企業がソフトウェア開発の効率を上げるためには、さまざまな視点からのアプローチが重要だ。開発者がソフトウェア開発に集中できる環境づくりに欠かせない戦略や、教訓を得るために参照すべき考え方とは。
新しい仕事に就き、期待にあふれた初日を迎えているソフトウェア開発者がいたとする。本人は「早く開発がしたい」と思っているはずだ。だがほとんどの場合、現実はそううまくはいかない。人事担当者、マネジャー、チームリーダーとのミーティングを終えたら、トレーニング資料や会社の方針に関するドキュメントの山に目を通す――。開発の仕事に取り掛かることを邪魔する、さまざまな問題が待ち受けているのだ。
開発者はできるだけ早く本番環境用のソフトウェアの開発に取り組み、効率的な開発に貢献すべきだ。それをどう実現するかは、社内エンジニアによるソフトウェア開発を強化する企業にとっての重要な課題だ。では、企業はどうすればいいのか。開発者の理想に応える現場には何があるのか。
調査会社Gartnerのソフトウェアエンジニアリング部門でシニアプリンシパルアナリストを務めるフィリップ・ウォルシュ氏は、「企業はソフトウェアを購入するよりも、自社で開発する傾向にある」と言う。
開発ツールやライブラリ(プログラム部品群)、ドキュメント、サンプルコードといったコーディングに必要なリソースを、開発者がまとめて入手できる場を提供することは重要だ。そのためには社内Wiki(情報共有サイト)やイントラネットの他、開発者の生産性維持に役立つ情報の集約ツールも役立つ。例えばMicrosoftは、開発者が企業に素早く溶け込けるように、コボレーションツール「Microsoft Teams」向けのオンボーディング(受け入れから戦力化までのプロセス)用テンプレートを提供している。
Gartnerがインビューした、あるソフトウェアエンジニアリングリーダーによると「開発者にアプリケーションストアのような場を提示し、そこから役に立つと思うツールを選択できるようにすること」には大きな価値がある。
このアプローチの一例は、Googleが提供するAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)管理ツール「Apigee」のドキュメントからも読み取れる。ドキュメントには、ITチームが素晴らしい開発者体験を生み出すためにはどうすべきかといった議論について記述されている。Googleは、
を推奨している。開発者ポータルサイトには、ロール(役割)ベースのアクセス制御、利用可能なAPIの登録、ドキュメント、チュートリアル、サンプルコード、実験用サンドボックスといった要素を含めるべきだという。
Gartnerは、大企業の「オープンソース推進部門」が持つ役割にも注目している。「企業は専門のオープンソース推進部門を設け、自社のオープンソース戦略を取りまとめるための監督者やリーダーを置くことの価値を理解し始めている」とウォルシュ氏は言う。
ウォルシュ氏は、望ましい結果を得るために、関係者同士が大規模かつ効率的にコラボレーションをする方法について、「オープンソースコミュニティーから多くのことが学べる」と考えている。Gartnerは企業内でオープンソース開発の原則を採用することを推奨しており、この方法を「インナーソース」と呼ぶ。
インナーソースでは、企業はソースコードへの貢献やドキュメントの要件に関する明確な基準とガイドラインを確立させ、開発者が共通認識を持つようにする必要がある。Gartnerは、“オープンソース的な文化”を醸成したいと考えるソフトウェアエンジニアリングのリーダーに対して、ソフトウェアの共同開発を推進するために、積み残された作業の共有とアセットのリポジトリを導入するようアドバイスしている。ここでいうオープンソース的な文化とは、透明性や他者との協調を重視するといった文化のことだ。
次回は、異なる視点からの開発者支援を紹介する。
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