コロナ禍でAIのパフォーマンスが低下した業種、低下した理由多数のAIを導入している企業で発生

業績が高い企業ほどコロナ禍でもAIに投資しているが、コロナ禍でAIのパフォーマンスが低下してしまったという。低下した業種と理由には納得するしかなかった。

2021年12月25日 08時00分 公開
[Cliff SaranComputer Weekly]

 McKinseyが「業績が高い」と見なす企業の大半はコロナ禍の中でもAI投資を増やしているが、それ以外の企業でAI投資を増やしていたのは30%未満だった。McKinseyによると、投資を増やしていると回答した率が最も高いのは、自動車と組み立て、ヘルスケアサービス、調剤と医薬品を扱う企業だった。

 企業はAIモデルの構築と再トレーニング、データ収集を適合させて優れたアジリティーを実現する必要がある。「現在よりもはるかに俊敏にデータを集め、短間隔でモデルを再トレーニングしなければならない」と話すのは、McKinseyの分析事業の一部を担うAIコンサルタント企業QuantumBlackのジャコモ・コルボ氏(共同設立者、チーフサイエンティスト)だ。

コロナ禍でAIのパフォーマンスが低下

会員登録(無料)が必要です
iStock.com/Palto

 機械学習モデルの検証に実データを使うのが一般的な考え方だ。モデルが現実と一致しなくなったらモデルを最適化する。

 機械学習モデルには多くの外部要因が影響する。McKinseyの調査では、多くのAIを導入している企業ほど、コロナ禍でAIモデルのパフォーマンスが低下したと報告する可能性が高かった。業績に比例してAIを多く導入する傾向が高く、AIをあまり利用していない企業よりもパフォーマンスが低下した。McKinseyによると、業績が高い企業の中でもマーケティングと販売、製品開発、サービス運用の企業のモデルが特に脆弱(ぜいじゃく)だった。

 コルボ氏によると、消費者の需要パターンなど長期にわたる時系列データを利用するモデルがコロナ禍では機能しなくなることが多かったという。「現在起きていることに合わせて調整される自己適応型のモデルが増え、長期にわたる時系列データの利用が少なくなる方向に移っている」

 モデルには、リアルタイムデータも時系列データも必要だ。多くの深層学習モデルには時系列データと短期間に高頻度で変化するデータを組み合わせる柔軟性があるとコルボ氏は言う。

機械学習システム開発の新スタイル

 コルボ氏は、ソフトウェア開発の厳密さを機械学習に持ち込み、機械学習でもコードをバージョン管理下に置いて変更の監査証跡を提供する必要があると話す。こうしたITガバナンスと監視がなければ機械学習モデルを管理できない。

 MLOpsは機械学習システムの開発と機械学習モデルをソフトウェア開発の一形態として扱う。

 「MLOpsには進化が必要だ。AIのCoE(センターオブエクセレンス)によって開発された機械学習のウオーターフォールモデルについて考えてみる。そこでは機械学習モデルの大幅なリファクタリングが必要になるが、迅速な繰り返しに適したパターンはない」(コルボ氏)

MLOpsツール

 数年前のMLOpsは開発チームに高度なスキルを要求したが、MLOpsをサポートするツールは成熟している。データサイエンティスト向けにワークフローや依存関係を管理するツールは最近まで存在しなかった。Spotifyの「Luigi」(訳注:データパイプライン構築ツール)やNetflixの「Metaflow」(訳注:データサイエンスワークフローフレームワーク)などのツールは社内で開発する必要があった。

 現在利用可能なMLOpsツールの多くはオープンソースだ。そのため、利用できるツールを把握するだけでなく、そうしたツールをどのように組み合わせるかを理解する人材が必要なのは明らかだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 サイオステクノロジー株式会社

平気でうそをつくLLM、正直者へと変身させるRAGアプリケーションの作成法とは

LLMはビジネスに計り知れない恩恵をもたらす可能性を秘めているが、問題点の1つは、平気でうそをつくこと(ハルシネーション)だ。そこで、この問題を解決するために役立つ、RAGアプリケーションの作成方法を紹介する。

市場調査・トレンド ServiceNow Japan合同会社

AIを利用して組織全体の生産性を向上させる方法とは?

生成AIの登場によって、AIを業務活用しようとする企業が増えてきている。しかし、AIをどのような形で導入すればよいのか悩んでいる企業も少なくない。本資料では組織全体にAIと生成AIを組み込む方法について解説する。

技術文書・技術解説 Asana Japan株式会社

AI導入の現在地:知っておくべき6つのメリットと「2026年問題」とは?

労働力不足の解消や生産性の向上など、多くのメリットが見込める、職場へのAI導入。一方、LLM(大規模言語モデル)の学習データが枯渇する「2026年問題」が懸念されている点には注意が必要だ。それによる影響と、企業が取るべき対策とは?

市場調査・トレンド Asana Japan株式会社

AI活用がカギ、最新調査で読み解く日本企業がイノベーションを推進する方法

現代のビジネス環境下で企業が成長を続けるには「イノベーション」の推進が不可欠だ。最新調査で明らかになった日本企業におけるイノベーションの現状を基に、イノベーション推進の鍵を握るAI活用やベロシティ向上の重要性を解説する。

製品資料 SB C&S株式会社

ワンランク上の「AI+PDF」活用、生産性・効率を飛躍的に向上させる秘訣

今やビジネスを中心に、多様な場面でやりとりされているPDF。このPDFをより便利にするためには、文書の能動的な活用がポイントとなる。本資料では、アドビの生成AIを用いながら生産性や効率を飛躍的に向上させる活用方法を紹介する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...