IBMが開発した「2ナノ」半導体チップとは サーバの処理性能を高速化ヒートアップするチップ開発競争【前編】

IBMは半導体の研究開発の成果として、2ナノプロセスの半導体チップを公開した。この実用化は、同社のサーバやメインフレームにどのような影響を与えるのか。

2021年06月22日 05時00分 公開
[Ed ScannellTechTarget]

 IBMは半導体の開発競争において、設計とプロセスにおける飛躍的な進歩を実現した。2ナノのナノシート技術を採用した半導体チップを2021年5月に発表したのだ。この2ナノの作成プロセスを採用する半導体チップは、現行の主流技術である7ナノプロセスの半導体チップと比べて、処理の大幅な高速化や省電力化を実現するという。

サーバやメインフレームの高速化が目的なのか

 この2ナノプロセスの半導体チップが実用化するのは、2024年以降になる見通しだ。IBMのハイブリッドクラウドリサーチ担当バイスプレジデントを務めるムケシュ・カレ氏は、実用化がまだ先になることについて特に心配はしていない。「画期的な技術のおかげで、われわれはこれから実用化までの長く確実なロードマップを作成できる。われわれはパフォーマンスや密度の要件を満たすために、何が必要なのかが分かっている」(同氏)

 IBMはこのナノシート技術を採用する2ナノプロセスの半導体チップが、指の爪ほどの大きさのチップに最大500億個のトランジスタを搭載できるようになると見込んでいる。「底部の絶縁層分離により、ナノシートトランジスタの積層を可能にすることで、低消費電力と高いパフォーマンスが実現する」と、カレ氏は説明する。IBMは2ナノプロセスの半導体チップを、同社製サーバ「IBM Power Systems」と同メインフレーム「IBM Z」に搭載する計画だ。

 半導体メーカーの間では、半導体チップの処理性能の高速化と省電力化を目指す競争が加速している。Intelは2021年3月に、最大200億ドルを投じてアリゾナ州に2カ所の半導体製造施設を建設し、次世代半導体チップを生産すると発表した。さらに同社は同年5月にも、35億ドルの追加投資によりニューメキシコ州の製造施設を拡張する計画を明らかにした。同社はこの追加投資を、高度なパッケージング技術に重点的に振り向ける。

 2021年4月末、Intelの新任CEOのパット・ゲルシンガー氏は、欧州各国政府への働き掛けによって97億ドルの公的助成金の獲得に成功した。同社はこの助成金を半導体製造施設の建設に充て、ファウンドリ(半導体受託製造)事業におけるアジアの半導体メーカーに対する競争力強化につなげると見込まれる。

 Intelのライバルになるのは台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)だ。TSMCは世界最大のファウンドリ企業と言っていい。Appleの「iPhone」や「Mac」向けの、3ナノプロセスの半導体チップ製造の準備を進めている。3ナノプロセスの半導体チップの量産開始は2022年後半になる見通しだ。IntelのプロセッサベンダーとしてのライバルになるNVIDIAとAMD(Advanced Micro Devices)も、3ナノプロセスの半導体チップをTSMCから調達しようとしている。

 TSMCは2ナノプロセスの半導体チップ製造工場の建設にも動いているが、量産開始の具体的な時期は明らかにしていない。

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