IBMの電力/冷却問題の専門家ロジャー・シュミット技術理事に、水冷方式の可能性、エネルギー効率測定の指標などについて聞いた。
IT分野における電力/冷却問題の専門家たちが先日、フロリダ州オーランドで開かれた高密度コンピューティングに関するシンポジウムに集まった。そこで行った専門家とのインタビューの抜粋を2回にわたって掲載する。今回はIBMの技術理事、ロジャー・シュミット氏へのインタビュー。水冷方式の利点やエネルギー効率測定の指標などについて聞いた。
同氏によると、サーバに水冷方式が復活しようとしているという。かつて、メインフレーム導入企業の92%が水冷技術を利用していた状況の再来に備える必要があり、新規データセンターを建設するのであれば、液冷方式が普及した場合に備えて、冷却水用の配管も敷設しておくのが無難だという。
IT分野における電力/冷却問題の専門家たちが先日、フロリダ州オーランドで開かれた高密度コンピューティングに関するシンポジウムに集まった。そこで行った専門家とのインタビューの抜粋を2回にわたって掲載する。今回はIBMの技術理事、ロジャー・シュミット氏へのインタビュー。水冷方式の利点やエネルギー効率測定の指標などについて聞いた。
―― 今日のデータセンターには水冷方式が適しているのでしょうか。また、これはサーバの冷却に対する考え方を根本的に変えるものとなるでしょうか。
シュミット サーバに水冷方式が復活しようとしています。実際、すでに製品が出回っています。このオプションを提供しているITメーカーは、少なくとも3社存在します。データセンターでの採用が増えるにしたがって、この冷却方式は簡素化されていくでしょう。この方式は根を下ろし始めたと思います。今後、IT関連のカンファレンスで、この話題をめぐる論議が盛んになるでしょう。きっとITメーカー各社は、さまざまな冷却液の可能性を検討していることでしょう。プロセッサの消費電力は、短期的な低下傾向はあっても、今後も上昇を続けると思います。液冷方式を採用することでプロセッサのパフォーマンスの大幅な向上が可能になるのであれば、同方式が普及するでしょう。
水冷式メインフレームが登場した1964年、大々的なユーザー教育が行われました。ユーザーに違和感なく受け入れられるのに3年ほどかかったと思います。水冷技術が頂点に達した1988年には、メインフレーム導入企業の92%が水冷技術を利用していました。このような状況の再来に備える必要があります。新規データセンターを建設するのであれば、将来、液冷方式が普及した場合に備えて、冷却水用の配管も敷設しておくのが無難でしょう。工事はそれほど難しいものではありません。
液冷方式が普及するかどうかは、プロセッサのパフォーマンスに掛かっています。これ以上の消費電力の増加を抑える魔法のような方法が見つかれば、たぶん液冷方式は必要とされないでしょう。しかしユーザーは、可能であればより高いパフォーマンスを手に入れたいと思うものです。業界がパフォーマンスの向上を推進し続けるのであれば、液冷方式を検討することになるでしょう。液冷方式を好まないというユーザーもいるでしょうが、それはそれでかまいません。そういったユーザーには、空冷方式の製品を提供する必要があるでしょう。
―― 今回のカンファレンスに参加したデータセンター管理者にとって最大の問題は何ですか。
シュミット わたしの考えだけなく、各種の調査結果を見ても、熱と電力が最重要課題であることは明らかです。わたしが目にした調査の結果および顧客からのフィードバックから判断すると、管理者たちはとても苦労しています。5年前を振り返ると、当時は30キロワットのラックなどはなく、5キロワットのラックを使っていたのです。ユーザーはITメーカーから購入したラックを設置して、これを冷却するだけでよく、何も問題はありませんでした。しかし今日では、ラックを購入したら、設備担当スタッフがこれを配備する必要があり、それからIT機器の電源と冷却をどうするかという問題で苦労することになります。20~30キロワットのラックともなれば、電源と冷却をめぐる技術的課題に対処する必要があります。データセンターにラックを設置すれば、それで終わりというわけにはいかないのです。コンサルタントやITサービス部門の手助けも必要です。
今日、データセンターの設備担当スタッフは、大きなプレッシャーを受けています。カンファレンスには冷却装置のベンダーも多数参加していますが、個々のデータセンターに適したソリューションを選択するのは容易なことではありません。設備担当スタッフは、あらゆる方向から攻められています。この状況はちょっと恐ろしいくらいです。今回のようなカンファレンスは、何らかの方向性を示すのに役立つでしょう。
―― サーバベンダーが広範なプラットフォームのエネルギー効率を測定するための指標は登場するでしょうか。
シュミット これは業界が3カ月ほど前から調査を開始したばかりの分野であり、さまざまな団体が1ワット当たりのパフォーマンスや単位面積当たりのパフォーマンスなどの指標を策定しようとしています。おそらく、あらゆるIT企業がこの取り組みに注目していると思います。最終的には何らかの指標が登場するでしょう。しかし主要な問題は、ユーザーが何を求めているのかということです。ユーザーがうんざりするくらい細かいグラフを描くことは可能ですが、それよりも、ユーザーが本当に求めているのは何であり、評価やTCO(総所有コスト)の把握に役立つのは何であるのかということが重要なのです。
ユーザーが何を望んでいようとも、ITメーカー各社はそれをサポートするでしょう。これはすべての人々に関係する問題であり、ユーザーはユーザーで集まって要求を取りまとめ、われわれに提案すべきです。いずれ問題が整理されるでしょうが、すべての人々に受け入れられるソリューションが出てくるまでには、1年ほど議論する必要があるでしょう。その中で、ユーザーがデータセンターの計画を策定するのに役立つ指標が生まれると思います。これは興味深い問題であり、業界は数年前の時点でこの問題に注目すべきでした。
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