基づくデータマイニングに取り組んでいない、と顧客が感じると、その企業に対して不信感を抱き始める。これは単に、ある企業のデータ収集と分析の取り組みだけにとどまらず、一般社会がその企業全体に抱くイメージを悪化させる可能性がある、と同氏は警告した。

 「われわれは、シリコンバレーの企業で何が起こっているのかを見てきた」とマクアダム氏は、現在のCambridge AnalyticaのスキャンダルがFacebookにどのようにダメージを与えているかに一部言及しながら語った。そして「われわれはそのような状況に陥ることを望んでいない」と話した。

企業によるデータマイニングの取り組み 企業によるデータマイニングの取り組み《クリックで拡大》

信頼に対する大規模な侵害

 New York Timesは2018年3月17日、Cambridge AnalyticaによるFacebook利用者のデータ不正使用に関するニュースを報道した。同社はロンドンを拠点とするデータコンサルタント会社で、2016年のドナルド・トランプ氏の大統領選挙キャンペーン陣営に雇われた企業だ。同社は約5000万人のFacebookユーザーから個人情報データを収集したが、そのうち、実際に調査に参加することで個人情報が収集されることに承諾していたのはわずか27万人だけだった。

 IBMカンファレンスでは、KPMGのコンサルタントであるクリフ・ジャスティス氏がこの状況を「信頼に対する大規模な侵害」として説明した。同氏は「特に人工知能(AI)の能力が向上するにつれて、このようなデータが個人や企業に対しての武器となり得るのに加え、倫理的配慮に基づくデータマイニングの実施と強固なデータ保護が最優先される必要がある」と述べた。

 同氏は、ある会社の行為に憤慨する可能性を抱く人物の特定を目的としてCambridge Analyticaが入手した詳細な個人情報を不正利用する例を仮説として使った。特定された人たちは、その会社に対して抗議行動を起こすよう駆り立てるデマ情報のキャンペーンを展開する上で好ましい対象となり得るという。

 「デマ情報を信じやすい人たちにある企業の偽情報を提供することで、Twitterの軍隊を編成し、企業の市場価値を抹消することが可能だ」とジャスティス氏は語った。そして「AIは、人々の深いパーソナリティープロフィールを理解し、人々に影響を与える方法を正確に理解することによって、人々を操作することができる」と話した。

データガバナンスへの信頼を構築する

 保険・金融サービス企業USAAの財務アドバイスおよびソリューショングループの情報ガバナンス担当ディレクターであるジェイソン・フェデロフ氏は、これまで企業は、自社が保有するデータは信頼できる、と単純に仮定し、それに基づいて顧客や自社に利益をもたらすと思われる意思決定に満足していたと語った。しかし、Cambridge Analyticaやフェイクニュースが世論を賑わせる時代においては、このような推測をすることがますます困難になり、倫理的な配慮に基づいてデータマイニングを実施するためのポリシーの策定が重要になっている、とフェデロフ氏は述べる。

 「私の子どもたちはいつも、ばかげたことを話してくれるのだが、実際は、子どもたちは見たり聞いたりすることを全て信じているということだ」と同氏は語った。「ビジネス環境でも同じことが起こる。われわれはデータを検証せずにそのまま受け入れ、ビジネス上の意思決定を下している」と言う。

 企業は、データの出どころとその利用方法を追跡するために、さらに多くのことを行う必要がある、とフェデロフ氏は述べる。データリネージは、データの出どころと変更方法を記述したデータにメタデータを付加するという考え方であり、同氏は、データリネージが全ての企業においてデータガバナンスポリシーの中心的役割を果たすべきだ、と指摘した。データリネージを適切に行うと、エンドユーザーはデータに触れたさまざまな人々が倫理的にデータマイニングの手順に従っているかどうかを確認できる。

 フェデロフ氏は、不適切なデータに基づくビジネス上の意思決定は、顧客に危害を及ぼす可能性が潜在的にあるとし、一度でも企業が社会からの信頼を損なうと、その信頼を取り戻すことはほとんど不可能に近いと述べた。フェデロフ氏によれば、Facebookが公共の信頼を取り戻す方法については今の段階では不明だが、より優れたデータガバナンスがその出発点となるかもしれないという。

 「Facebookの投稿を見て、それがどのように作成されたのかに関するリネージが明示されていれば、それは素晴らしいことではないだろうか。社会はそのような方向に向かっていると思う。われわれはある時点で、保有している悪い情報に飽き飽きする時が来るだろう」とフェデロフ氏は言った。

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