テレワークで“爆売れ”だったノートPCが「もはや旧世代」の現実ポストコロナのIT事情【前編】

コロナ禍でPCをはじめとするデバイスの買い替えが進み、その反動で買い控えの状況が続いた。そうした中でデバイスは着実に進化していた。特に強化された点とは。

2024年02月01日 08時30分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で、企業のテレワーク移行の動きが広がり、同時にPCの買い替えが進んだ。コロナ禍にPCを買い替えた企業の大半がその後にPCの入れ替えを控えたことで、PC市場では販売台数が落ち込む状態が続いた。

 そうした販売不振の状況が続いている間に起きたのは、働き方の変化だけではなかった。着目すべき変化の一つが、ビジネス向けPCをはじめとしたデバイスの進化だ。その内容を具体的に見てみよう。

“買い控え”のうちに起きていた進化

1.「オンデバイスAI」の登場

 近年、人工知能(AI)技術のアプリケーションへの組み込みや、テレワークとオフィスワークを併用するハイブリッドワークの普及といった幾つかの変化が、PCをはじめとしたIT機器の進化を後押ししている。

 調査会社Canalysでリサーチアナリストとして働くキーレン・ジェソップ氏は、人工知能(AI)の台頭により、「オンデバイスAI」(端末に内蔵されたAI技術)や、AIの処理が可能な高性能ハードウェアの需要が高まると予測する。

 PCベンダーのHPは2023年10月に開催したイベント「HP Imagine 2023」で、AI技術に関連する複数製品を展示しており、他社も同社に続く見込みだ。Canalysの予測によると、AI機能が搭載されたPCの市場投入は2025年以降加速し、2027年に出荷される全PCのうち約60%を占めるようになるという。

 GoogleのクライアントOS「ChromeOS」を搭載したノートPC「Chromebook Plus」は、AI技術を使用したノイズキャンセリング機能や、ビデオ会議向け機能など、従来よりも高性能なハードウェアを搭載する。HPだけではなくビジネス向けPCを手掛ける他のベンダーも、ハイブリッドワークに役立つAI機能をデバイスに組み込む戦略を推進している。

2.コミュニケーションツールの進化

 テレワークやハイブリッドワークに欠かせないのが、ビデオ会議ツールやコラボレーションツールだ。ベンダー各社はその用途を拡大すべく、製品の機能拡充に取り組んでいる。

 HPで英国とアイルランドのチャネルディレクターを務めるニール・マクドナルド氏は、2022年にHPがビデオ会議システムベンダーPolyを買収したことに言及する。この買収の狙いの一つは、ビデオ会議ツールの他、音声技術やカメラ、ヘッドセットといった周辺機器の機能強化にある。「遠隔地からオンラインで参加する従業員と、オフィスの会議室で参加する従業員の両者にとって公平な会議になるよう、いずれの製品も設計している」(マクドナルド氏)

 例えばPolyは、ハイブリッドワーカー向けのワイヤレスイヤフォン「Poly Voyager Free 60」を提供する。持ち運びに便利な他、自宅の生活音やオフィスの雑音を効果的に抑え、クリアな音声品質と途切れない通話体験を実現する。


 次回は、ハイブリッドワークで気を付けるべきセキュリティリスクについて紹介する。

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