「人工知能のバイアス」を考える【後編】
“偏り”がプラスに作用することも 「AI」のバイアスとどう向き合うか
AIシステムのバイアスはリスクとなる一方、有益な結果をもたらすこともある。本稿では、AIシステムのバイアスの長所と短所を取り上げる。
偏ったデータによるバイアス(偏見、差別)を含む人工知能(AI)システムを使用することは、大きな墓穴を掘ることにつながる――。そう語るのは、データ管理ソフトウェアを提供するCollibraの共同創設者兼最高技術責任者(CTO)を務めるスタン・クリスティアンス氏だ。
「偏ったAIシステムは膨大な数のエラーを生み出す」とクリスティアンス氏は指摘。ほとんどのAIエンジンはブラックボックスになっているため「企業がダメージの大きさに気付いたときには、既に手遅れになっている恐れがある」と同氏は説明する。
前編の「Amazon、Facebookも批判の的に 『公平・公正なAI』はなぜ難しいのか」では、Amazon.comとFacebookの事例を基に、AIシステムのバイアスを取り巻く現状について説明した。後編ではバイアスへの対策と、偏ったデータを有効活用できる可能性について考える。
どうすればバイアスを軽減できるか
クリスティアンス氏は、AIシステムを活用する企業に注意を促すと同時に、バイアスを抑える対策を複数講じることを推奨している。これには、次のような対策が挙げられる。
- 倫理委員会と協議する
- 多様なバックグラウンドを持つ人々で構成されたデータサイエンスチームを雇う
- サードパーティーのデータ管理ベンダーと連携する
企業がバイアスを回避/排除するのに大きく役立つのは、常に警戒心を持ち、潜在的な問題を素早く解決するよう動くことだと、クリスティアンス氏は話す。
AIシステムのバイアスは、データと結果を不適切にゆがめる恐れがある。ただしAIシステムにあえて偏りを取り入れて、トレーニングに役立てようとする試みもある。
ときに役立つ偏ったデータ
「バイアスをトレーニングに取り入れることで、判断の精度が向上するAIシステムもある」。そう話すのは、理解可能で説明可能なAIシステムの開発に特化する新興企業、DiveplaneでCTOを務めるクリス・ハザード氏だ。
例えば自動走行車を考える。車を一般的な運転データでトレーニングすれば、普通の天候ではうまく運転できるだろう。ただし、このトレーニングデータには「強風や豪雨、豪雪など異常な天候下での運転事例は、少ししか含まれていない可能性が高い」とハザード氏は注意を促す。そのためこうした状況下では、車を正しく運転することができない可能性があると、同氏は指摘する。
重要になるのが、トレーニングデータに降雪など異常な天候の運転データを追加して、バイアスを取り入れることだとハザード氏は話す。
バイアスは、AIシステムの分析結果をゆがめる恐れがあるが、AIシステムのトレーニングに役に立つ可能性もある。いずれにせよ不可欠な要素が透明性だ。欧州委員会は、AIシステムの透明性、説明責任、説明可能性、公正さの重要性を強調する一連の倫理ガイドラインを公表した。そこでは、バイアスを取り除いたデータをAIシステムのトレーニングに使用する必要性も強調されている。
ガイドラインへの参加企業は、2019年夏の実証試験に参加する。欧州委員会は、ここで収集したデータを2020年にレビューし、次のステップを決定する計画だ。
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「人工知能のバイアス」を考える
近年ではAmazon.comやFacebookで、人工知能(AI)システムによる差別的な判断が問題となった。AIシステムのバイアス(差別、偏見)を取り巻く現状と、バイアスを防ぐ方法について考える。
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