「クラウドファースト」と「ハイブリッドクラウド」はどちらが賢い選択なのか?これからのクラウド戦略の選択肢【前編】

クラウドサービスを優先するクラウドファーストに対して、クラウドサービスとオンプレミスインフラを使い分けるハイブリッドクラウドがある。企業はどちらの戦略を採用すべきか。

2024年12月25日 05時00分 公開
[George LawtonTechTarget]

 クラウドサービスに対する信頼が高まるにつれて、クラウドコンピューティングへの投資を優先する「クラウドファースト」を採用する企業が増える傾向にある。クラウドサービスとオンプレミスシステムを併用する「ハイブリッドクラウド」を採用する企業も珍しくない。クラウドサービスを利用する企業は、どちらの戦略を採用すればいいのか。

クラウドファーストとハイブリッドクラウドのどちらが正解?

会員登録(無料)が必要です

 クラウドサービスのメリットを理解している企業であっても、次の理由でハイブリッドクラウドが必要になることがある。

  • 既存のオンプレミスインフラへの投資活用
  • データに関する規制
  • 遅延の削減
  • レガシーアプリケーションのモダナイズ

 コンサルティング企業SSA & Companyのニック・クレイマー氏は、「金融、行政、ヘルスケアの業界では、さまざまな組織がハイブリッドクラウドを採用せざるを得ない状況にある」と語る。これらの業界の企業は、短期間でのクラウドサービスへの移行が困難なレガシーアプリケーションを所有していることがあるからだ。

 しかし、これらの業界でも、「自社でオンプレミスインフラを運用するよりクラウドサービスの方がセキュリティ面で優れているという認識が広がっている」とクレイマー氏は語る。その結果、クラウドファーストへのシフトが加速しているという。

 だが、ハイブリッドクラウドからクラウドファーストのアプローチに移行するのは容易ではない。

クラウドファーストとハイブリッドクラウドのどちらが優れているのか?

 2つのアプローチにはそれぞれの長所がある。

 クラウドサービスを利用すれば、企業は最小限の投資で素早くシステムを立ち上げることができる。「柔軟性(変化に迅速に対処する能力)とタイムトゥーバリュー(価値を実感するまでに掛かる時間)を理由に、クラウドファーストを採用する企業が増えている」と仮想デスクトップインテグレーターのNerdioの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるワジム・ウラディミルスキー氏は分析する。

 クラウドファーストと比較すると、ハイブリッドクラウドは導入に時間を要し、初期費用も高くなることがある。しかし、ハイブリッドクラウドの方が企業にとって長期的なコストとパフォーマンスの最適化につながる可能性もある。

 クラウドサービスと比較して、データの発生源と処理の場所が近い場合、オンプレミスインフラで運用する方が効率的になるアプリケーションもある。コンプライアンス(法令順守)の観点から、特定のデータやアプリケーションをパブリッククラウドには置けない場合もある。

 ウラディミルスキー氏は、「ハイブリッド化とは、オンプレミスインフラに逆戻りすることではなく、オンプレミスインフラとクラウドサービスの最適なバランスを見つけることだ」と話す。


 後編は、企業におけるインフラ投資の戦略が今後どう変わっていく可能性があるのかを考察する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 株式会社ハイレゾ

GPUのスペック不足を解消、生成AIやLLMの開発を加速する注目の選択肢とは?

生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。

製品資料 日本オラクル株式会社

クラウド転換期到来、データセンターを縮小しクラウドに移行するメリットとは

近年、オンプレミスのデータセンターを活用する戦略を見直し、クラウドに移行する流れが加速している。本資料では、クラウドに移行することで得られる5つのメリットについて解説する。

製品資料 日本オラクル株式会社

自動化ワークフローによりコストを削減し、モダナイゼーションを加速させる方法

現在のビジネス環境は、競争力を維持するために、継続的にITインフラを最新化する“ITのモダナイゼーション”が必要だ。そこで、大規模なモダナイゼーションから小規模なモダナイゼーションまで柔軟に対応する基盤を紹介する。

製品資料 発注ナビ株式会社

商談を効率的に獲得、企業とベンダーの課題を解決するマッチングサービスの実力

クラウド利用が拡大しSaaSサービスの導入が進む中で、製品の多様化がベンダー側と企業側にさまざまな課題を生み出している。双方の課題を解決する方法として注目したいのが、商談を効率的に獲得できるマッチングサービスだ。

事例 ファインディ株式会社

アジャイル開発で直面する課題を解消、3社に学ぶ“開発生産性の可視化”実践術

アジャイル開発に取り組む企業は増加しているが、思うような成果を挙げられていないと悩む担当者も少なくない。そこで、セゾンテクノロジーをはじめとした3社の取り組みを基に、実践の方法と成功のポイントを解説する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...