もはや「RPA」という言葉が“オワコン”なのはなぜかAI時代の「RPA」の行方【前編】

主要RPAベンダーが自社ツールに生成AIを組み込む中で、対抗するスタートアップ企業は「RPAの飛躍的な進化」を実現しようとしている。RPA市場に何が起きようとしているのか。

2024年09月24日 07時00分 公開
[Shaun SutnerTechTarget]

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人工知能 | RPA


 テキストや画像を自動で生成する人工知能(AI)技術「生成AI」は、さまざまなソフトウェアに組み込まれるようになった。その影響は、「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)の領域にも及んでいる。そうした中でRPAが時代遅れになりつつあるという見方が強まっている。どのような変化が起きているのか。

「RPA」はもうオワコン?

 Automation Anywhere、Blue Prism、UiPathをはじめとする主要RPAベンダーも、自社ツールに生成AI機能を取り入れている。一方で、生成AI技術を用いてこれらのベンダーに対抗しようとするスタートアップ企業もある。

 Orby AIはRPAの進化に挑むスタートアップ企業だ。Orby AIは2022年、UiPathの元プロジェクト管理担当ディレクターであるベラ・リウ氏と、Googleの元エンジニアリング責任者ウィリアム・ルー氏によって設立された。同社が提供するLAM(大規模アクションモデル)プラットフォーム「ActIO」は、請求書や契約の処理、従業員の経費の監査など、ビジネスプロセスの生成に役立つ。

 LAMは、2023年半ばに誕生した比較的新しい技術だ。LAMでは、「ニューロシンボリックプログラミング」を使用している。これは、LLMの基盤となる「ニューラルネットワーク」(人間の脳の神経回路を模倣したもの)と、シンボリックAI(ルールや論理を使った推論型のアプローチ)を組み合わせたAI技術だ。単に情報を処理するだけではなく、特定のアクションを定義して、実行条件や方法をモデル化できる。これによって、複雑なプロセスの自動化が可能となる。

 Orby AIが提供するツールは、「大規模言語モデル」(LLM)ではなく、LAMをはじめとする複数の生成AIを活用している。LLMがテキストや画像、音声を生成するのに対し、LAMはプロセスを生成する。さらに、AIエージェントを用いて、自律的にプロセスを実行させることもできる。

 2024年6月、Orby AIは3000万ドルを調達し、資金調達が総額3450万ドルに達したことを公表した。さらに、大規模なテストユーザーを獲得し、市場進出に向けた準備を進めている段階だ。

「RPA」はもはや時代遅れなのか

 大手RPAベンダーは、盤石な顧客基盤を持つため、自社ツールに生成AI機能を迅速に組み込むことが可能だ。しかし、既存のシステムはしばしば硬直的で、Orby AIが市場にもたらすような大きな変革は起こせない。こう指摘するのは、Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリストであるマイク・レオーネ氏だ。

 Orby AIは、「RPA」という用語をほとんど使わない。なぜなら1990年代から存在するRPAは、もはや時代遅れの用語だと考えているからだ。「他のRPAベンダーとひとくくりにされたくない」という思いもあるという。

 レオーネ氏は、「Orby AIにとっての最大の課題は、同社の技術がRPAと結び付けられてしまうことだ」と説明する。Orby AIのツールは、従来型RPAとは異なるシンプル性と知能を備えている。それでもRPAに対する失望感から、そのネガティブなイメージを拭えない顧客も存在する。


 次回は、LAMの導入事例を紹介する。

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