「脱クラウド」を成功させるヒント “隠れコスト”に要注意「脱クラウド」戦略の基本【中編】

「脱クラウド」戦略を検討する際は、社内のさまざまな関係者を巻き込み、さまざまな注意点に目を向ける必要がある。具体的にどのようなポイントを押さえておくべきなのか。

2021年02月04日 05時00分 公開
[George LawtonTechTarget]

関連キーワード

Amazon Web Services | IaaS | オンプレミス


 クラウドサービスからオンプレミスのインフラにシステムを移行させる「脱クラウド」「オンプレミス回帰」。IT部門がそのための「出口戦略」を立案するに当たっては、さまざまな関係者を巻き込む必要がある。契約、技術、法務、データガバナンスといった業務の担当者などだ。こうした業務の担当者は、考慮すべき重要な事項をさまざまな観点から提示してくれる。例えば

  • リソースのスケールアップやスケールダウンにかかる“見えない”コストがあるかどうか
  • クラウドサービスで障害が発生した場合に誰が責任を負うべきか
  • データを物理的にどこに保存すべきで、その保存場所は規制やコンプライアンスの問題にどう影響するか

といった問題に関する示唆に富んだ意見や指針を示してくれるだろう。

脱クラウド戦略で見落としてはいけないポイント

 脱クラウドに向けた出口戦略は、自社のクラウドサービスの利用方針に関して包括的な内容にすべきだ。「クラウドベンダーとの関係を終わらせるときに何が起こり得るかを予期しておくことも欠かせない」。テクノロジー系の案件を扱う法律事務所Culhane Meadowsの共同設立者、ジェームス・メドウズ氏はそう話す。

会員登録(無料)が必要です

 クラウドサービスが連携するサードパーティー製サービスの提供終了、データ侵害、別のクラウドサービスへの移行など、起こり得るシナリオをできる限り多く検討する。「これはチェックリストで確認するような作業ではない」とメドウズ氏は語る。

 人的要因も考慮する必要があると、コンサルティング会社UpperEdgeでコマーシャルアドバイザリープラクティスリーダーを務めるジェフ・ラザート氏は指摘する。「出口戦略を検討する際は、利用するクラウドサービスを代替する選択肢に関して、従業員に対する教育や組織の受け入れ準備も必要だ」(ラザート氏)

 新しい製品やサービスを調達する際は、提案やデモの要請をするなど、さまざまなベンダーと関係を構築することになる。これには人的なコストが伴う。従業員が新しい製品/サービスの操作や運用方法を学ぶためのトレーニングにもコストが付いて回る。

隠れコストに注意

 調査会社Gartnerでバイスプレジデントを務めるイライアス・クナサー氏によれば、出口戦略の一環として考慮すべき見えないコストがある。これを把握するには、次の点を確認しておく必要がある。

  • オンプレミスのインフラにアプリケーションを移行させる場合に必要になるハードウェア
  • 自社データセンターの有無
  • コロケーション設備を利用する必要性
  • 移行対象のアプリケーションで必要になる開発作業
  • エンドユーザーに対するトレーニングの必要性と、それに要する時間
  • オンプレミスのインフラへの移行による生産性低下の可能性と、それによって生じるコストの種類

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 発注ナビ株式会社

商談を効率的に獲得、企業とベンダーの課題を解決するマッチングサービスの実力

クラウド利用が拡大しSaaSサービスの導入が進む中で、製品の多様化がベンダー側と企業側にさまざまな課題を生み出している。双方の課題を解決する方法として注目したいのが、商談を効率的に獲得できるマッチングサービスだ。

事例 ファインディ株式会社

アジャイル開発で直面する課題を解消、3社に学ぶ“開発生産性の可視化”実践術

アジャイル開発に取り組む企業は増加しているが、思うような成果を挙げられていないと悩む担当者も少なくない。そこで、セゾンテクノロジーをはじめとした3社の取り組みを基に、実践の方法と成功のポイントを解説する。

製品レビュー AZPower株式会社

クラウドの専門家が提唱する、クラウド移行で真のビジネス価値を引き出す方法

「2025年の崖」「2026年問題」がいよいよ間近に迫り、多くの組織が既存のITインフラのクラウド移行に活路を見いだそうとしている。しかし、クラウドの専門家は、移行そのものが目的となってしまっている現状に対して警鐘を鳴らしている。

製品レビュー AZPower株式会社

SaaSのデータサイロを解消し、データのビジネス価値を最大化するには

初期負担を抑えながら、迅速な展開が可能なSaaSの利用は増加傾向にあるが、それに伴いクラウド環境でのデータの分散、サイロ化も進んでいる。この状況から脱却しなければ、データがもたらす価値を最大化することはできない。

製品資料 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社

見直しを求められるオンプレ仮想化基盤、改めて注目を浴びるソリューションとは

多くの組織で仮想化環境のハイブリッドクラウド化が進んでいるものの、オンプレミスとクラウドの二重管理が負担になりがちだ。市場変化やコストの変動に伴いオンプレミスの仮想化基盤を見直しする機会に改めて検討したい選択肢を紹介する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...

news163.jpg

「政府」「メディア」への信頼度は日本が最低 どうしてこうなった?
「信頼」に関する年次消費者意識調査の結果から、日本においても社会的な不満・憤りが大...