日ごろニュースサイトの新着情報チェックなどで活用されているRSS。ハードウェアやソフトウェアの問題に関するアラートを送るといったシステム管理分野への応用が進んでいる。
RSS(Really Simple Syndication)は、Webユーザーが目的のニュースを収集して一覧するためによく利用しているが、今後はデータセンター用のシステム管理ソフトウェアでさまざまな用途に活用される可能性がある。例えば、ITマネジャーにハードウェアやソフトウェアの問題に関するアラートを送ったり、製品の更新について知らせたり、システム管理業務のシフト交代の際に引き継がれる稼働状況ログを提供したりといった用途だ。
RSSはXMLベースのデータ形式の一種であり、オンラインパブリッシャーが更新情報などをWebユーザーに提供するための技術として広く普及している。こうした情報は「RSSフィード」で提供されており、ユーザーが任意のフィードを選択して受信でき、フィード作成者が自分の望む頻度でフィードを更新できることが、RSSの非常に有益な機能だ。
現在のシステム管理ソフトはアラートシステムを備えており、サーバやソフトウェアに問題が生じた場合に、データセンター管理者に電子メールやページを送信できる。今のところ、大手ベンダーは自社製品にRSSを実装していないが、専門家に加えてベンダー自身も、数年後にはRSS機能がシステム管理ソフトウェアに広く搭載されるようになるだろうと予測している。
「システム管理ソフトウェアは、電子メールを送信する代わりに、RSSフィードのアイテムで異変を知らせることもできるようになるだろう」とレッドモンクのアナリスト、マイケル・コテ氏は語る。「これは、優先順位が低から中程度で、あまり気にしなくても構わないような問題の存在を把握するのに便利な機能になりそうだ」
さらに同氏は、RSSは、システム管理業務の「シフト交代にあたっての引き継ぎ情報」の一環として、シフトマネジャーが、次のシフトのスタッフにそれまでのシステム稼働状況が分かるように、最新のステータスリポートを記録するのに利用する可能性もあると付け加える。
コテ氏をはじめ何人かの業界関係者が、RSSのこうした可能性についてブログなどで指摘している。BMCソフトウェアの副社長兼データセンターソリューション担当プログラムエグゼクティブ、フレッド・ヨハネソン氏もその1人だ。
BMCは現在、システム管理ソフトウェア製品でRSS機能を提供しておらず、IBM、ヒューレットパッカード(HP)、CAなど、ほかの大手ベンダーも同様だ。しかし、ヨハネソン氏はRSS機能に期待を寄せている。
同氏は、RSSは、「インフラの状態変化を各種プログラム間で伝達する」ために利用される可能性があると見ている。
「インフラの機能に影響を与えるような変更や構成の更新がインフラに加えられると、その影響を受ける要素にRSSで通知が行われるようになるかもしれない」と同氏。「そうなれば、プログラムや人々がそれを受けてどう対応するかを判断するようになるはずだ」
RSS機能をシステム管理ソフトウェア製品に既に統合しているベンダーとして、ハイペリックがある。CEOのジャビア・ソルテロ氏によると、ハイペリックは約1年前からシステム管理ソフトウェア製品でRSS機能を提供している。
その背景には、ソルテロ氏や同社の開発チームのメンバーが、RSSを通常の用途で以前から活発に利用していたことがある。彼らはそうする中で、RSSは自社製品に応用できると考えるに至った。
「企業におけるRSSの自然な使い方は、あるWebサイトの更新情報をほかの社内サイトやポータルに配信するのに使うというものだ」と同氏。「高次の情報を提供することを目的としたマスターイントラネットサイトがある場合、RSSフィードはそのサイトを補完してその更新情報を配信できる」
だが、SPIダイナミクスのセキュリティエンジニア、ロバート・オーガー氏は、データセンターのシステム管理にRSSを導入する場合には、注意が必要だと警告する。ベンダーとユーザーは、情報フィードを誰が作成するか、誰が読むかを考慮に入れなければならない。
同氏によると、ベンダーとユーザーのどちらがRSSフィードを作成するかが重要な問題となる。例えば、フィードが生成される際にハッカーがフィードに何かを挿入し、エンドユーザーがそれにアクセスするとシステムが侵害される、といった事態が考えられる。また、すべてのマシンがアクセスする、フィードが置かれるサーバをハッカーが侵害する恐れもある。
「いずれにしても、データがどこから供給されるかが大きなポイントだ」(オーガー氏)
ソルテロ氏は、RSSに対応したハイペリックのシステム管理ソフトウェア「Hyperic HQ」は、一定の安全対策が施されていると語る。Hyperic HQが提供するフィードに含まれるシステム状態情報は、概略的なものにとどまり、ユーザーは、リンクをクリックしてシステムにログインするまで、問題や事象の具体的な内容は分からない。また、ユーザーがログオン権限を持っていないサーバやソフトウェアにログオンしようとすると、拒否されるようになっている。
BMCのヨハネソン氏は、RSSがまず、ユーザーにソフトウェアの更新を通知するサポートツールとして定着すると見ている。次に、構成管理データベース(CMDB)のような分野で普及が進みそうだという。CMDBは、企業のITインフラのあらゆる側面に関する情報が格納されるデータベースだ。
「RSSがこの分野に応用されるのは楽しみだ。システム管理ソフトウェアの今後の動向は興味深い」と同氏。「数年後には、RSSはわれわれが考えもしなかった用途で使われているだろう」
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