ChatGPTをはじめとする生成AIの台頭によって、メタバースへの関心は薄れたという見方がある。しかし必ずしもそうとは言い切れない。その理由は何か。
2021年10月、FacebookがMeta Platformsに社名を変更したことで、テクノロジーメディアは仮想空間「メタバース」を盛んに報じた。しかし2022年11月、AI(人工知能)技術ベンダーOpenAIがAIチャットbot「ChatGPT」を公開し、2023年1月に月間エンドユーザー数が1億人を突破。それ以降、「メタバースに関する報道は下火になり、話題はAI技術に移った」という見方がある。
メタバースという用語への拒絶反応を示す人は確かにいるものの、「デジタルツイン」(現実の物体や物理現象をデータで再現したもの)などの関連技術は引き続き発展中だ。拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などXR(Extended Reality)技術は、AI技術から恩恵を受けることになる。同様に、機械学習やディープラーニング(深層学習)、生成AIなどのAI技術は、XR分野で新たな市場進出の機会を見いだすことになる。
米国連邦通信委員会(FCC)の元委員長であるトム・ウィーラー氏は「メタバースという用語は『AI技術が実現するメタバース』と読み替えるべきだ」と主張する。「メタバースはAI技術の産物だ。メタバース内で起こるさまざまな事柄はAIアルゴリズムが決定する」(同氏)
調査会社Gartnerが作成した、技術の成熟度や採用度を図示する「ハイプサイクル」によると、AI技術は「幻滅期」に突入している。幻滅期とは「実験や実装が期待通りの成果を上げられず、関心が薄れていく時期」のことだ。
CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアベンダーAutodeskのCEOであるアンドリュー・アナグノスト氏は「AI技術が現在直面している課題は、商業化の初期段階でどの技術も遭遇する課題だ」と述べる。
アナグノスト氏は「新しい技術がわれわれの働き方や生活を変えようとするとき、必然的に過度な期待が生まれる」と言う。その上で、「実用化の前段階の時期は行き過ぎた宣伝が先行し、人々は『期待したほど効果がない』という失望を抱くことになる」とAI市場の現状を指摘する。
「そうした段階では、技術の有用性を期待が上回っているように見えるが、突然状況が変わり、技術の有用性が明らかになる」とアナグノスト氏は述べる。同氏は、「AI技術は実験段階を越えて実用化段階にある」と付け加える。
さまざまな企業が、AI技術とXRを組み合わせるメリットを強調している。ARベンダーDistance Technologiesのマーケティング責任者兼創設者ユッシ・マキネン氏によると、AI技術を活用してXRで使用するデータを処理すれば、リアルタイムで物理的な動きや現象を表現可能だ。
マキネン氏は「生成AIは、VRに不可欠な要素になる可能性を秘めている」と考えている。Distance Technologiesは自動車、航空宇宙、防衛などの分野向けに、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)不要のXRシステムにAI技術を取り入れようとしている。「生成AIとXRを組み合わせれば、ミッションクリティカルかつリアルタイムの動作が求められるアプリケーションで、重要なデータや情報を視覚的に分かりやすく表示できる」とマキネン氏は強調する。
「コンピュータビジョン(画像処理を通じて対象の内容を認識し、理解する技術)、複合現実(MR)、AI技術を組み合わせると、現実世界に対するエンドユーザーの認識をリアルタイムで変えることができる」(マキネン氏)。
次回は、生成AIを活用したデジタルツインの構築方法を解説する。
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