暗号化されたメールの内容を攻撃者が解読し得るという、Microsoftのメール暗号化ツール「Office 365 Message Encryption」の脆弱性。企業はどのような防御策を講じるべきか。そもそも防御策はあるのか。
セキュリティベンダーWithSecure(F-Secureの企業向け部門が独立)は、Microsoftの「Office 365 Message Encryption」(OME)に深刻な脆弱(ぜいじゃく)性があると発表し、注意を呼び掛けている。OMEは、Microsoftのオフィススイート「Microsoft 365」(Office 365)で利用可能なメール暗号化ツールだ。この脆弱性を悪用すると、攻撃者は暗号化されたメールの内容を解読できる恐れがあるという。OMEを使用している企業はどうすればいいのか。そしてMicrosoftの動きは。
OMEが使っている暗号化技術は、繰り返し出てくるブロック(メールの一部)を全て同じ暗号文に変換する。そのため攻撃者は、一定の量のメールを入手すれば、暗号化の構造から内容をある程度推測できるという。WithSecureのセキュリティコンサルタントを務めるハリー・シントネン氏によると、企業にとっては残念ながら有効な対策がない。「そもそもメールを流出させないことが大切だ」(シントネン氏)
シントネン氏によると、OMEの脆弱性は特に取引先との契約や国・地域のルールによって、プライバシーを順守しなければならない企業にとって懸念材料になる。OMEの脆弱性悪用によって情報が漏えいすれば、欧州連合(EU)の「GDPR」(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」や、「CCPA」(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者保護法)に触れる可能性がある。
MicrosoftはWithSecureから受けた報告について「脆弱性とは見なさず、セキュリティ対策を実施する必要はない」と述べたと、WithSecureは明かす。そのためベンダーがIT製品の脆弱性を公開・修正したことを示す「共通脆弱性識別子」(CVE:Common Vulnerabilities and Exposures)は発行されなかったという。
Microsoftの方針を受けWithSecureは「企業にできる唯一の対策といえば、OMEの使用を直ちに停止することだ」と言う。ただしOMEの使用を停止しても、過去にOMEで暗号化されたメールを攻撃者が入手するリスクは残るとシントネン氏は指摘する。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
サービスアカウントによる特権アクセスの管理に頭を悩ませるセキュリティ担当者は少なくないだろう。重要なシステムやデータを守るには、こうした特権アクセスを適切に管理し、アカウントを保護することが求められる。
サービスアカウントの悪用や誤用が問題になっている。システムやアプリケーションへのアクセスに特別な権限を有しているだけに、悪用されれば大きな被害につながる可能性もある。管理・保護のベストプラクティスをチェックしよう。
eコマースの登場以降、デジタル決済の選択肢は急速に広がり、利用者の利便性は飛躍的に高まった。一方で、それぞれの決済方法を利用するユーザーを標的とした金融犯罪や不正行為も爆発的に増加している。どう防げばよいのだろうか。
金融サービス業界において、金融犯罪を防ぐための対策は不可欠だ。デジタルサービスが増え、システムが複雑化する中で、どう対策を実践していくか。取引詐欺やマネーロンダリングなど4つのシーンを取り上げ、具体的な対策を解説する。
クラウドシフトが進み、リモートワークも普及した現代のIT環境で重要性が高まっているのが、ゼロトラストに基づくセキュリティ対策だ。その新たなアプローチとして、ブラウザベースの手法が注目されている。どういった手法なのか。
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。