「Intelじゃない3D XPoint」がメモリ市場を席巻か? 「Optane」に挑むMicron「3D XPoint」を巡るIntelとMicronの争い【前編】

「3D XPoint」をIntelと共同開発したMicron Technologyが、その製品化を活発化させ始めた。この動きは、Intel「Optane」が先行する新興メモリ市場に変化をもたらすのか。

2021年02月03日 05時00分 公開
[Carol SliwaTechTarget]

関連キーワード

SSD | DRAM | 半導体ストレージ


 新メモリ技術「3D XPoint」を用いたIntelの「Intel Optane」シリーズが、新興のメモリやストレージ市場で優位な立ち位置を占めている。ただしMicron Technologyによる3D XPointをベースにしたフラッシュストレージなど競合する製品が台頭することで、この情勢は変わる可能性がある。

Intel製以外の3D XPoint製品が台頭か

会員登録(無料)が必要です

 「2022年には、Micron Technologyが3D XPoint製品で相当な収益を上げ始める」と、コンサルティング会社MKW Ventures Consultingのプレジデント、マーク・ウェッブ氏は予測する。ウェッブ氏は、Samsung ElectronicsやSK Hynixなどのメモリベンダーも、同様に新興メモリ市場に注力する可能性があるとみる。

 「Samsung Electronicsが、この市場に参入しないとは考えられない」。ウェッブ氏は、2020年11月開催のバーチャルイベント「Flash Memory Summit 2020」でこう述べた。さらにSK HynixやWestern Digitalは「相変化メモリ」というメモリ技術の開発を進めていると語った。相変化メモリは、加熱や冷却により電気抵抗が変化する物質を利用してデータを書き込む。業界では、3D XPointも相変化メモリの一種として捉えられている。

 3D XPointは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)とNAND型フラッシュメモリの中間的な特性を持ち、不揮発性とデータ読み書きの高速性を兼ね備える。もともと3D XPointは、Micron TechnologyとIntelが共同開発した。両社は合弁会社IM Flash Technologiesで3D XPointのウェハー(基板)を製造していたが、Micron TechnologyがIntelの保有株式を全て買い取り、両社の合弁事業は終了した。その後Micron Technologyは、Intelに3D XPointのウェハーを供給している。

新興メモリ市場の拡大

 Intelは、Optaneシリーズとして2017年にフラッシュストレージ、2019年にメモリモジュール(DIMM:Dual In-line Memory Module)を発売し、新興メモリ市場で独走状態にある。ウェッブ氏は「IntelはまだOptaneで利益を出していないが、今後の売り上げは着実に成長するだろう」と話す。ただしIntelだけではなく、Micron Technologyも3D XPointを採用したフラッシュストレージを発表しており(写真)、Intel独走の状況が続くとは限らない。

画像 Micron Technologyの3D XPointを採用したフラッシュストレージ「X100 NVMe SSD」《クリックで拡大》

 MKW Venturesの推計では、2020年の3D XPoint製品の総売上高は、約11億ドルになる見込みだ。内訳はDIMMが6億ドル、SSDなどDIMM以外が5億ドル。2024年には、3D XPoint製品の総売上高はIntelとMicron Technologyの合計で約36億ドルまで伸び、その約78%をDIMMが占めると同社は予測する。「3D XPoint製品の売上高は当初の予測よりも伸びていないが、他の新興メモリの出荷を確実に上回っている」(ウェッブ氏)

 業界アナリストは3D XPoint製品の中で、フラッシュストレージよりもDIMMを重要だと見なしている。DRAMを安価かつ大容量で代替するDIMMは、フラッシュストレージよりもCPUに近接するため、アプリケーションの動作を高速化する効果が高くなる。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「Intel敗北」の決定的な原因はやはりあれ?

コンピューティング市場で支配的な地位にあったはずのIntelは、なぜ衰退してしまったのか。歴史を振り返りながら、同社の失敗を分析する。Intelに生き残る道はあるのか。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?

SSDの大容量化や価格競争力の向上により、「SSDオンリー」という選択肢が現実味を帯びつつある。しかし、HDDが完全に不要になるとは断言できない。その理由は何か。

製品資料 JBCC株式会社

ファイルサーバのクラウド移行は今が好機か、最適な移行先を選ぶヒント

昨今は企業で扱うデータが増加傾向にある上、働き方の変化などにも対応する必要性から、オンプレミスのファイルサーバをクラウドに移行する企業が増えている。そこで、移行先を選ぶポイントやセキュリティ対策について、動画で解説する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

ECシステムのデータ急増やI/O性能低下などの問題を解消したストレージとは?

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...