パンデミックで変わるPC市場
在宅勤務で「PC」が品薄に “特需”はいつまでも続くのか?
新型コロナウイルス感染症の拡大で在宅勤務などのテレワーク用PCの需要が増加した。ただし需要増が今後も続くかどうかについては、専門家によってさまざまな見方がある。PC市場の先行きは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が原因でPC市場に混乱が生じている。テレワークの急速な広がりでPC需要が高まっているにもかかわらず、出荷台数は減少している。
調査会社のGartnerとIDCの両社が、世界のPC出荷台数が2020年第1四半期(2020年1月~3月)に急減したと報告した。Gartnerによると出荷は前年同期比12.3%減、IDCによると同9.8%減となっている。この減少は、2020年の初めに中国のPC関連工場が新型コロナウイルス感染症の流行によって閉鎖し、サプライチェーンと製造に混乱が生じたことに主に起因する。
世界各地でテレワークへの転換を余儀なくされPCの需要が高まっているにもかかわらず、こうしてPCの出荷台数は急減した。IDCのリン・ファン氏は「新型コロナウイルス感染症が需要を高めると同時に、供給量を下げる要因にもなっている」と説明する。特に需要が高まっているのは、自宅で仕事をするためのノートPCだという。
PC需要は増え続けるのか
新型コロナウイルス感染症がPCの供給過剰状態を緩和する効果があったとの声もある。フアン氏は「PC販売事業者の多くが供給過剰気味の状態で2020年に入ったため、需要の増加は過剰な在庫を減らすことにつながった」と話す。同氏によれば「テレワークへの移行で在庫を大幅に上回る需要が生じた。モニターやノートPC、ヘッドセット、プリンタなどが主要な販売店で入荷待ちの状態だ」という。
Gartnerは、企業がテレワークの体制に移行してすぐに生じる需要の「第一波」を予測していた。同社は「ロックダウン(都市閉鎖)の状況は、多くの企業にとっては新しい状況へと向かう“モーニングコール”のようなものだった」と指摘。「緊急時の体制を見直し、新たな事業継続計画の一環でPCを新たに調達する企業が出てくる」と説明する。
調査会社Forrester Researchのジョー・シクマン氏は、PCの需要増が継続することを疑問視する。「テレワークへと移行する際、予定外のPCの購入が少し増えたという話はクライアントから聞いている。しかしそうした需要が継続することはない」とシクマン氏は語る。ただし同氏は「自宅で仕事をすることが当たり前になってきているため、仕事をする場所を変えやすいノートPCへデスクトップPCから乗り換える動きが加速する可能性がある」とも言い添える。
供給過剰への警鐘
新型コロナウイルス感染症の拡大当初、PCは需要が高く供給量は少ない状況だったが、状況はすぐに逆転する可能性がある。工場が再稼働することでPCのサプライチェーンは回復しつつあるが、景気後退が企業の購買意欲を低下させる可能性があるからだ。「供給が完全に回復しても、世界的な景気後退で購買者は決断を渋る」とフアン氏は述べる。
Gartnerはこうした状況の変化に対して「PC販売事業者は供給過剰になることのないよう、需要を誤って試算してはならない」と警鐘を鳴らす。需要が急増したことは確かだが、PC販売事業者は慎重に計画を立てる必要がある。「新型コロナウイルス感染症による現在の状況は非常に珍しく、予測が難しい。適切な供給量を見極めることがPC販売事業者にとっての課題になる」と同社は指摘する。
需要を予測しながら発注するPC販売事業者は、需要が予測よりも多かった場合に備えて在庫に余裕を持たせることが一般的だ。その結果、サプライチェーンの上流に上るにつれて需要変動が増幅する「ブルウィップ効果」に注意が必要だとシクマン氏は指摘する。
「新型コロナウイルス感染症によるパンデミック(世界的な大流行)の教訓は、企業は状況の変化に俊敏に対処できる流通戦略を持たなければならないということだ」とシクマン氏は話す。
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