Microsoft 365メール暗号化に“解読可能”な脆弱性 利用中止でも消えない危険「Office 365 Message Encryption」の脆弱性と対策【後編】

暗号化されたメールの内容を攻撃者が解読し得るという、Microsoftのメール暗号化ツール「Office 365 Message Encryption」の脆弱性。企業はどのような防御策を講じるべきか。そもそも防御策はあるのか。

2022年11月16日 08時15分 公開
[Alex ScroxtonTechTarget]

 セキュリティベンダーWithSecure(F-Secureの企業向け部門が独立)は、Microsoftの「Office 365 Message Encryption」(OME)に深刻な脆弱(ぜいじゃく)性があると発表し、注意を呼び掛けている。OMEは、Microsoftのオフィススイート「Microsoft 365」(Office 365)で利用可能なメール暗号化ツールだ。この脆弱性を悪用すると、攻撃者は暗号化されたメールの内容を解読できる恐れがあるという。OMEを使用している企業はどうすればいいのか。そしてMicrosoftの動きは。

対策は「OMEをやめる」 それでも残る“あの懸念”

 OMEが使っている暗号化技術は、繰り返し出てくるブロック(メールの一部)を全て同じ暗号文に変換する。そのため攻撃者は、一定の量のメールを入手すれば、暗号化の構造から内容をある程度推測できるという。WithSecureのセキュリティコンサルタントを務めるハリー・シントネン氏によると、企業にとっては残念ながら有効な対策がない。「そもそもメールを流出させないことが大切だ」(シントネン氏)

 シントネン氏によると、OMEの脆弱性は特に取引先との契約や国・地域のルールによって、プライバシーを順守しなければならない企業にとって懸念材料になる。OMEの脆弱性悪用によって情報が漏えいすれば、欧州連合(EU)の「GDPR」(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」や、「CCPA」(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者保護法)に触れる可能性がある。

 MicrosoftはWithSecureから受けた報告について「脆弱性とは見なさず、セキュリティ対策を実施する必要はない」と述べたと、WithSecureは明かす。そのためベンダーがIT製品の脆弱性を公開・修正したことを示す「共通脆弱性識別子」(CVE:Common Vulnerabilities and Exposures)は発行されなかったという。

 Microsoftの方針を受けWithSecureは「企業にできる唯一の対策といえば、OMEの使用を直ちに停止することだ」と言う。ただしOMEの使用を停止しても、過去にOMEで暗号化されたメールを攻撃者が入手するリスクは残るとシントネン氏は指摘する。

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