HDDは磁気ディスクにデータを書き込む仕組みであることから、容量増大はほとんど限界に来ているとみる向きがある。だがHDDベンダーが開発を進める新たな技術が、その限界を突破しようとしている。
磁気ディスクにデータを書き込むストレージである「HDD」は、容量の増大がほとんど限界に来ているとみられることがある。だが従来とは異なる“大容量化の新たな方法”が出てきており、進化への期待感は高まっている。HDDベンダー3社の一角を占める東芝デバイス&ストレージも、今後に期待を持たせるHDDを披露した。
東芝デバイス&ストレージは、容量24TBと28TBのHDD製品を2024年09月に発表した。従来型磁気記録(CMR)方式を採用した24TBの「MG11」と、シングル磁気記録(SMR)方式を採用した28TBの「MA11」だ。
同社の今回の発表に先立つこと約1年、Seagate Technologyは2023年10月に、CMR方式で容量24TB、SMR方式で28TBとなる「Exos X24」を発表していた。Western Digitalは2023年11月に、CMR方式で容量24TBの「Ultrastar DC HC580」と、SMR方式で容量28TBの「Ultrastar DC HC680」を発表していた。
東芝デバイス&ストレージのMG11とMA11の主な仕様は以下の通り。
東芝デバイス&ストレージの新HDDは、「FC-MAMR」(Flux Control-Microwave Assisted Magnetic Recording:磁束制御型マイクロ波アシスト磁気記録方式)という独自技術を採用している。これはマイクロ波を使用してプラッタの磁性を変化させ、より高い密度でデータを記録できるように支援する技術だ。
記録領域が微細になるほど磁気ヘッド(データ読み書きを担う部品)が精緻にデータを記録することは難しくなるため、FC-MAMRのような、プラッタにおける磁性の変化を助ける技術が必要になる。こうした技術がなければ、1つのデータの単位が占める領域が大きくなり、トラック(プラッタを同心円状に区切った記録領域)に保存できるデータ量は小さくなる。結果として、HDD1台に保存できる容量は大きくならない。
SMR方式は、隣接するトラック同士の一部を、屋根瓦のように重ねて配置する。こうすることでデータの記録密度を高める利点が見込める。だが、SMR方式のHDDでは、対象となるデータを変更する際に、周囲のトラックを書き換えることも必要になるという制約がある。この作業が特にデータ書き込みの速度低下につながる可能性がある。そのためSMR方式のHDDは、バックアップやアーカイブ、読み取り専用など、一度書き込むだけの用途に適している。
クラウドサービスのコールドストレージ(利用頻度が最も低い種類のデータを保存)サービスは、SMR方式のHDDを使用する代表的な例だ。コールドストレージであれば、トラックを重ねることによるパフォーマンスへの負の影響がそれほど大きな問題にはならない。
HDDの大容量化の技術に注力するのは東芝デバイス&ストレージだけではない。Seagate TechnologyもWestern Digitalも、より大容量なHDDに商機を見いだしている。その背景には、インタフェースに「SATA」(Serial ATA)や「SAS」(Serial Attached SCSI)を用いるHDDの価格が、依然として「SSD」よりも総じて安いという状況がある。頻繁には利用しないデータのために、容量単価がより高いストレージを使いたがる企業はない。
英Computer Weeklyの調査では、HDDの1GB当たりの価格は、2023年から2024年にかけての過去1年ほどは安定している。その価格は、SSDよりも依然として大幅に安い状況が続いている。
今後に向けて気になる動向の一つは、HDDの容量がどこまで拡大するのかだ。東芝の欧州子会社Toshiba Electronics Europeのストレージ製品事業開発担当シニアマネジャーのライナー・ケーゼ氏は、2024年前半にComputer Weeklyの取材に応じた際、「HDDの容量は今後数十年で40TBまたは50TBに達する」と説明した。技術的には数百TBまで到達することも可能だが、まだ商業的に実現可能かどうかは分からないという。
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