「サイバーセキュリティ」も「サイバーレジリエンス」も事業継続に不可欠な理由サイバーセキュリティとサイバーレジリエンス【後編】

企業がセキュリティインシデントに見舞われた場合、影響を軽減して事業を継続させるには、サイバーセキュリティとサイバーレジリエンスが欠かせない。両者を組み合わせ、適切に推進する方法は。

2024年01月19日 05時00分 公開
[Paul KirvanTechTarget]

 「サイバーセキュリティ」と「サイバーレジリエンス」は、それぞれセキュリティにおける異なるアプローチを指す。サイバーセキュリティは、インターネットに接続したシステムやデータセンターをサイバー攻撃から保護するための活動のことだ。一方サイバーレジリエンスは、セキュリティインシデントの影響から復旧する企業の能力のことだ。企業が今日の脅威や攻撃者、災害から自らを守るために必要になるのが、サイバーセキュリティとサイバーレジリエンスを併用する方法だ。

両者を連携させるには

 サイバーセキュリティは、サイバーレジリエンスを実現するための中核的な要素であり、強力なサイバーレジリエンスプログラムの基盤をつくる。サイバーセキュリティを構成する要素を以下に挙げる。

  • 専用のサーバやネットワーク機器から成るサイバーセキュリティシステム
  • アンチマルウェアソフトウェア
  • 脅威分析ソフトウェア
  • 境界防御システム
  • サイバー攻撃管理の訓練を受けた従業員
  • 上級管理職によるサポート
  • 従業員に対する定期的なセキュリティ意識向上トレーニング
  • セキュリティチームがサイバー攻撃への対処方法を理解できるようにするための、定期的なインシデント対処の演習
  • サイバーレジリエンスを念頭に置いたセキュリティ方針
  • サイバー攻撃の対処方法を規定した手順書

 サイバーレジリエンス計画の重要な要素は、通常の業務を定義することだ。可能な限り通常の業務に近い状態に戻すことが、サイバーレジリエンスプログラムの目標となる。例えば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によって、企業は従業員をオフィスの外、つまり従来の境界線の外に置くという新たな勤務条件への適応を余儀なくされた。その結果、ハイブリッドワーク(オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方)は、企業にとって通常の業務形態になった。このように、通常の業務の定義が変化するのに合わせて、サイバーセキュリティ計画とサイバーレジリエンス計画も変えなければならない。

「と」であって「対」ではない

 サイバーセキュリティ計画は、企業でサイバーセキュリティインシデントが起きた際に、影響を受けたデータやシステムを迅速に復旧・再開できるようにするためのものだ。だがサイバー攻撃を受けたときに事業運営に影響が及ぶのであれば、これだけでは不十分である可能性がある。サイバー攻撃によって基幹アプリケーションが破壊された場合、代替システムを構築して、データを復元するのに時間が掛かってしまう可能性もある。

 このような影響は、事業継続計画(BCP)および災害復旧(DR)計画によってある程度軽減可能だ。BCPで定めた事業活動の復旧手順は、サイバーレジリエンス計画を支援する。DR計画はクラウド型リカバリーサービス、データバックアップ設備、重要システムのバックアップ、予備機器の供給などによって、破壊されたIT資産を復旧することを支援する。

 サイバーセキュリティ計画についても、サイバーレジリエンス計画についても、展開、文書化、定期的な演習、定期的な見直しと更新という作業を実施しなければならない。これらの作業はBCPおよびDR計画を効果的に補完し、企業がサイバー攻撃を受けたときでも事業を通常通り運営し続けられる仕組みの構築につながる。

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