Column
ROIインサイダー:TCO指標を検証する
一般に会社のIT部門では、ハード/ソフトの初期購入費が低いという基準だけで購入を決定するケースが多い。だがその後の運用管理費などのコストは、直接経費全体の約70%に達することも少なくない。“安物買いの銭失い”を防ぐ指標がTCOなのだ。
TCOは、IT部門が購入判断を行う上で非常に有用な会計手法であり、個々の購入のトータルな経済的インパクトを考慮することによって、適切な判断を下すことができる。TCO分析では、資産の総合コストを評価するに当たり、変更費用や日常の運用管理費、管理/サポートの人件費などのコストが考慮される。こういったコストは、資産保有にかかわる直接経費全体の約70%という驚くような金額に達することも少なくない。
だが、一般に会社のIT部門では、ハードウェア/ソフトウェアのコストが低いかどうかという基準だけに基づいて、購入を決定するケースが多いのではないだろうか。ほとんどの企業では、資産を管理/サポートするための継続的な年間経費よりも、購入価格の方を重視しているからだ。
TCO指標は、コンピューティングの真のコストを測定し、上記のような問題を浮き彫りにする目的で開発された。TCOが提唱される前は、多くのIT幹部やソリューションプロバイダーは、コンピューティングの真のコストに気付いていなかった。TCOは、この問題をあらゆる人々に厳しく突きつけたのである。
TCO(総所有コスト)は、資産の使用ライフサイクル全体を通じて、その購入、使用、管理および廃棄にかかわる費用の総計として定義される。
TCOは、IT部門が購入判断を行う上で非常に有用な会計手法であり、個々の購入のトータルな経済的インパクトを考慮することによって、適切な判断を下すことができる。この考え方の根底には、最も安い購入価格を選択することが長期的には高価なものにつく可能性があるという認識がある。TCO分析は、ITチームがさまざまな製品や選択肢を比較し、ライフサイクル全体でとらえた場合に最もコストが低いソリューションを選択することを可能にする。
TCO分析では、資産の総合コストを評価するに当たり、変更費用や日常の運用管理費、管理/サポートの人件費などのコストが考慮される。こういったコストは、資産保有にかかわる直接経費全体の約70%という驚くような金額に達することも少なくない。人件費およびそれに相当するコストが、総合コストの56%以上を占めることも多い。
驚くことに、サーバおよびクライアントコンピュータのコストは、ITコストの平均総額の15%にすぎず、購入ソフトウェアのコストはわずか18%である。だが、一般に会社のIT部門では、ハードウェア/ソフトウェアのコストが低いかどうかという基準だけに基づいて、購入を決定するケースが多いのではないだろうか。ほとんどの企業では、資産を管理/サポートするための継続的な年間経費よりも、購入価格の方を重視しているからだ。
同様に、コンピュータ資産にも隠れたコストが含まれていることがある。例えば、セキュリティ問題やサービスレベルの低さなどは、ダウンタイムの発生やビジネス機会の喪失の原因となる可能性がある。ダウンタイムを増やし、セキュリティリスクを高めるような不適切な購入判断は、ハードウェア/ソフトウェアの価格とIT運用管理の人件費の総額よりも高いものにつく可能性も十分にある。
TCO指標は、コンピューティングの真のコストを測定し、上記のような問題を浮き彫りにする目的で開発された。TCOのルーツは1980年代後期にさかのぼることができる。当時、分散型システムが盛んに導入された。これは、従来のデータセンター型コンピュータシステムと比べてはるかに安価であると考えられたからである。現実には、初期コストに関して言えば圧倒的な優位性があったものの、総合的な運用コストや隠れたコストも併せて考えれば、優位性はずっと低かったのである。
これらの研究、特にTCOの父と呼ばれる調査会社ガートナーのビル・カーウィン氏による研究の結果、PCハードウェア/ソフトウェアの購入価格は、資産の総所有コストの15%を占めるにすぎないことが明らかになった。資産の使用寿命全体で考えた場合、管理とサポートのコストおよび隠れたサポート/ダウンタイムコストが、総合コストの85%を占めるのである。2000~3000ドルの価格のPCを運用すると、実際には年間8000ドル以上のコストが掛かる可能性があるのだ。TCOが提唱される前は、多くのIT幹部やソリューションプロバイダーは、コンピューティングの真のコストに気付いていなかった。TCOは、この問題をあらゆる人々に厳しく突きつけたのである。
