常にアジャイルが正しいとは限らない【後編】
アジャイルは無理でも「脱ウオーターフォール」ならできる“3つのステップ”
「ウオーターフォール」型開発から「アジャイル」型開発への移行を考える企業はある。だが、開発手法をいきなり切り替えるのは難しい。ウオーターフォール型開発の課題を解決する方法はあるのか。
「ウオーターフォール」型開発は、川の流れのように上流から下流の工程に順番に開発を進める開発手法だ。長年にわたり、さまざまな組織で採用されてきた手法だが、柔軟性(変化に迅速に対処する能力)の低さが課題となっていた。
柔軟性を高める開発手法として、小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」型開発に注目する企業はある。しかし、慣れ親しんだ手法からの脱却と、新しい手法への移行は容易ではないし、必ずしも正しいとは限らない。
企業が、ウオーターフォール型開発の課題を解決するために実践できる方法とは。ウオーターフォール型開発の基本と併せて解説する。
「脱ウオーターフォール」に向けた3つのステップ
併せて読みたいお薦め記事
連載:常にアジャイルが正しいとは限らない
開発手法に関する記事
ウオーターフォール型開発は、そのシンプルで順序立った管理スタイルが評価され、企業の間で広く使われ続けてきた。そのため、ウオーターフォール型開発からアジャイル型開発への移行は容易ではない。特に大企業の上層部は安定を好む傾向があるため、既存の手法の見直しには消極的だ。
一方で、ウオーターフォール型開発の体制を生かしつつ、改善に向けたアプローチを取り入れることはできる。以下に具体的なステップを3つ紹介する。
1.計画段階で慎重なアプローチを取る
ウオーターフォール型開発では最初にスケジュールを確定させる。しかし、開発途中で重大な問題が見つかった場合、ソースコードを書き直したり新しく作成したりする必要がある。最初に厳格なスケジュールを敷いてしまうと、対処する時間がなくなってしまう。
ソフトウェアアーキテクチャとエンジニアリングの先駆者であるフレデリック・ブルックス氏は、「セカンドシステム症候群」についても言及している。これは、最初に開発したシステムが成功した場合、次に開発するシステムが、過度な機能追加といった要因から複雑化しやすい傾向のことだ。
ブルックス氏は著書「The Mythical Man-Month」(邦題:人月の神話)の中で、プロジェクト開始時は以下2つを実践し、まずシステムの挙動を試してから、本格的なソースコード作成に移るよう推奨している。
- モックアップ
- 動かないが外観が同じ模型を作り、製品のデザインを視覚的に確認する。
- ラピッドプロトタイピング
- 本物と同様に動く簡易的な試作品を作ること。ユーザーのフィードバックを早期に得て、製品の設計や機能の改善に役立てる。
2.スパイクを実践する
スパイクとは、シンプルな試作品を作成し、技術的なリスクを評価する手法だ。新しいソフトウェアを構築したり機能を追加したりする際、初期段階で簡単な概念実証(PoC)を実施することで、プロジェクトの精度向上につなげることができる。
以下にスパイクの具体例を挙げる。
- 異なるシステム間のデータ通信
- 異なるOSである「UNIX」と「Windows」は直接の通信が難しい。スパイクとしてネットワークプロトコルやファイル共有のさまざまな設定を試すことで、両システムがデータ通信可能か確認できる。
- レガシーシステムとシステムの互換性
- レガシーシステムは、最新の技術と互換性がない場合があるため、両者をつなぐAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)ラッパーが必要だ。スパイクで簡単なAPIラッパーを作成すれば、その有効性を確認できる。
- UX(ユーザー体験)向上
- Webページの新しいデザインや機能を試作し、その使用感やデザインを評価する。フィードバックを収集するために、スパイクでUI(ユーザーインタフェース)を構築する。
3.プロジェクトを細分化する
特にプロジェクトが大規模の場合、細かいフェーズに分けることで、ウオーターフォール型開発の成功率を向上させることができる。各フェーズは、設計、実装、テスト、デプロイ(配備)のプロセスから成り立つ。大きなプロジェクトを一度に進める場合と比べて、問題点の早期発見と修正が可能となるため、プロジェクトの安定性を高めることができる。
TechTarget発 エンジニア虎の巻
米国TechTargetの豊富な記事の中から、開発のノウハウや技術知識など、ITエンジニアの問題解決に役立つ情報を厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 エンジニア虎の巻
米国TechTargetの豊富な記事の中から、開発のノウハウや技術知識など、ITエンジニアの問題解決に役立つ情報を厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
7
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
8
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
9
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー