AIが税金を納める日【後編】
「AIには納税義務もあれば著作権もある」と主張する人たちの根拠
人の代替となる“AI従業員”には、人と同様に納税義務を課すべきだという考え方がある。のみならず特許や著作権など、人と同様の恩恵を受けられるようにすべきだと主張する専門家もいる。それぞれの言い分は。
AI(人工知能)技術が広く普及し、人の従業員の多くに取って代われば、政府は多大な所得税収入を失う可能性がある――。この議論が成り立つのは、AIシステムに取って代わられた従業員が他の仕事を見つけられない場合に限られる。だがサリー大学(University of Surrey)で法学と健康科学の教授を務めるライアン・アボット氏は、そうなる可能性もあると予想している。AIエンジンは、人々が新しいスキルを学んだり職業訓練の機会を見つけたりするよりも速いペースで賢くなるからだ。
AIが納税義務を負い、著作権を持てる日
併せて読みたいお勧め記事
「汎用人工知能」(AGI)とは何か
AI技術の利用可能性
「自動化は、われわれの税収を脅かす」とアボット氏は語る。“AI従業員”が人の従業員に大きく取って代われば、政府は、所得税や給与税への依存を減らすか解消して、他の税収の割合を高めなくてはならなくなる。AI従業員の稼働状況に基づいて企業に課税する方法を見いだすことが必要になる可能性もある。
何らかの形でAIシステムは課税の対象になると考えられる。一方で特許や著作権保護の恩恵を受ける可能性もある。
AIシステムがますますインテリジェント化し、オリジナルの、あるいは少なくとも幾らかのオリジナリティーを持ったコンテンツを作れるようになれば「いずれは著作権や特許が、AIシステムやその開発者に与えられる可能性がある」とアボット氏は語る。
ただし、それはまだ遠い先だ。米国特許商標庁は2020年に「AIシステムを発明者として特許を出願することはできない」との判断を示した。
AIシステムが著作権を持てるかどうかは、論争の的となっている。2018年に米国第9巡回区控訴裁判所の3人の判事団は「自撮り写真を撮ったサルは、自分の写真の著作権を持っていない」との判決を下した。この判決は、AIシステムも著作権を持てないことを示唆している。
それでも「AIシステムの開発者は、特許や著作権を持つことができなければならない」というのがアボット氏の考えだ。AIシステムが生成した作品の保護を可能にすることが「正しい解決策だ」と同氏は主張する。
オハイオ州立大学(Ohio State University)モリッツ法科大学院(Moritz College of Law)で法学助教を務めるブライアン・チョイ氏は「政府は、AIシステムが害を及ぼした場合に、開発者の責任を問う制度を整備することを考えなければならない」と指摘する。AIシステムは総じてブラックボックスであり、判断基準が開発者にも見えない、あるいは分からない場合がある。そのためAIシステムが特定の決定を下した理由を理解するのは極めて難しい。不可能な場合もある。
そうしたAIシステムを、例えば自動運転車に搭載することは危険を伴う。車両が道路から外れることをAIシステムが“選択した”場合でも、自動運転車のオーナーはその理由が分からず、それが発生することを防ぐ方法も分からないからだ。
「AIシステムが正常に機能しない場合、それはAIシステムやエンドユーザーのせいではない」とチョイ氏は語る。現在のところAIシステムの開発者は厳しい規制を受けておらず、AIシステムの調査は難しい。AIシステムが害を及ぼした場合に、政府はエンドユーザーが開発者の過誤を訴えることができるようにすべきだとチョイ氏は主張する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント -
製品資料
揺らぐ境界防御 いま企業が特に警戒すべき「3つのセキュリティ課題」とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
3
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
4
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
5
画面をティッシュで拭くのはNG Dellが推奨するPCの正しいお手入れ方法
-
6
VDI運用の“生きたノウハウ”を共有 歴史あるユーザー会の魅力とは?
-
7
メインフレームは死なず AI活用で20年来の高収益をたたき出す基幹システムの底力
-
8
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
9
「GitHub Copilot」3000人に配布も基本機能しか使われない 保険大手が得た教訓
-
10
GitHub Copilotを使いこなす第一歩 初めてのプロンプト6つのコツ
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー