オーストラリアの医療グループCALHNは、医療スタートアップと協力してクリニカルパスをデジタル化したシステムを導入した。このシステムで何ができるのか。導入後の運用手順は。
オーストラリアの地域医療グループCentral Adelaide Local Health Network(CALHN)は、グループ傘下の医療機関であるRoyal Adelaide Hospital、Queen Elizabeth Hospital、SA Dental Servicesにおける20個以上の診療科で、手作業のプロセスをデジタル化し始めている。患者サービスを向上させ、医療スタッフの負担を軽減するためだ。
南オーストラリア州の医療系スタートアップ(創業間もない企業)Personify Careと共同で進めているこの取り組みは、医療機関のプロトコール(あらかじめ定めた検査手順や手技、治療計画)を「デジタル患者パス」(digital patient pathways)に変換する。このデジタル患者パスの管理システムを臨床導入するまでの期間は4週間以内だったという。
デジタル患者パスとは、デジタル化したクリニカルパスのようなものだ。クリニカルパスは標準化した治療手順をまとめた計画書のことで、入院中の治療計画、次回の受診予約に向けた準備と手順、退院後の回復期ケア手順など、治療前後に受ける必要のある一連のステップを具体的に列挙してある。Personify Careのデジタル患者パス管理システムは、従来は書類や電話を使ってやりとりしていたクリニカルパスをデジタル化した。
Personify Careのデジタル患者パス管理システムに含まれるクリニカルパスは、例えば下記のようなものだ。
医療機関が医療情報システムを導入・運用する際には、ITベンダーの支援を受けることが一般的だ。Personify Careのデジタル患者パス管理システムは、ドラッグ&ドロップで操作できる「パスビルダー」を搭載し、医療機関自ら運用できるようにしている。医療機関はパスビルダーを使って、既存のプロトコールやワークフローをデジタル患者パスとして設定できる。
これにより、治療のガイドラインやワークフローが変わっても、医療機関がこのシステムで直接更新して、デジタル患者パスを最新状態に維持できる。クリニカルパスの変更のためにITベンダーや医療情報部門に頼む必要がなくなった、ということだ。
CALHN傘下の医療機関がデジタル患者パスシステムを導入する際には、Personify Careの顧客エクスペリエンスチームがトレーニングの支援をする。同社の顧客エクスペリエンスチームには看護師などの医療系資格を持つスタッフが在籍しており、オーストラリアだけでなく世界中の医療機関を支援して2〜4週間程度で臨床導入させた実績を持つ。
Personify Careの説明によると、デジタル患者パス管理システムは全てのデータを現地のプライバシーおよびセキュリティの諸要件に従って管理し、オーストラリアを拠点とするデータセンターに保存。暗号化や多要素認証など幅広いベストプラクティスのセキュリティ対策を採用しているという。
後編は導入後の変化について、特に検査効率の改善効果について解説する。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
「缶入りのただの水」を評価額14億ドルのビジネスに育てたLiquid Deathのヤバいマーケティング戦略
「渇きを殺せ(Murder Your Thirst)」という刺激的なメッセージにエッジの利いた商品デ...
「日本の食料自給率38%」への不安感は8割越え
クロス・マーケティングは、大気中の二酸化炭素濃度や紫外線量の増加による地球温暖化の...
「マツキヨココカラ公式アプリ」が「Temu」超えの初登場1位 2024年のEコマースアプリトレンド
AdjustとSensor Towerが共同で発表した「モバイルアプリトレンドレポート 2024 :日本版...