世界のIT動向をまとめた「プレミアムコンテンツ」の読み解き方を解説する本連載。今回は「『環境に優しいデータセンター』はこうして作る」を取り上げる。
ITのさまざまな話題を紹介するPDF形式のブックレット「プレミアムコンテンツ」。今回取り上げる「『環境に優しいデータセンター』はこうして作る」は、電力消費量を抑えたデータセンターを構築する方法を解説する連載記事を再構成したプレミアムコンテンツだ。
再生可能エネルギーの活用推進といった環境保護意識の高まりは、データセンターの在り方を変え始めている。環境に優しいデータセンターはどうすれば実現できるのか。
日本企業は、このプレミアムコンテンツの内容をどう読み解けばよいのか。関連企業や専門家の声を交えて解説する。
環境に配慮したデータセンター造りに取り組む、国内における草分け的な存在がインターネットイニシアティブ(IIJ)だ。IIJが2011年、島根県松江市に開設した「松江データセンターパーク」(松江DCP)は、当時の国内における商用データセンターで極めて珍しかった外気冷却方式を採用。IT機器から生じる熱を取り除くために、限られた資源である「水」ではなく、豊富にある「空気」を活用する。
松江DCPはIIJにとって、第三者の施設を借りず、初めて自社で建設したデータセンターだという。同社は消費電力を抑えるに当たり、先行して「エコ」(環境保護)の視点を取り入れていた北米のデータセンターを調査。外気を取り入れた空調システムの他、給電効率を高めやすい「三相4線式」のUPS(無停電電源装置)の導入を決めた。国内で広く普及している「三相3線式」のUPSとは異なり、三相4線式のUPSは一般的にはトランス(変圧器)による変圧が不要なので、変圧に伴う電力消費を回避できる。
IIJによれば、上記を中心とした取り組みが奏功し、電力使用効率を表すPUE(Power Usage Effectiveness)の値を松江DCPで約1.2に下げることに成功した。PUEとは、データセンターの消費電力全体が、IT機器の消費電力の何倍に相当するかを表す値だ。PUEが「1.0」に近づくほど、空調や照明といったIT機器以外の消費電力が少ないことになる。
データセンターの電力使用効率向上を目指す業界団体のThe Green Gridは、PUEの標準値を1.5程度だとみている。IIJはPUEを1.5より下げて電力コストを減らすことにより、料金面で同社クラウドサービスの競争力向上を図っているという。
「脱炭素」(二酸化炭素=CO2の排出量削減の取り組み)の動きの広がりを受け、IIJは現在、松江DCPにおいて敷地内で太陽光発電の設備を設け、火力発電所など外部の発電設備から調達する電力量を減らすことを検討している。これらによって「カーボンニュートラル」(CO2排出量と吸収量の相殺)を達成可能なデータセンターの実現を目指す。
調査会社IDC Japanは2021年の国内「脱炭素化GX」(GX=グリーントランスフォーメーション)市場の規模を、前年比18.2%増の4995億円(2021年9月の予測値)とみている。同社は脱炭素化GXを「事業活動のあらゆる面で消費エネルギー量を抑制し、企業活動の価値観やビジネスの進め方にもエコの考えを取り入れる概念」と捉えている。
今後、脱炭素化GX市場は年間2割程度の成長率を維持し、2025年には市場規模が1兆1715億円になるとIDC Japanは予測する。同社ITスペンディングのグループマネージャー、村西 明氏は「ITベンダーは脱炭素化の動きを契機として、新たなサービス開発を進める」と話す。
データセンターはユーザー企業にとって、ビジネスを支える重要な存在だ。そのためデータセンターの災害やサイバー攻撃の対策はもちろん、脱炭素につながるエコも、企業にとって重要な取り組みとなる。
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