2021年11月04日 05時00分 公開
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「電子処方箋」が抱えていた「SMS送信」管理問題とは? どう解決したのかオーストラリアで一般化した処方箋の完全電子化【後編】

電子処方箋のSMS送信は患者や医師、薬剤師の利便性を高める一方、複数の処方箋を利用する患者にとって管理が煩雑になる課題があった。この問題を解決するために、ベンダーはどう取り組んだのか。

[Stephen Withers,TechTarget]

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 前編「『電子処方箋』が直面、“完全電子化”を阻害した要因とは?」と中編「『電子処方箋』交換サービスがTwilioのAPIを採用した理由 『SMS品質』が鍵に」を通して、オーストラリアの電子処方箋制度と電子処方箋交換サービスに関する事例を紹介してきた。オーストラリアではeRx Script Exchangeが提供する同名の電子処方箋交換サービス(以下、eRx)が広く普及している。

 eRxは「薬を処方する医師がQRコードの電子トークンを発行し、ショートメッセージサービス(SMS)やメール経由で患者に送る」というルールに基づいて開発された。ただしQRコードトークンとSMSの運用には課題もあった。

SMS送信だと管理が煩雑 課題を解決するためのシステムとは

 eRxは、処方箋情報を検索するためのQRコードトークンをSMSで患者に送信する仕組みを備える。これは医師や調剤薬局、患者にとって利便性があり、調剤時の安全性を高める手法だったが、問題も抱えていた。何種類もの薬物治療を受けている患者にとっては処方箋のQRコードトークンの管理が煩雑になる点だ。処方箋の反復利用がある場合、影響はより大きくなる。

 この問題を解決するために、オーストラリア政府が主導して「Active Script List」を作った。これはクラウドサービス形式のトークン保管システムで、ある患者が持つ有効な処方箋のリストを、患者単位で確認できるようにする。このリストは患者の同意があれば、医療機関や調剤薬局のスタッフもアクセスできる。eRx Script Exchangeの親会社に当たる医療ITベンダーFred IT GroupのCEO、ポール・ネイスミス氏は「この仕組みがあれば二度と処方箋を紛失することがなくなる」と語る。

 Active Script Listを実装した初の商用サービスが「My Script List」(MySL)だ。MySLの開発と運営は、オーストラリアの電子処方箋交換サービスベンダー2社(eRx Script ExchangeとMediSecure)の合弁会社であるMedicationKnowledgeが担当している。

 患者がActive Script Listを利用する場合は同意を明確に示さなければならず、同意を示すためには調剤薬局で情報を登録する必要がある。その調剤薬局を初めて利用する患者であれば、自身の身元を証明しなければならない。MySLは同意プロセスの処理にクラウドコミュニケーションサービス「Twilio」を用いている。

 登録が済むと、患者は誰が処方箋データにアクセスできるかを決める。かかりつけの調剤薬局に継続的なアクセスを認めるのが一般的だ。旅行先の調剤薬局に対して、24時間に限った一時的なアクセスを認めることもできる。その場合も患者は身分証明書を提示しなければならないが、旅行中に処方箋を忘れず持ち歩くことよりは楽だ。

 MySLは、薬の飲み忘れを防ぐスマートフォン用アプリケーション「MedAdvisor」や、オーストラリア国内患者向けの処方薬宅配サービス「Medmate」などと連携することもできる。「電子処方箋のトークンを管理できるアプリケーションであればMySLと連携できる」とネイスミス氏は説明する。

 eRx ScriptExchangeが2021年10月に発表したプレスリリースによると、2021年6月から9月までの4カ月間は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるオーストラリア国内のロックダウン(都市封鎖)の影響を受けて電子処方箋の利用率は増加した。しかしネイスミス氏は「まだ先は長い」と考えている。

 今後MySLは、Twilioのチャットbot技術を介してメッセージングサービス「WhatsApp」と連携し、「どの処方箋を」「どの薬局で」「いつ調剤してもらいたい」か、処方薬を「薬局で受け取る」のか「送付してもらう」のかを患者がチャット欄から選択できるようになる。このチャットbotは、1つのWhatsAppアカウントで家族など複数の患者の処方箋も扱えるようになる。

 ネイスミス氏によるとTwilioの技術は自動音声応答(IVR)システムの構築にも利用できるという。患者と薬剤師とのライブチャット機能の提供も視野に入れ「ユーザーに最高のカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供するために歩み続ける」と同氏は付け加える。

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