クラウドサービスを優先するクラウドファーストに対して、クラウドサービスとオンプレミスインフラを使い分けるハイブリッドクラウドがある。企業はどちらの戦略を採用すべきか。
クラウドサービスに対する信頼が高まるにつれて、クラウドコンピューティングへの投資を優先する「クラウドファースト」を採用する企業が増える傾向にある。クラウドサービスとオンプレミスシステムを併用する「ハイブリッドクラウド」を採用する企業も珍しくない。クラウドサービスを利用する企業は、どちらの戦略を採用すればいいのか。
クラウドサービスのメリットを理解している企業であっても、次の理由でハイブリッドクラウドが必要になることがある。
コンサルティング企業SSA & Companyのニック・クレイマー氏は、「金融、行政、ヘルスケアの業界では、さまざまな組織がハイブリッドクラウドを採用せざるを得ない状況にある」と語る。これらの業界の企業は、短期間でのクラウドサービスへの移行が困難なレガシーアプリケーションを所有していることがあるからだ。
しかし、これらの業界でも、「自社でオンプレミスインフラを運用するよりクラウドサービスの方がセキュリティ面で優れているという認識が広がっている」とクレイマー氏は語る。その結果、クラウドファーストへのシフトが加速しているという。
だが、ハイブリッドクラウドからクラウドファーストのアプローチに移行するのは容易ではない。
2つのアプローチにはそれぞれの長所がある。
クラウドサービスを利用すれば、企業は最小限の投資で素早くシステムを立ち上げることができる。「柔軟性(変化に迅速に対処する能力)とタイムトゥーバリュー(価値を実感するまでに掛かる時間)を理由に、クラウドファーストを採用する企業が増えている」と仮想デスクトップインテグレーターのNerdioの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるワジム・ウラディミルスキー氏は分析する。
クラウドファーストと比較すると、ハイブリッドクラウドは導入に時間を要し、初期費用も高くなることがある。しかし、ハイブリッドクラウドの方が企業にとって長期的なコストとパフォーマンスの最適化につながる可能性もある。
クラウドサービスと比較して、データの発生源と処理の場所が近い場合、オンプレミスインフラで運用する方が効率的になるアプリケーションもある。コンプライアンス(法令順守)の観点から、特定のデータやアプリケーションをパブリッククラウドには置けない場合もある。
ウラディミルスキー氏は、「ハイブリッド化とは、オンプレミスインフラに逆戻りすることではなく、オンプレミスインフラとクラウドサービスの最適なバランスを見つけることだ」と話す。
後編は、企業におけるインフラ投資の戦略が今後どう変わっていく可能性があるのかを考察する。
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