クラウドサービスの利用拡大に合わせて利用が広がってきた「Ceph」。なぜ広くCephが使われるようになったのか。その背景にある事情と、各ベンダーが提供している商用ツールを紹介する。
「Ceph」はデータセンターで広く採用されているオープンソースの分散ストレージソフトウェアだ。クラウドサービスの利用拡大やデータ増大の傾向が顕著になる中で、Cephの採用は広がってきた。Cephは従来のストレージシステムにあった幾つかの課題を打破した点で、革新をもたらした存在だと言える。
さまざまな企業がCephを採用している。その背景にあるのは、クラウドサービスの利用拡大と同時に、ITリソースの管理方法やアプリケーションの展開方法が変化したことだ。企業はCephを採用することで、従来型のストレージシステムで課題となるスケーラビリティ(拡張性)のボトルネックを解消できる。スケーラビリティがあるCephは、クラウドインフラに向いている。
データ量が増加するにつれて、スケーラビリティはますます重要になってきている。データの大部分はテキストファイルや画像、動画といった非構造化データとなっており、そうした非構造化データが、データ量増加が加速する主な要因となっている。機械学習などのAI(人工知能)技術の活用が広がる中では、増大するデータを蓄積することが欠かせなくなっている。
CephなどのSDS(ソフトウェア定義ストレージ)を使うことで、データ量の増大に対処するためのスケーラビリティに優れたストレージアーキテクチャを設計することができる。SDSの運用に「IaC」(Infrastructure as Code:コードによるインフラの構成管理)の手法を取り入れれば、インフラ管理の作業を自動化することができる。
OSSであるため、無償で利用できることや、自社のニーズに合わせてカスタマイズして利用できることが企業にとっての大きなメリットになる。
企業はさまざまな用途でCephを実装している。例えば、企業は以下のような目的で「Ceph Storage Cluster」(Cephで構成した分散ストレージシステム)を選択している。
Cephの課題の一つになるのが、実装の複雑さだ。必要な知識を持つ人材がいない場合、セットアップと管理の際に問題に直面する可能性がある。慎重な計画なしで実装すると、アプリケーションの動作に支障が生じたり遅延が発生したりする問題に直面する可能性がある。
一部のユーザー企業は、他のSDSと比較するとCephではコミュニティーからのサポートが不足していると指摘する。ドキュメントに一貫性が欠けていたり、古くなっていたり、不足があったりするとの声もある。重要なストレージシステムをCephで構築した後にこういった課題に直面すると、アプリケーションに重大な影響が及ぶ可能性がある。
Ceph Storage Clusterが高いパフォーマンスを発揮するためには、適切なネットワーク構成が不可欠だ。そうしたネットワークの構築に多くの時間と人的リソースを割く必要があることも課題となる。
前述の通りCephは無償だが、実装の複雑さと管理作業の負担を軽減するために、商用版のCephを選択することもできる。実際にさまざまな企業が商用版を選んでいる。
複数のベンダーがCephに基づく商用製品を提供している。独自のCephディストリビューション(配布パッケージ)を提供する、代表的な3ベンダーの製品は以下の通り。
他にもSoftIronやMirantis、SUSE、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)のOSSプロジェクト「Rook」、Aspen Systems、Virtunet Systemsなどがある。
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