ソフトウェア開発の歴史を作った「ウオーターフォールの大誤解」とは?常にアジャイルが正しいとは限らない【前編】

ウオーターフォール型開発は、実はソフトウェア開発の“ある誤解”から生まれた開発手法だ。アジャイル型開発の考え方も踏まえて、ウオーターフォール型開発が生まれた歴史を振り返ってみよう。

2024年06月28日 08時00分 公開
[Matt HeusserTechTarget]

関連キーワード

アジャイル | 開発プロセス


 「ウオーターフォール」型開発は、開発工程を上流から下流へと順番に進める手法だ。長年にわたってさまざまな組織で採用されてきたこのウオーターフォール型開発は、ソフトウェア開発の“ある誤解”から生まれたものだった。それは、小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」型開発とも関連がある。どういうことなのか。ソフトウェア開発の歴史を振り返ってみよう。

ソフトウェア開発の歴史を作った「ウオーターフォールの大誤解」

 1970年、コンピュータ科学者のウィンストン・ロイス氏は学術論文「Managing the Development of Large Software Systems」を発表した。

 ソフトウェアのバージョン管理が普及していなかった時代に発表されたこの論文は、大規模な開発チームでのソフトウェア開発の進め方を提案するものだ。開発者が設計書を作成する際に、共同作業で使うインタフェースを指定することで、チーム内の意思疎通が円滑になり、混乱が起きにくくなり、各開発者は作業を進めやすくなる。

 残念ながら、ロイス氏の提案は意図した通りには広まらなかった。同氏が描いたソフトウェア開発管理のビジョンは、アジャイル型開発に近いものだったと著者は考えている。一方で、同氏が示した「Cascading relay of responsibilities」(訳:連なった小さな滝のような責任の連鎖)の図は、偶然にも「ウオーターフォール」という名称を生むきっかけとなる。多くの人がそれを文字通りに受け取り、「厳格かつ段階的な開発プロセスを奨励するもの」と解釈した。

 後にロイス氏は、誤って広まったウオーターフォール型開発モデルのリスクについて警告しているが、結果的にそのまま普及することとなった。


 後編は、ウオーターフォール型開発の課題を解消するための3つのステップを紹介する。

TechTarget発 エンジニア虎の巻

米国TechTargetの豊富な記事の中から、開発のノウハウや技術知識など、ITエンジニアの問題解決に役立つ情報を厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news079.jpg

CMOが生き残るための鍵は「生産性」――2025年のマーケティング予測10選【中編】
不確実性が高まる中でもマーケターは生産性を高め、成果を出す必要がある。「Marketing D...

news023.jpg

世界のモバイルアプリ市場はこう変わる 2025年における5つの予測
生成AIをはじめとする技術革新やプライバシー保護の潮流はモバイルアプリ市場に大きな変...

news078.png

営業との連携、マーケティング職の64.6%が「課題あり」と回答 何が不満なのか?
ワンマーケティングがB2B企業の営業およびマーケティング職のビジネスパーソン500人を対...