アナリストにとっては、システムの管理性と可用性の重要性を強調する上で、TCOは非常に効果的なツールとなった。ソリューションプロバイダーにとっても、ITプロフェッショナルにとっても、これらのコストを削減することが重要な課題となった。管理が容易なシステムであれば、システム管理およびサポートのコストに加え、隠れたサポートコストを削減することができる。システムの信頼性が高ければ、サポートコストをさらに削減するとともに、ダウンタイムをなくすことができる。TCOを通じて、IT部門は購入コストだけに目を向けるのではなく、管理性や隠れたコストにもっと注目しなければならないことを学んだのである。
しかし、TCOに対しては批判もあった。ビジネス目標の達成に貢献する資産の価値を過小評価しているというのである。多くの人が言うように、TCOを下げたいのであれば、皆、ペンとノートを使えばいいのだ。そうすればTCOはわずか1.5ドルだ。これに対し、一般的なWindowsコンピュータシステムの推定TCOは年間7000ドルにもなるのだ。購入予定資産のビジネス的メリットを無視し、コストだけを考えるのであれば、そういった議論も成り立つ。
では、TCOという指標はどんなケースに有効なのだろうか。まず、ITチームがどのソリューションを検討すべきか判断に悩む場合には、現在のコストについて簡単なTCO分析を行うことで、どの部分のコストが高すぎるのかといったことや、あるいはサービスレベルの問題がコスト高を招いているといったことを把握することができる。自社の現在のTCOと同業者や競合相手のTCOを比較できれば、さらに効果的だ。コストの高さやサービスレベルの低さを具体的に把握できれば、ITチームはさまざまな手法や機能、スキルなどの改善に関して優先順位を決定することができる。
ITチームの間で、ビジネスアプリケーションなどといった特定のソリューションが必要だという合意に達し、同程度のメリットを実現する類似ソリューションが幾つか存在するような場合、これらのソリューションのコストを直接比較し、その使用寿命にわたって最も費用効果に優れているのはどのソリューションであるかを判定する際にTCO分析が役立つ。
TCOは、類似性のないソリューションを比較するには、あまり有効ではない。ベンダーの販促キャンペーンでは、同様のビジネスメリットや機能を提供するソリューションを比較することなしに、優位性を強調するためにTCOが用いられることが多いが、こういった場合のTCO指標はあまり信用できない。例えば、サーバのTCOに関するわれわれの調査では、比較される各ソリューションにワークロードが正確に対応していなかったり、必要なパフォーマンスとサービスレベルをサポートするのに最適な数のサーバ構成になっていなかったりすると、結果が20~40%、あるいはそれ以上に異なることもある。
TCO分析では、各ソリューションのすべてのコストを網羅した適切かつ包括的なコスト計算を行う必要もある。各種のTCO調査では、重要なコスト要因が見落とされ、包括的な勘定科目一覧表が用いられないため、変更コスト、管理/サポートの人件費、セキュリティのリスク、ダウンタイム、見えないサポートといった重要なコストが除外されることがよくある。
TCO分析が適切な判断を下すのに役立つ選択としては、次のようなものがある。
- コンピューティングプラットフォームおよびOS(Red Hat LinuxにするかMicrosoft Windows Server 2003にするか、ブレードかラックマウントか)
- データベースおよびアプリケーションプラットフォーム(OracleかMicrosoft SQLか)、社内開発するか製品購入するか
- 社内での運用管理か、マネージドサービスか、ホスティング型ソリューションか
コスト問題を洗い出すためのフレームワークを提供し、ITチームが、初期購入コストだけでなくライフサイクルを通じた支出に注目するのに役立つTCOは、ITに関して賢明な意思決定を下す上で極めて重要なツールなのである。
(この記事は2005年9月7日に掲載されたものを翻訳しました。)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
3
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
4
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
5
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
6
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
7
JSONをやめてPythonで送る トークン消費を約7割抑えるAIの設計
-
8
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
9
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
10
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー