AIモデルに望ましい回答を効率的に出力させるプロンプトを作るための技術に「プロンプトチェーニング」がある。プロンプトチェーニングを使うメリットや、使うに当たっての課題を紹介する。
大規模言語モデル(LLM)を使ってタスクを実行する際に、プロンプト(情報生成のための質問や指示)を小さなプロンプトに分割する手法が「プロンプトチェーニング」だ。プロンプトチェーニングを使うと具体的に何ができるようになるのか。どのような場面で有用なのか。プロンプトチェーニングを使うに当たっての課題と併せて紹介する。
プロンプトチェーニングを使うメリットには以下がある。
問題や質問を複数の段階に分解することで、LLMの出力に対してフィードバックや指示をする機会を増やすことができる。これによって、LLMの出力をより細かく調整でき、出力の精度を高めることが可能だ。
ブレインストーミングといった、参加者が具体的な答えを出す必要がなく、自由に考える創造的タスクで効果を発揮する。LLMとの対話を通じて有望なアイデアを抽出できる可能性がある。
適切ではない出力があった場合に、改めてLLMに問題を解釈せたり出力を求めたりするよりも、プロンプトチェーニングを使った方が効率的な場合がある。特定の部分だけを改善するように指示することで、良い出力を効率的に得ることが可能だ。
プロンプトチェーニングを使うことで、LLMが複雑な質問やタスクを分割して処理できるようになる。複雑なタスクを1つずつ処理でき、効率的に望ましい出力内容を得やすくなる。
プロンプトチェーニングは、LLMのトレーニングやファインチューニング(特定用途向けの小規模データセットを用いた調整)にも活用できる。プロンプトチェーニングによる反復的なフィードバックを基にLLMをトレーニングすることで、質の高い正確な出力を生成する能力を向上させることができる。
メリットだけではなく、プロンプトチェーニングには課題もある。
プロンプトチェーニングでは複数のプロンプトを連続して使用するため、プロンプトが増えるほど、各プロンプトを適切に管理するのが難しくなる。LLMはどのプロンプトがどのステップに対応しているのかを把握しにくくなり、プロンプト間の関連性を記憶できなくなる恐れがある。その結果、一貫性がない、あるいはプロンプトの指示とは無関係な出力を生成しかねない。
一連のプロンプトは最初のプロンプトの内容に依存する。最初のプロンプトが問題を明確に定義できなければ、LLMの出力はエンドユーザーの目的に合致しない可能性が高まる。
プロンプトチェーニングでは、LLMが複数のプロンプトを順番に処理するため、入力回数が増える。特にプロンプトエンジニアがLLMの回答を調整、最適化するためにプロンプトチェーニングを使う場合は、長い時間と労力が必要だ。
有料版のLLMを使用する場合、複数のプロンプトを入力することでLLMの使用時間が増加するため、利用料金が増大する恐れがある。
次回は、プロンプトチェーニングの具体的な実行手順と用例を紹介する。
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