「Wi-Fiの“品質”」って何のこと? 無線LANのKPIで解説Wi-Fi品質改善に役立つレポート【前編】

WBAは、無線LANのQoS(サービス品質)を向上させる方法をまとめた技術レポートを公開した。映像やゲーム配信用のネットワーク、オフィスや公共施設のネットワークなどの品質を保つ指標とは。

2024年01月31日 07時30分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

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 Web会議からオンラインゲーム、ストリーミング配信に至るまで、通信遅延をなるべく避ける必要があるアプリケーションにとって、無線LANのQoS(Quality of Service:サービス品質)は重要だ。無線LANの業界団体Wireless Broadband Alliance(WBA)は、そうした事業者が参考にできる技術レポート「E2E QoS Improvement:Optimizing QoS Over Wi-Fi」を公開した。レポートの作成には、Intelと通信事業者Airtiesが主導するWBAのプロジェクトグループ「E2E Wi-Fi Quality of Service」が携わった。

 通信事業者が顧客企業や消費者を引き付け続けるために、自社サービスの差異化要因として無線LANのQoSを活用する方法を同レポートは論じている。具体的には、オンラインゲームや4K(4000×2000ピクセル前後の解像度)映像の配信、一般住宅や企業、空港、スタジアムなどの場所におけるネットワークといった、さまざまな利用場面での無線LAN提供手法を解いたものだ。各用例におけるQoS要件をどう満たすことができるかを詳述している。

無線LANの「品質改善のKPI」とは?

 レポートは、家庭用、企業用、公共用の各用例で無線LANのQoSを向上させるための手法を、各用例特有のKPI(重要性能評価指標)を示しながら説明している。KPIの例として挙げられているのは以下の通りだ。

  • 通信のレイテンシ(遅延)
  • パケットロス(損失)
    • パケットは、データを分割して伝送するための単位のこと。
  • ジッタ
    • データ伝送時間のばらつき。
  • フレームレート(fps)
    • 1秒当たりのフレーム数。

 他にも、ストリーミング配信アプリケーションのようなQoSを重視するアプリケーションと、メールクライアントのようなQoSがさほど重要ではないアプリケーションを同時に使う場合に、これらのアプリケーションが同一ネットワークを共有する上での注意点を扱っている。

 WBAによると企業には、メールやファイル転送アプリケーションよりもWeb会議アプリケーションの通信を優先するなど、アプリケーションごとに適切なQoSを提供できる無線LANが必要だ。一方で家庭用無線LANでは、遅延の影響を受けやすく、広い帯域幅(通信路容量)を必要とするアプリケーションのバランスを取ることが重要になる。例えばオンラインで複数のプレイヤーが同時に参加する「マルチプレイヤーゲーム」、4K画質のストリーミング配信、Web会議ツールなどだ。しかもこうしたアプリケーションは、同一ネットワーク内で複数が同時に使われることがある。

 レポートはオンラインゲームやストリーミング配信などのアプリケーション、AP(アクセスポイント)などの無線LANコンポーネント、携帯電話やノートPCなどのクライアントデバイスにおけるQoSの確保も取り上げている。ストリーミング配信アプリケーションの通信のQoSを測る指標「Mean Opinion Score」(MOS:平均オピニオン評点)を使う方法にも触れている。MOSは、ITU-T(International Telecommunication Union - Telecommunication Standardization Sector:国際通信連合の電気通信標準化部門)の専門家グループ「SG12」(Study Group12)の勧告と、それに呼応するツールを使用することで計測可能だ。

 オンラインゲームでのKPIも同レポートは取り上げている。一例が「Freeze Count」(フリーズカウント)だ。Freeze Countとは、定義された時間内にクライアントデバイスが受信できなかった、連続したレンダリング(描画)フレームを指す。別の例として、プレイヤーがゲーム内でアクションを入力してから、その入力に対応するフレームが画面に表示されるまでの時間である「Motion to Photon」(モーションからフォトンまで)がある。こうしたKPIが満たせない場合をはじめ、さまざまなシナリオに対処する緩和戦略をレポートは扱っている。


 次回は、無線LANのQoSを向上させるためにWBAが推進する計画を取り上げる。

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