「メタバース」がオワコンにならない“これだけの理由”気になるメタバースの今後【後編】

ピークを過ぎた印象があるメタバース市場だが、専門家によると今後の見通しは明るい。メタバース市場の成長を支える3つの最新動向を紹介する。

2024年04月30日 07時00分 公開
[George LawtonTechTarget]

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 仮想空間「メタバース」は、一時は世界的なブームを巻き起こしたが、その盛り上がりは過ぎ去った印象を受ける。ただしメタバースの市場の未来が暗いわけではなく、専門家は楽観的に捉えている。メタバース市場が今後また盛り上がりを見せる可能性があるのはなぜなのか。3つの動向を踏まえて解説する。

「メタバース」市場で注目したい3つの最新動向

1.技術的制約の突破

 VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった技術の進歩によって、メタバースの没入感や利便性は今後も高まっていくと考えられる。従来のメタバースは、通信の速度やヘッドセットの快適性といった技術的制約があった。技術の進歩でこれらの課題を突破できれば、メタバースの魅力はさらに向上する見込みだ。

 特に注目されるのが、AppleによるVRヘッドセット「Apple Vision Pro」の発売だ。今後メタバース関連技術がAppleの巨大なエコシステムの中に組み込まれることで、メタバース市場には一気に革新の波が起こるだろう。

2.産業への応用

 コンサルティング企業PricewaterhouseCoopers(PwC)でグローバルメタバース部門と顧客戦略および顧客体験部門を率いるロベルト・ヘルナンデス氏は、今後、ヘルスケアや小売、接客業、エンターテインメント、製造業といった幅広い業界でメタバース活用が進むと予測している。メタバース活用が進んだ結果、顧客体験(CX)や従業員体験(EX)の向上、コスト削減、独自の価値創出など、新たな局面を切り開いていくという。

 実際に、メタバースは単なる仮想現実の枠を飛び出し、ARやXRを用いた物理世界の支援にその焦点を移しつつある。以下は、メタバースの代表的な活用例だ。

  • VR技術を用いた従業員トレーニング
    • 例えば従業員は、危険な作業や高度な技術を必要とする作業を安全な環境でシミュレーションし、スキルや知識を身に付けることができる。
  • AR技術を用いたリモートアシスタント
    • 遠隔地からリアルタイムで作業内容を指示したり、サポートしたりできる。
  • 製造業向けの「デジタルツイン」
    • デジタルツインは、現実の物体や物理現象をデータ化し、仮想空間で再現したもの。仮想的なモデルを用いてシミュレーションやテストを実施できるため、開発サイクルの短縮や効率化に役立つ。物理的資産の管理や開発方法を変革する可能性が期待されている。

 IT関連サービス企業TEKsystemsのシニアプラクティスディレクター、ラメシュ・ヴィシュワナサン氏もヘルナンデス氏と同様の見方を示す。近い将来、メタバース市場は勢いを増し、何十億ドルもの大金が投資される見込みだ。成功には産業分野への応用が鍵を握り、特にデジタルツインが市場のけん引役になるという。

3.生成AIとの連携

 米航空宇宙局(NASA)でジェット推進研究所の最高技術責任者兼イノベーション責任者を務めるクリス・マットマン氏は、テキストや画像を自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)とMRの組み合わせがメタバース市場成長の鍵となると話す。特に、数値や画像、テキスト、音声など複数種類のデータを組み合わせて処理できる「マルチモーダルAI」が重要な役割を果たすという。

 例えば、Metaのスマートグラス「Ray-Ban Meta」を使う場合、グラス越しに何が映っているかをRay-Ban Metaに尋ねると、インターネット経由で生成AIを稼働させて対象物の情報を教えてくれる。対象物が駐車標識ならば、そこに駐車できるかどうかも教えてくれるという。

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