AIアプリケーションの開発を成功させる上で、プログラミング言語の選択は非常に重要な要素となる。AI分野で実績のあるプログラミング言語を紹介する。
数多くのプログラミング言語が存在する中で、プロジェクトの目的や特性に応じて適切にプログラミング言語を選ぶことが重要だ。本稿は、機械学習などの人工知能(AI)技術を活用するプロジェクトに最適な10個のプログラミング言語を紹介する。
「Python」は、AI技術やデータ分析といった領域で人気のある言語の一つだ。ソースコードが人にとって理解しやすい高水準言語で、「C++」と比べれば実行速度は遅い。シンプルさと汎用(はんよう)性の高さといった魅力がPythonの弱点を補っている。
Pythonは、学習が比較的容易で、読みやすく、保守もしやすいため、迅速なプロトタイピングに最適だ。感情分析や自然言語処理に広く使用されており、広範なライブラリ(プログラムの部品群)やフレームワーク(プログラム開発に必要な機能をまとめた枠組み)と互換性がある。例えば、深層学習(ディープラーニング)用の「PyTorch」「TensorFlow」「Keras」、機械学習アルゴリズム用の「scikit-learn」、データサイエンス用の「NumPy」「pandas」、言語データ用の「Natural Language Toolkit」などだ。
C++は、フィールド(データ)とメソッド(処理)をまとめた「オブジェクト」をプログラムの基本要素とするオブジェクト指向言語だ。高水準言語としても、ソースコードが機械語に近い「低水準言語」としても使用できる。細かな制御が可能で処理効率に優れているものの、開発者はソースコードの記述と保守に多大な労力を注ぐ必要がある。
適切に設計されたC++プログラムは、効率的なコンパイルおよび処理実行が可能なため、パフォーマンスが重視されるAIタスクには格好の選択肢となる。AI向けのC++ライブラリには、深層学習向けの「Caffe」、ニューラルネットワーク向けの「DyNet」、汎用機械学習向けの「Shogun」などがある。
「Java」もオブジェクト指向の汎用言語であり、構文はやや複雑だ。高水準言語で、C++ほど低水準の制御は必要としない。Java仮想マシン(JVM)は移植性に優れており、JITコンパイルによって一定の処理効率を提供する。Javaはスケーラビリティ(拡張性)に優れ、「Hadoop」や「Spark」のようなフレームワークを使って、大規模なデータ処理に適している。
Javaには機械学習に特化したライブラリもあり、例えばデータ分析や予測モデリング向けの「Weka」、分類、回帰、クラスタリングといったタスク向けの「Massive Online Analysis」(MOA)などがある。
「R」は、豊富な関数を備えたプログラミング言語であり、データの分析や可視化といったタスクを扱うデータサイエンス領域で人気を集めている。主に統計解析や機械学習タスクで強力なツールとして使用される。API(アプリケーションプログラミングインタフェース)やUI(ユーザーインタフェース)の開発では他の言語が使われる傾向にある。Rにはさまざまな機械学習やデータ可視化向けのライブラリがあり、例えば予測モデリング向けの「caret」、ランダムフォレストアルゴリズム向けの「RandomForest」、データ可視化のための「Plotly」などが挙げられる。
「Julia」はオープンソースの高水準言語であり、複雑な線形代数や数理シミュレーションなどの科学計算向けに設計されている。Pythonに似た直感的な構文を持ち、学習の容易さや優れた効率性が特徴で、実行時にプログラムをコンパイルする「JIT(Just-in-Time)コンパイラ」(「実行時コンパイラ」とも)による高速な処理が可能だ。
Juliaは、数値の正確さが求められる機械学習やデータ分析タスク、さらには複雑性を伴う作業に適している。分散型コンピューティングや並列処理が可能で、大規模データセットの処理や計算を効率よく実施できるため、クラウド環境でのデプロイ(配備)にも有用だ。Juliaでは、汎用機械学習向けの「Flux.jl」、統計モデリングやデータ分析向けの「JuliaStats」、高度な計算タスク向けの「DifferentialEquations.jl」など、幅広い機械学習ライブラリやフレームワークが提供されている。
次回は引き続き、AIプロジェクトに最適なプログラミング言語を紹介する。
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