自社のデータやアプリケーションをクラウドサービスからオンプレミスインフラに戻す動きが広がっている。ただしオンプレミスインフラへの回帰が失敗するケースもある。オンプレミス回帰のデメリットやリスクとは。
クラウドサービス市場は拡大し続けている。その一方で、コストやセキュリティ、コンプライアンス(法令順守)などの懸念を理由にクラウドサービスからアプリケーションやデータをオンプレミスインフラへ戻す「オンプレミス回帰」の動きが広がっている。
オンプレミス回帰が合理的な選択肢となることはあるが、企業が見落としやすい“落とし穴”やデメリットもある。オンプレミス回帰が失敗する要因を説明する。
オンプレミス回帰のデメリットは、クラウドサービスのメリットの裏返しだ。
例えば、企業がITインフラを早急に拡張する必要が生じたとき、オンプレミスインフラの場合は時間がかかることがある。機器の手配だけでも発注から納品までに時間がかかる可能性がある上に、データセンターのスペースを確保し、そこに機器を配置する必要があるためだ。設備投資の資金が不足しているケースや、他の優先事項に資金を使わなければならないケースもある。
オンプレミス回帰には想定外のコストがかかることがある。クラウドストレージから外部のインフラにデータを移動する際に発生する「エグレス料金」だ。こうした追加料金は盲点になりやすいが、近年はクラウドサービスベンダーがエグレス料金の透明性確保に努めており、オンプレミス回帰を検討する時点でコストを確認しやすくなっている。
コンサルティング企業/国際会計事務所KPMGの英国法人でクラウド担当責任者を務めるエイドリアン・ブラッドリー氏は「ほとんどの企業にとって、エグレス料金は大きな問題ではない」と話す。ただし数は少なくとも、実際にエグレス料金に悩んでいる企業にとっては深刻な問題だ。英国競争市場庁(CMA)は「顧客が他のクラウドサービスに移行する上で大きな障害となっている」と指摘している。
オンプレミスに回帰する企業は管理ツールやセキュリティ機能などのライセンスに予想以上の金額を支払う可能性がある。クラウドサービスでは通常、これらのコストは製品にバンドルされている。
人材確保も見落としがちなポイントだ。オンプレミスインフラを最適化できる人材が社内にいるかどうかが、オンプレミス回帰の成否を左右する要因になることがある。クラウドスキルに精通している人材が、オンプレミスインフラで通用するとは限らない。
「オンプレミス回帰が成功する企業はITスキルが成熟している傾向にある」とブラッドリー氏は指摘する。こうした企業には、クラウドサービスとオンプレミスインフラを横断する形で最適な技術を採用し、どうすればコストを適正な額にできるのかを分析するスキルがある。
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