Column
計画を失敗するということは、失敗を計画するということ
コンサルタント歴30年の筆者によると、昔から変わらないプロジェクト失敗の要因が幾つかあるという。
毎日目覚めると同じ日、という映画があったが、プロジェクトの失敗もそれと似た感じではないだろか?
私は1975年にコンサルタント業を開始したが、開業当初、私に課せられた任務の大半は、十分に計画を練らないまま最新技術に移行したり、ベンダーが提案するコスト削減の見通しをうのみにしたり、経営陣の中途半端なアイデアに乗ったりといったことが原因で生じた各種の問題の解決に関するものだった。それから30年以上がたった現在も、プロジェクトの失敗を決定付けてしまうような同様のミスに遭遇することがある。ここでは、その例を幾つか紹介しよう。
計画が不十分なアップグレード
あるオフィス製品ベンダーの販売担当者は、新しいコピー/FAX/スキャン技術の導入を伴うプロジェクトを、ある企業のCFOに提案した。販売担当者は、このアップグレードによって印刷コストを3800万ドル節約できるはずだと主張した。このベンダーのコストモデルでは、アップグレードにより、1コピー当たり4.7セントという現行のコストを2.8セントにまで下げられる計算だった。CFOは当然ながら喜んだ。だが、その後、IT部門のプロジェクトマネジャーが独自にコスト調査を行ったところ、現行の1コピー当たりのコストは1.9セントで、新しい機器を導入した場合の1コピー当たりのコストは3.1セントになるとの結果が判明したという。つまり、このプロジェクトを進めれば、何百万ドルのコスト削減どころか、余分に1800万ドルものコストが掛かってしまうということだ。
プロジェクトマネジャーはさらに、新しい機器がセキュリティの問題ももたらすことに気付いた。新しいマシンには着脱式ディスクドライブが採用されているため、保守スタッフが社内データに加えて、そうしたドライブにもアクセスすることになるからだ。この会社は賢明にも、このプロジェクトを中止した。一方で、プロジェクトのキャンセルを知った現行の機器サプライヤーは、それまでの価格モデルでの契約更新交渉にあまり協力的でなくなり、最終的には、600万ドルの値上げという結果に終わった。
ライバルとの競争に我を忘れる
ある電子機器メーカーのCEOは月例の幹部会議で、「主要な競合他社がWebへの移行を進めるなか、自社は後れを取っている」と指摘した。この会議のあと、インフラ管理ディレクターはあるWeb設計ベンダーの販売担当者と話をした。この販売担当者によれば、競合他社はオンライン直販への積極的な移行を計画しているとの話だった。その後、数日もたたないうちに、このインフラ管理ディレクターはこの販売担当者および自社のITプロジェクトマネジャーとともに、WebプロジェクトをCIOに提案した。そして、CIOはそのプロジェクトをCFOに提案。CFOはそのプロジェクトを承認し、4カ月のタイムフレームと450万ドルの予算を設定した。
結局、システムのオンライン化は6カ月の時間と620万ドルのコストをかけて実現した。計画よりもスケジュールが遅れ、コストが超過したにもかかわらず、最初は誰もがワクワクしていた。だが、その後、すべてが崩壊した。同社の行為は自分たちのビジネスに競合しているとして、なじみの小売業者から怒りをかったのだ。問題はその後も深刻さを増し、CEOのところまで話が行った。CEOはオンラインでの販売価格を小売業者の販売価格よりも10%高くするよう提案した。そして、この決定は多くの顧客をいら立たせた。
CIOはインフラ管理ディレクターを首にしようとし、インフラ管理ディレクターは実際、プロジェクトマネジャーを首にした。そして結局、CFOがCIOとインフラ管理ディレクターを首にし、プロジェクトを断念した。結局、この件での同社の損失は1600万ドル以上に及んだ。
上記の2例は、いずれも計画を入念に練らなかったことによるものだ。両社とも、ベンダーが提案してきたROIの見通しをうのみにし、概念構築のステップを省いたため、問題点を早い段階で明らかにすることができなかった。ふと思い付いたアイデアをすぐにも実行に移したいという衝動は、相も変わらず、多くのプロジェクトの落とし穴になっている。
時とともに変わるものもあれば、時を経ても変わらないこともある。だが、哲学者のジョージ・サンタヤナが言っているように、「過去から学ばない人は、それを繰り返す運命にある」。
本稿筆者のゴパール・K・カプール氏はカリフォルニア州サンラモンを拠点とするプロジェクト・マネジメント・センターの所長。著書に「Project Management for Information, Technology, Business and Certification」がある。
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