Amazonの車載カメラの是非を問う【中編】
Amazon配送車の車載カメラが引き起こす4つのプライバシー議論
Amazon.comは配送車両にカメラを搭載する。「ドライバーと地域の安全の確保」が目的だというのが、同社の主張だ。こうした同社の行動をきっかけに、プライバシーに関する議論が活発化しつつある。
Amazon.comは、車両管理ソフトウェアベンダーNetraDyneのAI(人工知能)技術を組み込んだカメラを配送車両に搭載して、車内外の様子を録画している。その目的は「ドライバーと地域の安全を守る」ことだというのがAmazon.comの主張だ。同社のドライバー監視は特に目新しいことではなく、他の運輸会社もカメラやGPS(全地球測位システム)、テレメトリー(遠隔情報収集)を使ってドライバーを監視している。企業は職場で従業員を監視してきた長い歴史があり、裁判所も企業がそうした技術を使って監視する権利を支持している。
アナリストや研究者、専門家は、Amazon.comの動向に伴い「新しい問題や長年の問題を含め複数の議論が浮上した」と指摘する。議論は次の4つに集約できる。
議論1.監視の仕方
1つ目は、職場で監視が必要な場所や理由、監視の程度に関する論議だ。技術が発展し、Amazon.comは細部に至るまで従業員を追跡できるようになった。コンサルティング会社Incumetricsのプレジデントであるロビン・ガスター氏は「ドライバーの監視問題は複雑だ」と言う。ガスター氏によると、生産性に関する目標を設定して従業員が懸命に働くことを期待するのと、アルゴリズムによって効果的に実行できる監視システムを持つこととの間には質的な違いがある。
議論2.監視データ活用の目的
2つ目は、企業が入手したデータをどう使うのかだ。企業はデータを使って従業員の働き方を1分単位で監視できるのか。それは従業員のプライバシー侵害にはならないのか――。専門家はそうした問いを投げ掛ける。
議論3.企業が監視可能な範囲
3つ目は、企業が監視できる範囲だ。従業員が業務で使う私物デバイスに、監視ツールの搭載を義務付けている企業もある。こうした企業は、在宅勤務などのテレワークが普及した現状では、従業員だけでなくその家族の行動まで監視できるようになる。従業員の家族の行動が把握できればセキュリティ強化の助けになる。だが「従業員やその家族のプライバシー権をしのぐメリットはあるのか」「個人の権利と会社の利益を隔てる一線はどこにあるのか」が議論の対象になり得ると専門家は指摘する。
従業員の個人的な行動が企業にも関係ある場合はどうなのか。監視範囲の問題は「プライバシーとセキュリティ、安全性など、さまざまな要素が絡む課題でできた『地雷原』とも言える」と、コンサルティング企業EVOTEKの最高情報セキュリティ責任者(CISO)であるマット・スタンパー氏は語る。スタンパー氏はITガバナンスの専門団体ISACA(Information Systems Audit and Control Association)のサンディエゴ支部長でもある。
議論4.Amazon.comの監視対象
4つ目は、従業員と車両以外のAmazon.comの監視対象だ。「Amazon.comは少なくとも中国を除けば、最大規模の物理的監視を実施する企業になる」と、セキュリティ分野の調査会社Analyst Syndicateでアナリストを務めるフレンチ・カルドウェル氏は説明する。「『Google Maps』(Googleマップ)の記録用カメラなど取るに足らない。プライバシーへの影響は計り知れない」(カルドウェル氏)
配送車両の監視は「安全のため」だとAmazon.comは主張している。この主張の一方で、同社はドライバーに監視についての同意書への署名を求めており、安全確保以外の目的を否定できない。車両には内部カメラに加えて、車両の前と横にも外向きのカメラがある。カルドウェル氏によると、そうしたカメラは歩行者や住宅、他の車両を撮影し、カーナンバーなどの情報を収集する。顔認識ソフトウェアや同社のスマートフォン向けアプリケーションを通じて収集する位置情報、同社が収集する個人情報を利用すれば、同社は「ほぼリアルタイムで顧客とその行動を監視できるだろう」と同氏は語る。
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