Intel「3D XPoint」に反転攻勢のMicron 相互接続プロトコル「CXL」が鍵に「3D XPoint」を巡るIntelとMicronの争い【後編】

Micron Technologyに先んじて、Intelが新メモリ技術「3D XPoint」ベースのメモリモジュールを市場投入した。今後の注目はMicron Technologyの出方だ。どのような公算があるのか。

2021年02月16日 05時00分 公開
[Carol SliwaTechTarget]

関連キーワード

SSD | DRAM | 半導体ストレージ


 前編「『Intelじゃない3D XPoint』がメモリ市場を席巻か? 『Optane』に挑むMicron」に続き、新メモリ技術「3D XPoint」を巡る、IntelとMicron Technologyの動きを追う。

Micron Technologyの本格的挑戦

 CPUとメモリ間の接続を高速化する要素として、相互接続プロトコル「Computer Express Link」(CXL)のような新しい技術が登場している。CXLはもともとIntelが開発した相互接続プロトコルだ。同社は自身が中心になり立ち上げた業界団体「CXL Consortium」に権限を委譲することでCXLをオープン化し、複数の企業が開発に携わるようになった。

 「CXLによって相互接続の技術が開発しやすくなり、3D XPoint製品の採用は2023年ごろに急激に伸びる可能性がある」と、コンサルティング会社MKW Ventures Consultingのプレジデント、マーク・ウェッブ氏は話す。

 「新しい相互接続プロトコルが登場することで、『DDR-T』のようなIntel独自のプロトコルを使用する必要はなくなる」(ウェッブ氏)。今後数年のうちに、3D XPointを使ったIntelのメモリモジュール「Intel Optane Persistent Memory」でも、CXLを使用できるようになる可能性がある。ただしIntelはCXLの使用について具体的な計画は明かしていない。

 Facebookの技術者で、CXL Consortiumの役員も務めるクリス・ピーターセン氏は、「CXLはCPUとメモリの相互接続の帯域幅(単位時間当たりデータ転送量)の拡大や低遅延化、メモリプール(プログラムごとのメモリ確保)に効果的だ」と話す。こうした利点は、AI(人工知能)やハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)などの高負荷のアプリケーションの処理に役立つ。

 CXLは高速インタフェース規格「PCI Express」(PCIe)の物理層で動作する。このため業界で広く採用されているPCIeとCXLを共通で使うスロットを備えたサーバ設計が可能になる。ピーターセン氏は「CXLは幅広いアプリケーションの利用と、迅速なサーバ構成を実現する。ユーザー側の選択肢としてもシンプルだ」と期待感を示す。

 「業界標準のインタフェースで3D XPointのメモリモジュールを利用できるようになれば、Intelプロセッサに限らず、AMD(Advanced Micro Devices)やNVIDIA、Armなどのプロセッサを使いたいエンドユーザーも利用できる」と、調査会社Objective Analysisのゼネラルディレクター兼半導体アナリストのジム・ハンディ氏は語る。

 Micron Technologyの新製品グループで製品管理担当シニアディレクターを務めるサイード・ラジャ氏は「CXLを使った新しいインタフェースが軌道に乗れば、当社はメモリ市場で高い競争力を得る」と語る。

 ラジャ氏によると、3D XPointを使ったメモリモジュール(DIMM:Dual Inline Memory Module)は、これまでIntelのx86サーバのみが採用してきた。今後は状況が大きく変わる可能性がある。AMDによるXilinx買収と、NVIDIAによるArm買収の計画が明らかになり、サーバ向けプロセッサの2大勢力が誕生する見込みになった。「3D XPoint製品は、これらのIntelを加えた3大勢力全てのプロセッサで使用できるようになる。これは業界にとって非常に大きなことであり、この技術にとって重要なことだ」(ラジャ氏)

 3D XPointベースのDIMMはこれまでにIntelのみが提供していて、Micron Technologyはまだ出荷していない。ただしラジャ氏によるとMicron Technologyにも計画はあるという。

 Micron Technologyがこれまでに提供している3D XPointベースの製品は、フラッシュストレージ「X100 NVMe SSD」のみだ。Micron TechnologyはX100 NVMe SSDを「世界最速SSD」と銘打って売り出した。だがウェッブ氏はむしろ「将来の3D XPointベースの製品を開発するための“観測気球”のようなものだ」と話す。

 「当社は3D XPointの“初期段階”にあり、Intelに供給しているウェハー(基板)以外にはまだ意味のある評価を受けていない」。Micron Technologyの最高財務責任者(CFO)、デービッド・ジンスナー氏はこう話す。ジンスナー氏は、最初の製品としてX100 NVMe SSDを出した目的は「一定の性能を備えた製品を世に送り出すことだった」と前置きした上で、次世代の製品では「さらに高い性能と優れたコスト構造を目指す」と述べる。

 ラジャ氏によると、Micron TechnologyはDIMMにおいてはデータベースやリアルタイム分析など顧客のニーズに適合させる作業を進めているという。製品のリリースは、新しいx86系サーバとArm系サーバの発売に合わせる計画だ。

 「Intelが業界に果たした役割は大きく、3D XPointの価値と用途を示してくれた」とラジャ氏は語る。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news079.jpg

狙うは「銀髪経済」 中国でアクティブシニア事業を展開する企業とマイクロアドが合弁会社を設立
マイクロアドは中国の上海東犁と合弁会社を設立。中国ビジネスの拡大を狙う日本企業のプ...

news068.jpg

社会人1年目と2年目の意識調査2024 「出世したいと思わない」社会人1年生は44%、2年生は53%
ソニー生命保険が毎年実施している「社会人1年目と2年目の意識調査」の2024年版の結果です。

news202.jpg

KARTEに欲しい機能をAIの支援の下で開発 プレイドが「KARTE Craft」の一般提供を開始
サーバレスでKARTEに欲しい機能を、AIの支援の下で開発できる。