ノートPCを爆売れさせる“Windows 11”や“買い替え需要”ではないあの理由PC市場に回復の兆し【前編】

2023年、PC市場は厳しい状況にさらされた。ところが2024年になって、復活の兆しを見せ始めている。その背景には、通常のPC買い替えの需要とは異なる、ある動きが関係しているという。何が理由なのか。

2024年04月11日 08時30分 公開
[Simon QuickeTechTarget]

関連キーワード

ビジネスPC | トレンド解説


 PCベンダーにとって2023年は厳しい1年だったが、2024年は好転の兆しが見えている。調査会社CONTEXT WORLD(以下、CONTEXT)の調査と分析によると、従来のPC買い替えとは異なる傾向や、市場全体のある動きが、企業のPC購買行動を変える可能性がある。特にノートPCについては、これまでの苦境とは打って変わって、販売が好転する可能性があるという。具体的に“なぜノートPCが売れるのか”を見ていこう。

ノートPCが売れる、単なる“買い替え”でも“Windows 11”でもない理由はこれだ

 CONTEXTは、同社が発行した2024年第1四半期(1~3月)のPC市場に関する予測レポートに関して、「2023年の終わりと共にハードウェア需要は増加に転じる」と述べた。そして実際に同年1、2月のPC市場を同社が分析した結果は、この観測が正しかったことを示すものとなった。

 PCの需要増加の背景にある、企業がPCを刷新する理由として、CONTEXTはクライアントOS「Windows 11」の導入や、人工知能(AI)技術を搭載したPCの採用を挙げる。ただしPCの需要を“底上げ”する理由は他にある。

 CONTEXTでシニアアナリストを務めるマリークリスティーン・ピゴット氏によると、同2024年第1四半期の、ノートPCをはじめとするモバイルPCの販売台数は、前年同期比で2.5%減~7.1%増になる見通しだ。同社は、2024年上半期のモバイルPC販売台数が2023年よりも上向くと見込んでいる。この理由についてピゴット氏は、2023年の販売台数実績が悪かったことを主な要因として挙げつつ、「地域的な成長と在庫状況の大幅な改善も後押しする」と予測する。

 2024年下半期(6~12月)の市場に対するCONTEXTの見通しは、英国などの欧州における経済の利下げによって、欧州でのモバイルPCの売り上げが増加するというものだ。「利下げが需要を喚起し、企業がこれまで先延ばしにしていた購買を実行に移す可能性がある」とピゴット氏は言う。企業はPCの買い替えサイクルや保証期限切れ、Windows 11への移行といった避けられない事情があるため、モバイルPC市場活況の兆しがあるというのだ。

 実際に同年第1四半期(1~3月)には、公共部門や教育分野での支出が市場の活性化を後押しし、西欧諸国の一部で地域的な市場の盛り上がりが見られた。「年末にかけて、AI技術を搭載したPCなど、新しい技術が市場に影響を及ぼす見込みだ」(同氏)

わずかでも成長の見込みがあるデスクトップPC市場

 CONTEXTの予測によると、2024年第1四半期デスクトップPC販売台数は、厳しかった2023年から8.9%減~0.6%増となり、前年からわずかに成長する見込みがある。

 わずかであってもプラス成長になれば、2023年のダウントレンドから逆転する可能性があるということだ。調査会社Gartnerによると、同年のPC出荷台数は前年比14.8%減となり、2年連続で2桁減少を記録した。同年のPC出荷台数は2億5000万台を下回り、2006年以来で最低を記録した。


 次回は、PC市場を盛り上げようとするベンダーの動向を紹介する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

市場調査・トレンド SUSE ソフトウエア ソリューションズ ジャパン株式会社

ベンダー依存から脱却、柔軟かつ統合的なLinux環境を構築する方法とは?

エンタープライズ向け技術は、Linuxを中核に据え、オープンソースで動作しているものが多い。しかし近年、一部のベンダーが契約による囲い込みを強めており、ベンダーロックインのリスクが高まっている。安定したLinux運用を実現するには?

製品資料 株式会社野村総合研究所

運用効率化に欠かせないITSMツール、ノンカスタマイズが正解とは限らない?

ITサービスへの要求は年々増大しており、その対応を手作業でカバーするには限界がある。そこで導入されるのがITSMツールだが、特に自動化機能には注意が必要だ。自社に適した運用自動化や作業効率化を実現できるのか、しっかり吟味したい。

製品レビュー 株式会社クレオ

現場でカスタマイズ可能なITシステム、コストと時間をかけずに実現する方法とは

業務効率を高めて生産性を向上させるために、多くの企業がITシステムの導入を進めている。しかし、自社の業務に合わないITシステムを導入してしまっては、逆に生産性が低下する可能性も高い。この問題をどう解決すればよいのだろうか。

製品レビュー グーグル合同会社

重要なエンドポイントを守る、Chromeブラウザを企業向けに安全性を強化する方法

世界中で広く利用されているChromeブラウザは、業務における重要なエンドポイントとなっているため、強固なセキュリティが必要となる。そこでChromeブラウザを起点に、企業が安全にWebへのアクセスポイントを確立する方法を紹介する。

製品資料 グーグル合同会社

Chromeの拡張機能:企業における今求められる管理戦略とは

Google Chromeの拡張機能は生産性の向上に不可欠な機能であり、ユーザーが独自にインストールできる一方、IT管理者を悩ませている。ユーザーデータを保護するためにも、効率的な運用・監視が求められるが、どのように実現すればよいのか。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。