Windows 10のサポート終了が控えている中でも、企業は「Windows 11」へのアップグレードをそれほど重視していない。その背景には何があるのか。企業がWindows 11への移行よりも重視していることとは。
MicrosoftのクライアントOS「Windows」のアップグレードは、IT部門の業務として従来欠かせない取り組みだ。業務の生産性を維持し、向上させる上では「Windows 11」への移行も同様に重視するのが当然だと言える。だが一部の企業はWindows 11へのアップグレードではなく、別の取り組みを重視している状況が調査で分かった。そうした判断の背景には何があるのか。
米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)は、IT支出の優先課題に関する調査「2024 Technology spending intentions」を実施した。同調査で回答した世界のIT意思決定者1432人のうち、36%が「Microsoft 365」や「Google Workspace」といったオフィススイートを含む業務用ツールの活用を2024年の最優先課題として挙げた。
こうしたオフィススイートにおいては、学習したデータを基にして新たなデータを自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)機能の搭載が進んでいる。その機能を有効に活用することで業務の生産性を高めることができるので、企業はその利点を取り入れることを重視し始めていると考えられる。生成AIは文書の作成や、Web会議内容の要約を手助けしてくれるだけでなく、サードパーティーのサービスと連携して業務を効率化することにも役立ち始めている。
今回の調査では欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域のIT意思決定者の34%が、2024年に「PCの刷新を計画している」と答え、31%はスマートフォンやタブレットといったモバイル端末を刷新する計画だと回答。企業は端末の刷新を比較的重視していると見ることができる。
その一方で「エンドユーザーのIT利用」に関する分野のうち、Windows 11へのアップグレードはEMEAでは6位にとどまった。北米ではWindows 11へのアップグレードは2位に入った。EMEA地域の企業の関心はオフィススイートを含む業務用ツールや、PCの更改により向いている傾向が見られた。
企業のこうした判断の背景にあるのは、生成AIのような新技術が台頭すると同時に、コラボレーションの強化や業務効率向上といった課題が顕著になっていることだ。これを受けてESGの主席アナリストであるゲイブ・クヌース氏は「多大なビジネスチャンスを秘めた競争の激しい市場が形成されている」と語る。企業の優先事項だけではなく、ベンダー側にも多様な変化が起きつつある状況だ。
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