ブレードサーバの一長一短Column

近年注目を集めているブレードについて、その長所短所、仮想化のプラットフォームとして適しているか、などを見ていく。

2006年07月06日 08時30分 公開
[TechTarget]

 ブレードサーバは現在、その利便性やIT費用の低減といった潜在的なメリットから、サーバハードウェア分野で注目の技術となっている。その一方で仮想化の導入という大きな流れにますます多くの企業が加わる中、ブレードが仮想化のプラットフォームとして優れた選択肢かどうか、判断が求められる場合が増えている。

 ブレードサーバは絶大な威力を発揮する場合もあれば、実際に得られるメリットがうたい文句ほどではない場合もある。本稿では、ブレードのメリットとされる導入の容易さ、省スペース、配線の簡素化、総運用コストの削減のそれぞれについて検討を加える。

 ブレードサーバは現在、その利便性やIT費用の低減といった潜在的なメリットから、サーバハードウェア分野で注目の技術となっている。その一方で仮想化の導入という大きな流れにますます多くの企業が加わる中、ブレードが仮想化のプラットフォームとして優れた選択肢かどうか、判断が求められる場合が増えている。

 ブレードサーバは絶大な威力を発揮する場合もあれば、実際に得られるメリットがうたい文句ほどではない場合もある。本稿では、ブレードのメリットとされる導入の容易さ、省スペース、配線の簡素化、総運用コストの削減のそれぞれについて検討を加える。

導入

 ブレードの売り物の1つは、従来のサーバよりも小型で、シャーシに集約して格納できることだ。理屈上、1ダースのブレードサーバは、1ダースのタワーサーバ、ラックサーバ、あるいはメインフレームサーバよりも導入や管理が容易で、ランニングコストも低い。

 ジョン C.リンカーン病院(総ベッド数440床、職員数4000人)のITマネジャーは、ブレードの導入のしやすさに着眼し、クリアキューブテクノロジーの仮想化ソフトと組み合わせて使用するためにブレードを採用した。

 「われわれはめまぐるしく変化するIT環境を運用しており、それに対応できるITソリューションを必要としている」と同病院のCIO、ロブ・イスラエル氏は語る。ブレードはコンパクトでプラグ&プレイ設計となっているため、数時間で導入できるが、ほかのサーバは構成に1~2日かかる場合もある。

スペースと配線

 ブレードは、オフィススペースのコストが高い場合にうってつけだ。「データセンターが過密状態になっている企業では、ブレードは理にかなった選択肢だ」と市場調査会社イルミネータの主席ITアドバイザー、ゴードン・ハフ氏は語る。ブレードを使えば、サーバの設置スペースを節約でき、サーバとストレージシステムや企業ネットワークとの接続に必要な配線の量も減らすことができる。

 イスラエル最大の携帯電話会社セルコムのITスタッフは、ブレードサーバのこうしたメリットを享受している。同社は従業員数が約3000人で、4つのデータセンターで1200台近くのサーバを運用しており、同社のコンピューティング要件は厳しい上に流動的だ。

 「われわれのQA(品質保証)部門や開発部門は、しょっちゅう新しいサーバを要求していた。その大部分は、テスト用の隔離環境として使うために一時的に必要になったものだった」とセルコムのシステム専門家デビッド・バラク氏は語る。

 同社のスタッフは新しいサーバの要求をぎりぎりになってから出すことが多く、「明日の朝までに準備してほしい」といった依頼がしばしばあった。そこでセルコムは、新しいサーバを迅速に用意するためにヴイエムウェアの仮想化ソフトを導入した。当初はラックサーバを利用していたが、ブレードに移行することで、配線の手間を軽減し、設置スペースを削減することができた。

総コスト

 多くの人は、ブレードの利点は、導入の容易さと便利なフォームファクタだけにとどまらないと考えている。ブレードシステムはほかの選択肢よりコストが安いというのが大方の見方だ。しかし、これは誤解かもしれない。

 「『小さい方が安い』という考えはコンピュータハードウェアにはあまり当てはまらない」とガートナーのリサーチディレクター、ジェーン・ライト氏は指摘する。「ノートPCを見ても、大抵デスクトップシステムよりも値段が高い」

 ブレードは魅力的な価格で販売されているが、通常、システムを格納するシャーシの価格はその中に含まれていない。このため、ブレードは高価な選択となる場合がある。

 「シャーシのスロットを半分くらいしか使わない場合は、ブレードのコストは従来のサーバよりも割高になってしまうだろう」とヴイエムウェアのデータセンタープラットフォーム製品部門の製品管理担当ディレクター、パトリック・リン氏は語る。

 ブレードは、発熱や消費電力の管理に関しても、同じように一筋縄ではいかないコスト問題を考慮しなければならない。複数のブレードをシャーシに集約し、冷却ファンなどをシャーシ内で共有することで、こうしたハードウェア要素を効率的に利用できることが期待される。だが、このメリットが得られるとは必ずしも限らない。ブレードでは部品が高密度に実装されるため、発熱が多くなるからだ。

 「第1世代のブレードでは、稼働中に過熱してダウンしてしまうという問題が起こる場合があった」とガートナーのライト氏は語る。「最近では、ベンダーはこうした問題を克服しているようだ」

 解決策として、より高度な冷却システムが開発されたケースもある。冷却は当然必要だが、こうした新しい冷却システムは、ほかのサーバの冷却技術よりも多くの電力を必要とするかもしれない。このため、ブレードの導入に伴って、企業がデータセンターの電力設備を見直す必要が生じる可能性もある。ジョン C.リンカーン病院では、まさにそうした状況が起こった。

 「ブレードサーバを導入したところ、データセンターの電力容量を2倍にしなければならなくなった」とイスラエル氏は語る。

 ブレードのもう1つの悩ましい問題は、単体ではほかのサーバよりも拡張性が低いことだ。ブレードサーバは一般に、ラックサーバよりもメモリスロットが少なく、このことは、仮想化環境の運用に利用する上で大きなネックになる、とセルコムのバラク氏は語る。

人気はまだ続く

 ブレードにはこのような一長一短があるが、その販売台数と売上高は、サーバハードウェアのほかの選択肢よりも急速に伸びている。この傾向は向こう1~2年間続く見通しだ。ガートナーのライト氏は、ブレードは、当初のような誇大宣伝は見られなくなってきており、企業はブレードサーバの長所と短所を理解しつつあり、そうした中で導入企業が増えていると語る。

 「ブレードは万能薬ではないが、さまざまな用途に非常に適している」と同氏は話している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SATA接続HDD」が変わらず愛される理由とは

HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

鬩幢ス「隴主�蜃ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隰ィ魑エツ€鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�スPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ブレードサーバの一長一短:Column - TechTargetジャパン サーバ&ストレージ 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

TechTarget鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ク鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�」鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス雜」�ス�ヲ 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...