「RAG」の進化に寄せられる“7つの期待”とは?「LLM」×「RAG」を徹底解説【後編】

LLMの回答精度向上に役立つ技術として、「RAG」(検索拡張生成)への注目が集まっている。今後RAGにはどのような進化が期待されているのか。

2024年10月15日 07時30分 公開
[Bill SchmarzoTechTarget]

関連キーワード

人工知能


 大規模言語モデル(LLM)と「RAG」(検索拡張生成)を組み合わせる手法が、企業の関心を集めている。RAGは、学習データ以外に外部のデータベースから情報を検索、取得し、LLMが事前学習していない情報も回答できるように補う手法だ。今後、RAGにはどのような進化が期待されているのか。

「RAG」の進化に寄せられる“7つの期待”

会員登録(無料)が必要です
  1. パーソナライズ性の向上
    • RAGは将来的に、会話の履歴や文脈、個人の嗜好に基づいて情報を検索できるようになる。
  2. 分野横断的な知識の融合
    • ヘルスケア、教育、金融、カスタマーサービスなど、幅広い産業へのRAG適用が進む。LLMの豊富なナレッジベースと、企業独自のデータを組み合わせることで、より広範かつ精度の高い回答や洞察を提供する。
    • 例えばヘルスケアにおいて、個々の患者記録と医学文献を組み合わせることで、よりパーソナライズ化した患者ケアを実現する。
  3. リアルタイム性の強化
    • 企業が継続的にデータベースを更新することで、RAGは最新の情報を取り入れて、回答の鮮度を高めることができる。
  4. 知識格差の解消
    • RAGを使うことで、専門的な知識を持たない人でも幅広いデータにアクセスして簡単に活用できるようになる。この結果、コストや人的資源が不足している中小企業が、大企業との競争力を手に入れることができる。
  5. 責任あるAIの強化
    • RAGにおいて、特にデータのプライバシーとセキュリティの確保が重要となる。「責任あるAI」(公平性や透明性、安全性の確保を考慮したAI技術)の考え方を中心に、RAGシステムの開発における透明性やユーザーへの説明責任が重視される他、データの使用や出力結果についての監査や説明の責任が強まる。
  6. バイアスと誤情報の対策
    • RAGで扱うデータには、バイアス(偏見)や誤情報が含まれる可能性がある。これからのRAGシステムには、バイアスを特定して排除し、正しい情報を提供するためのメカニズムが組み込まれる。
  7. 人間とAI技術による協働
    • 将来的に、人間とAI技術はより協力していくと考えられる。RAGは単に情報を提供するだけでなく、人間の創造的なパートナーとしての役割を担う。AI技術の持つデータ処理能力やパターン認識力で、人間が持つ創造性をより伸ばしていくと期待される。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 東京エレクトロン デバイス株式会社

生成AI活用の鍵、セキュリティと利便性を両立するための方法とは?

生成AIの活用には機密情報漏えいなどのリスクがあるため、利用を制限しているケースもある。しかし、完全に利用を制限してしまうと競合に後れを取る可能性がある。そこで重要なのが、セキュリティと利便性を両立できるような環境構築だ。

製品レビュー ストックマーク株式会社

AI技術を使って必要な情報を自動で抽出/要約する「情報収集サービス」の実力

日々情報が増え続ける今、業務に必要な全ての情報を、社内外の関連ニュースや論文、特許情報などから収集していくのは至難の業だ。そこで業務に必要な情報を着実に届けるための仕組み作りに役立つサービスを紹介する。

製品資料 ゼットスケーラー株式会社

セキュリティリーダー必見:データセキュリティの複雑化によるリスクの解消方法             

クラウド利用の拡大に伴い、データが分散・肥大化する中、従来のセキュリティ対策の限界が見え始めている。データの所在や利用状況を可視化し、リスクを事前に把握して対応することが求められる今、有効となる新たなアプローチを探る。

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

AI/MLトランザクション分析から読み取る、企業のリスク管理とセキュリティ課題

AIの活用が急速に進む一方で、セキュリティリスクの増大が懸念され、企業の対応が急務となっている。本資料では、2024年2~12月までの5365億件のAI/ML(機械学習)トランザクションの分析に基づき、その実態と対策を多角的に考察する。

事例 富士通株式会社

富士通が実践、AI時代に最適な設計プロセスを実現する方法

製造業の設計現場では、設計プロセスの複雑化などの課題が山積している。こうした中、注目を集めているのが生成AIの活用だ。本資料では、生成AIがもたらす設計業務の未来について、詳しく解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...