コボット(協働ロボット)は小売業の戦力となるか拡張労働力を高める

職場でのAI技術の未来は、人間とロボットがうまく融合されるかどうかにかかっている。小売業における協働ロボット(コボット)の用途に注目してみよう。

2019年08月29日 05時00分 公開
[Kathleen WalchITmedia]
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 実店舗を構える小売店で「コボット」(Collaborative robots:協働ロボット)の使用が広がり始めている。コボットは、さまざまな環境において、人間の近くでの運用を念頭に設計された物理的なデバイスだ。コボットを運用する場所は、倉庫、店舗フロア、病院やホテルの廊下、オフィスビルなど多岐にわたる。これまでロボットは、問題を改善するための平凡な仕事の自動化を多く担ってきた。小売店はコボットが、ロボットの用途の多様化に役立つと感じている。

 顧客中心のビジネスモデルを採用し、実店舗を構えるビジネスでは、業務へのコボットの導入が広がっている。スーパーマーケットやホームセンター、レストランなどがその例だ。

顧客に関わるコボット

 コボットは人間に寄り添い安全に稼働できる。そのため、企業は顧客エンゲージメントの第一線にコボットを配置することにその用途を見いだしている。コボットは、さまざまな顧客対応の場面に顔を出す。例えば、レジでのサポート、店内の清掃、在庫管理といった場面だ。

 ホームセンターのLowe's Companiesが2016年にリリースした「LoweBot」は、コボットの代表例だ。店舗フロアを動き回って、さまざまな言語で顧客の簡単な質問に答えたり、棚の在庫管理をサポートしたりするのがその役割だ。この顧客エンゲージメントにおいて、LoweBotは決まり切った質問に回答する。そうすることで、従業員は、より複雑な質問、要求、仕事への対処が可能になる。

 スーパーマーケット大手のWalmartは2017年に米国内50店舗で棚をスキャンするコボットを導入した。これらのコボットは店舗フロアを自律的に動き回り、在庫を確認する。棚をスキャンして、価格が正しく在庫が適切であることを確認し、置き場所が間違っている商品を特定する。

 Walmartは2019年前半に約1500台の床洗浄管理コボットを追加導入した。このコボットは、自律的に店舗フロアの汚れをこすり落として、液体がこぼれていないかどうかを確認する。汚れがひどい場合にはスタッフに通知を送る。これらのコボットは任務を遂行する際、人間との接触を注意深く回避する。1日中掃除を続けること、それが任務だ。

 店舗で動き回るコボットを見掛けることは珍しくなくなった。Stop&Shop、GIANT Food Storesなどを所有するAhold Delhaizeは2019年、英国企業のRoboticalが販売する「Marty the Robot」を約500店舗に導入した。Marty the Robotは店内を動き回って、商品陳列棚の通路に汚れや落ちている食べ物がないかどうかを確認し、置き場所が間違っている商品を特定する。大掛かりな清掃が必要な場合はスタッフに通知を送る。

Domino'sやAmazonは屋外でコボットを使用

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